第17話【美少女、取り引きで学園長に打ち勝ってしまう(?)】(学園長に打ち勝つ)

(時に提案であ〜る)喋りだす美少女学園長——これは『反論の反論』ってことなの? わたしは身構える。ディベートの授業ではこの相手の反論にどう対するかが問われる。ちなみにわたし、凄く苦手だ。

「わたしに提案なんておかしいです。ひょっとしてまだこの星に留め置こうっていうつもりなの?」

(意志無き者を留め置くことはせんのであ〜る)

「ホントですか!?」

(故に提案なのであ〜る)

「それはわたしにできることなの?」

 美少女学園長は肯く。

 慣れない大声で喋りっぱなし。口の中はからから。でもろくに出ていないツバを飲み込んでしまう。

 美少女学園長の声が脳に届いた。

(この『ネコ』とかいう宇宙生物たち、これらをここに置いていくのであ〜る)

「はあっ!?」

(はあっ、ではない。この提案をキミが受けるかどうかであ〜る)

「なんでこんなにカワイイこのネコたちをこんな星に置いていくのよ!」

(そうすればロインと組んで起こしたこの騒動、不問に付すと言っているのであ〜る)

「ふもん?」

(解りやすい言い方をするのなら、何ごとも起こっていないものとしてキミを地球へ帰す、ということであ〜る)

「断ります」

 言った瞬間自分で言ってて頭が真っ白になった。こんな宇宙のどこだか分からない星に連れてこられてわたしなに言ってんの!? だけど言ってしまっていた。


(この宇宙生物たちはキミのモノかの?)

 美少女学園長が別の切り口で切り込んできた。

 もしわたしという人間が平然と嘘をつけたなら——

「……いや、違うけどさ……」とわたしは正直なことを言ってしまっていた。

(じゃあいいんじゃないのかのぅ?)

 いやっ、違うの!

「わたしの飼ってるネコたちじゃないから勝手に決められない」

(じゃあこの宇宙生物たちの処遇は誰が決めるのであ〜るか?)


 だれが? って問われると困る。だってもともと野良ちゃんたちだし、わたしはただ餌づけしてるだけだし——

 地球へ、日本へ戻すとどうなっちゃう——?

 最終的に保健所……もしかして殺処分……?

 だけど、わたしの『黒白ぶちちゃん』もこんな星に——っていうかなんでっ。


「なんでわたしがそんな頼みをされなきゃいけないのっ⁉」

(では断らずにこの宇宙生物をワタシのモノにしていいのかのぅ?)

 美少女学園長はにこにこと微笑んでいる。なにか、まだこの先になにかありそうないかにもな顔。これはもしかして『なんでもいいから反論して』の続き?

 なにか言わないと! もう反論の反論が苦手なんて言ってられない!

「勝手に宇宙生物なんてものを飼っていいの!?」

(届け出をすれば問題ないことになっておる。その辺に解き放つのはむろん厳重禁止であ〜るが、な)

「えっ、餌はどうするつもり? この星の食べ物を地球のネコが食べられる? 餌が無ければネコが死んじゃう!」

(キミの所持している『キャットフード』を成分分析して造ればよいのであ〜る)

 なんでわたしのキャットフードのことを!?

(もうなにか言わんのか? キミが了承しさえすればそこらに隠れているロインという生徒の学費の問題も解決した、という話しになるのであ〜るが)

(えっ、そういう方向の話しなの?)、と唐突に響くロインの声。わたしもあっけにとられるばかり。

(ワタシの言うことに反論するつもりであったろう? もうそれは終わりにしてよいということであ〜る)

 いったいこれはどうなってるの!?

「なんでロインの学費とネコたちが結びつけられちゃうんですかっ?」わたしとしてはそう訊くしかない。

(そもそもその宇宙生物はロインが持ち込んだものだからであ〜る)

 もちろん美少女学園長のその答えに合点などいかない。だけど——


 ロインの学費の問題もこれにて解決————わたしは帰れる。


 ぐらり、ときていた。むろん、この時この瞬間なにかを忘れていた。ネコたちは棚の上に上げられていたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る