47.すみませんでした

 別れの日がやってきた。

『兄がご迷惑をおかけして、すみませんでした』

 わざわざ電話をかけてきてくれたのは、ネモカルア王国国王、一也だ。

「こちらこそ、十分すぎるお金を頂きまして」

『いえ、お世話になったので当然のことです』

 電話越しに深々と頭を下げあう二人。

『ところで兄さんは? もう大使館の方に戻りましたでしょうか?』

「千也さんは……」

 瞳はそっと電話から視線を外す。

「帰りたくないって押入れの中に閉じこもってます」


「センヤさま! ご迷惑ですよ!」

「王もお待ちです。さあ、早く、開けてください、センヤさま」


 受話器越しに聞こえるのは、日本大使リーメの声と何かをドンドン叩く音。

 一也は再び頭を下げた。


『兄がご迷惑をおかけして、すみませんでした』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同居人 川辺都 @rain-moon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ