かくれんぼー2

「ついてきてほしいところってここ?」


瀧聲は周囲を見回しながらユウタに尋ねる。

星空の見えない曇天の中、木々に囲まれた大きな古めかしい屋敷がひっそりと建っている。

どことなく寂しい風景だ。

雨が近いのか、土臭い風がヒュウッと吹く。




「そうだよ。……ここが僕の家なんだ」


少し寂しそうに頷いたユウタは、瀧聲のほうを向く。


「あのね、突然なんだけど僕、帰ることにするよ」


「帰る?」


突然の発言に首を捻る瀧聲。

ユウタは屋敷を見つめ、語りかけるように話し始める。



「うん、もう満足したから。……ごめんね、実は兄ちゃんに言ってないことがある。僕は独りが寂しくて、友達が欲しくて家を飛び出した。それは嘘じゃないんだけど、でも、でも本当の僕の目的は……」


いったん言葉を切って、ふるふると首を振るユウタ。



「……ううんやっぱりいいや。何でもない」


「えー凄く気になるんだけど……何?」



瀧聲の言葉にユウタはもう一度首を振る。



「いっいいの!やっぱり忘れて!……あのね、初めての友達が兄ちゃんでよかった。一緒に遊んでくれて、助けてくれてありがとう」


そして涙を目にいっぱいためて微笑む。

瀧聲は静かに首を横に振った。




「別に礼を言われるようなことはしてないよ。……本当に屋敷に帰るんだね」


ユウタはその言葉に大きく頷く。



「うん。僕が一番夢に見ていた『友達』ができた。一緒に遊んだ。それだけでもう十分だよ...嬉しかった」


大事そうにぬいぐるみを抱きしめたユウタは、独り言のように呟く。




「1ヶ月凄く楽しかった。……兄ちゃんを起こすのは大変だったけどね」


「しょうがないだろ。普段昼間は寝てるし……」




瀧聲の言葉に「夜更かしは身体に悪いんだよ」と、真面目な顔で言ったユウタは指を1本伸ばした。








「最後に1つお願いがあるんだ。かくれんぼしようよ、瀧聲兄ちゃん」

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