18.その他の人々

「千也は元気にしているかしら?」

 ネモカルア王の生母、千草はおっとりとそう言った。

「元気なんじゃないですか」

 小さな島国の現王、一也は話題に上った男と瓜二つの顔で答える。

「兄さんにとっては母国みたいなものですし。ボケたところがあるから、それで苦労しているかもしれないですけど」

 お茶を飲んで付け足す。

「まあ、瞳さんがついているから大概のことは大丈夫だと思いますが」

「瞳ちゃんね。一ヶ月、若い男女が一つ屋根の下だなんて」

 千草はうふふと笑う。

「楽しみだわ」

「何を期待してるんですか」

「あら、一ヶ月も同じ家で過ごせば男女の親密度は上がるものよ。最初はその気がなくても徐々におたがい気になり始め、後はご想像にお任せします、よ」

 若い娘のように千草は小首を傾げた。

「そうですね」

 つられて、一也の口元に笑みが浮かぶ。

 確かに、千草の言う通りそういうことになるかもしれない。

 一也の脳裏に、電話で話した瞳の声が蘇った。


 あれは、守銭奴の声だ。


「いや、母上。やっぱりそれはないです」

 と言うかあったら困ります、いろいろ。

 現王はパタパタと手を横に振って、母の期待を打ち消した。

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