14.枯れない花

 瞳の家の玄関には花瓶に生けられた花があります。

 玄関に花を飾るのは、お客様を気持ちよくお迎えする心意気です。

 ある日、ふと気になって千也は瞳に尋ねました。

「この花瓶、水をかえなくてもいいの?」

「ああ、いいの。それ造花だから」

「え?」

「水もかえなくていいし、腐らないし、面倒くさくなくていいでしょ」

「道理で、花のにおいがしないと思った」

「香水でも吹きかけとけば」

 玄関に花を飾るのは、お客様を気持ちよくお迎えする心意気です。

「微妙に歓迎されてないなあ」

 千也の呟きは瞳の耳に届きませんでした。

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