推理in喫茶店ー2

「僕の父さんと母さんね、ずっと帰ってこないんだ」


ユウタの話はその言葉から始まった。


「仕事でいつも忙しくて帰ってこない。今もどこかに行っちゃったきりで……。僕凄く寂しくて……。それで誰か一緒に遊んでくれる人を探してたんだ」


「遊んでくれる人って学校の友達と遊べばいいんじゃないか?」


ユウタの言葉に瀧聲は悲しそうに首を振る。


「僕は学校に行ってないから……友達いないんだよ」


すっかり冷えたココアを口にしたユウタが言葉を続ける。


「誰も傍にいてくれない、独りぼっち。でも年に1回だけ―僕の誕生日の日だけ父さん達が仕事を休んで一緒にいてくれるんだ。それが凄く嬉しかった。でもね……」


ユウタが俯く。


「それ以外は独り。誰もいない、ずっと独りなんだ……今まで我慢してたけど、そう考えたら何だか急に恐くなった。もしかしたら僕はずっと独りなんじゃないかって……」


空になったカップを両手で包むと顔をあげる。


「そう思ったら急に家から逃げたくなった。誰かと一緒にいたい、友達を作って遊びたい……。それで僕は家を出たんだ」


「そして家を出た先で会ったのが僕だったってこと?」


瀧聲の問いかけにユウタが頷く。


「『寂しいから遊んで』って言っても今まで誰も相手にしてくれなかったから……それで家出したって言ったの。家出だけど親と喧嘩した家出なんかじゃないんだ……ごめんね」


「いいよ、全然」


首を振った瀧聲は追加注文したミルクティーをユウタに勧める。

カップを受け取ったユウタはそれを両手で包むとかぼそい声で言った。


「ねぇ兄ちゃん、友達になってほしいんだ。...もっと遊びたい」


「あれ、今さら?」


食べる手を止めてきょとんとする瀧聲。


「別に許可をとるものじゃないんじゃない?僕はもう友達だと思ってたけど」


「!」


瀧聲の言葉に目を見開くユウタ。

そして笑顔を浮かべると涙目で言った。



「兄ちゃん……ありがとう」

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