第19話 出会い
「全く今日はとことんついてないな」
事務所からの帰り道、私は一人憤っていた。
気づけば辺りはもう薄暗く、駅前の繁華街の煌びやかなネオンが目立ち始めていた。そんなネオンの光に誘われるように、仕事終わりのサラリーマンたちが、駅前に群れるように溢れている。
「ほんと、腹が立つ・・、何がAVだよ。まったく・・」
「あの、すみません」
その時、突然横から話しかけられた。
何事かと見ると、私の横に色白で、ほっそりとしたフランス人形のような金髪の青年が立っていた。
「は、はい」
私は思わず見惚れるほどに、その青年を見つめてしまった。
精巧に作られた人形のように寸分の狂いもなく整った顔立ち、驚くほどに輝く澄んだ目、吸い込まれそうなほど美しい白い肌、ちょっと触れただけでどこかに飛んで行ってしまいそうな繊細に輝く金色の髪、こんな美しい男の人がこの世にいるのかと、私は驚いた。
「すみません。突然」
「い、いえ」
そう答える私は、自分の頬が赤くなっているのが自分でも分かった。
「あの、一緒に飲みに行きませんか」
「は?」
「あの・・」
青年は消え入りそうな声で、本当に恥ずかしそうな表情をしていた。
「あの、僕、実はその、ホストで、全然女の子に指名がなくて・・、その・・」
ホストと聞いて一瞬身構えたが、正直にホストと語る青年のバカ正直さがどこかおかしく、逆に警戒心が緩んだ。
「僕、女の人が苦手で・・」
だったらホストになんかなるなよと、突っ込みたかったが、そう恥ずかしそうに語る青年が何ともかわいらしく思わず笑ってしまった。そんな私を見て、青年も恥ずかしそうに笑った。それがまた何ともかわいらしかった。
「・・・」
その時、私の奥底にある女としての何かが、彼を助けてあげたいと強烈に叫んでいた。
「あの、初回は無料なんで・・、ただ隣りにいてくれるだけでいいんです」
「いいよ」
私は即答していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。