11.ルパートさん出番です

 瞳と喧嘩をした。

「夕飯抜きよ」

 そう言われたので

「出てってやる!」

 と飛び出した。

 即、玄関の扉がバタンと閉められ鍵がかけられた。

 虚しい。

 今日は虫の居所が悪かったようだ。

 とりあえず、街を彷徨ってみることにした。

「あ」

 雑貨屋でキーホルダーを見つけて足を止める。

「ルパートさんだ」

 それは、瞳がお気に入りのキャラクター。

 これを買って帰れば瞳の機嫌も直るかもしれない。

 部屋中に飾れるほどたくさん買って帰ろう。お金はあるし。

 千也はルパートさんをしげしげと見つめた。

 ルパートさんはおたまじゃくしのキャラクターだ。ただのおたまじゃくしではない。もうすぐカエルになるおたまじゃくしなのだ。

 尾の両隣から生えかけた緑の足は、ただでさえリアリズムを追求したルパートさんの容姿をさらに引き立たせている。

 控えめに言ってグロテスクだ。

「一コにしとこ」

 部屋中にルパートさんが満ち溢れる。

 そんな光景に身震いして、千也はキーホルダーを一つだけ買って瞳の家に帰った。

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