ツインテール

星永静流@ホシ

ツインテール

 ツインテール

                                星永 静流


 自転車で下り道をぐぅっと下っていた。ぐんぐんと加速していく自転車は少しずつブレーキをかけていたのに、全くスピードが落ちない。

 思いっきりブレーキをかけてみた。結構危ないし。するとききぃと音がなって自転車はゆっくりと減速していくのがわかった。それでもまだこの下り坂は続いていく。

 今日は友達に髪型をツインテールにしてもらった。いつもはポニーテールにしているから、いつもと違うところに風が当たる。なんだかすぅすぅする。

 あれ、髪型が違うだけでこんなに違うのかな。なんだかそれが違和感だった。

 もっとおかしいなって思ったものが、ひとつあった。

――灯りだ。

 この下り坂、確かにゆるやかで登るときは案外大変だけど、下るときはかなりのスピードが出る。だから、こんなに真っ暗なのはおかしいはずだ。確かにここら辺は田舎だし、電柱の一本や二本、ちかちかと点滅していることはざらだけど、なにか、事故が起きそうで。

 わずかな、家から漏れる灯りを頼りにこの下り坂を駆けて行く。

 相変わらずブレーキの調子が悪い。なかなか減速しようとしない。

 それにこの暗さ、なんだかわたしを不安にさせる。


――――――!?


 今、灯りが一斉に消えた。

 こんなことって、ある?


「あら、可愛らしいツインテールね」


 背中がぞくりとした。

 どこから聞こえたかはわからない。

 でも、確かにそう聞こえた。

 あまりに不気味すぎて、わたしは自転車を思いっきり漕いでその場から離れようとした。

 加速していく自転車を漕ぎながら思った。


「わたしからは逃げられないの」


 カンカンカンカン

――この先は踏切だ。

 ブレーキをかけなければ。

 でも、何度もブレーキをかけようとしても、自転車は一向に減速しない。

 踏切が降りる。電車がくる。でも、避けられない。

 そのときわたしは走馬灯を見た。


 そう言えばあの子、どうしてわたしの髪型をツインテールにしようって言い出したんだっけ、って――

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