9.理由はたったひとつだけ

『瞳、好きだ』

 突然の告白に瞳の全身が硬直し、目が大きく見開かれる。

『そんな、どうして私なの?』

『瞳、オレは君を愛してる。それ以外に理由がいるか?』

『でも、でも私はあなたに愛される資格なんてない女なの』

『瞳、オレは君さえいればそれでいいんだ』

 夕日の沈む海岸で、男はギュッと瞳を抱き寄せた。

『私……私もずっとあなたのことを……』


 ブツっと音がして画面が暗転した。

 千也が振り返るとそこにはリモコンを持った瞳の姿。

「テレビ、見てたんだけど」

「あの番組は見ないことにしてるの」

 主人公が自分と同名のメロドラマ。

 見れるわけがない。

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