第17話 やっぱり・・
ふと、顔を向けた時だった。
「あっ」
元少年がいたような気がした。それは雑踏の中ではっきりとはしなかったが、確かに見たような気がした。
「なんで元少年がこんなところに・・」
なんだか嫌な予感がした。
「まさか・・、あいつが」
そういえばこの前ばったり会ったのも出来過ぎている。
「・・・」
私は人でごった返す、駅前の一角を見つめた。そこはいつものこの時間帯では当たり前の、日常的な人の流れが絶え間なく続いていた。
「気のせいだよね」
私は再び、出勤するため職場のあるビルに向かって歩き出した。
「気のせいだよね」
そう自分に言い聞かせるのだが、何とも言えない不安が全身を痺れさせていた。
「お前にどんな彼氏ができるんだろうな」
「できませんよ。そんなの」
私たちはいつものように仕事の合間、合間に抜け出しては、ビルの屋上でタバコをふかしていた。
「またまたぁ」
マコ姐さんはいやらしい目で私を見る。
「できませんよ。それにこんな私を誰が好きになってくれるんです?」
「ふふふっ」
「なんで笑うんですか」
「いや、別に」
「気になるなぁ。その笑い方」
「ふふふっ」
マコ姐さんは、更に何かを含んだように笑った。
「そういう奴がはまると怖いんだよ」
「何にはまるんですか」
「男だよ」
「はまりませんよ」
「そうか。ふふふっ」
「やだなぁ。その笑い方」
しかし、マコ姐さんは笑い続けていた。
「ところで、どうしたんだよ」
「えっ」
「今日のお前なんか変だぞ」
「・・・」
「どうしたんだよ。お姉さんに相談してごらん」
ちょっと、ふざけた調子でマコ姐さんは言った。
「・・やっぱりなんかつけられてる感じがするんですよね」
「前言ってたストーカーか」
「はい」
「なるほど・・」
「警察に言った方がいいですかね」
「そうだな」
「私怖いんです」
「う~ん」
「確かに感じるんですよ。見たわけじゃないんですが・・」
「あたしが明日付いてってやるよ。警察」
「ほんとですか」
「ああ」
「ありがとうございます」
やっぱりマコ姐さんは頼りになる。私は少し気持ちが楽になった。
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