19.吊り橋のまんなかで

 本当はハイキングになんか来たくなかった。

 瞳は元々インドア派なのだ。休日は家で映画を見るのが何よりの楽しみ。

 いくら町内会の行事に誘われたからって。

 こんなつり橋を渡るようなアウトドアなハイキングに参加すべきではなかったのだ。

 引き返すのも進むのも同じくらいの距離を進まなければならない。ここはど真ん中。

 ゆらゆらと揺れるつり橋。ここから落ちたらおそらく命はない。

「千也さん……」

 足は恐怖のため石となり。

 顔に血の気はない。

「さっさと進みましょ」

 谷底を見てからこっち、一歩も動けなくなった千也の首根っこをひっ捕まえて、瞳は疲れたように先に進んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る