第3話 組み合わさったパズル

「わからない・・・あの子の名前が・・・」

同級生の、しかもクラスメイトであっただろう女子の名前・・・

どうしても、思いだせない・・・


我ながら、情けない話だ・・・


目をつむると、あの女の子の顔が脳裏をよぎる・・・


僕がクラス会・・・同窓会に行かないのは。会いたくないから・・・

それは、いじめを受けていたからだ・・・

クラス会に参加すれば、それを思い出す。

おそらく向こうも、それを知っていて招待状を送ってくる。

卒業しまで、嫌がらせはやめてほしい・・・


あの女の子は言っていた。

「みんな、会いたがってるよ」と・・・

嘘だとは思う・・・

ただ、もし本当なら何が望みだ・・・


それが気になる・・・


「また、冷やかしだろう・・・」

そう思う事で、自分を納得させていた。


これで、終わりと思っていた・・・


次の日も、彼女は来た。

今日は、デートの誘いではない。

朝起きて、居間に行けば、すでに彼女が来ていた。

母親と、楽しそうに談笑していた。


母は、娘がほしかったらしい・・・

彼女に、娘を重ねているのか?

そう思った。


「おはよう」

「ああ」

僕はぶっきらぼうに、返事をした。


(今日は、僕に用はないな)

関わらにように、自室に戻ろうとした・・・


「待って・・・話は終わってないわ・・・」

彼女の呼びとめる声がした・・・

「お母さん、席を外してくれませんか?」


母は「若い者同士、ごゆっくり」と、笑いながら席を外した。

どうやら、恋人と勘違いしているようだ・・・


彼女の表情が、真剣になった・・・

「まだ、私の事を思い出せないみたいね。」

「ああ・・・」

「分かったわ・・・教えてあげる・・・私に名は・・・」

「君の名は?」

「私の名前は、米川里美。君と同じ放送委員会だったものよ。」


すぐには、わからなかった・・・

でも、だんだんとバラバラになったパズルが組み合わさって行った。

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