二分の一

あとがき

　十二月に入った頃、市内のスーパーで菊池さんを見かけた。

　どうしたんだろう、あの頃の輝きが見えない。随分げっそりしているように見える。声をかけづらかったので、見なかった事にした。

　棟が違う菊池さんの情報を、わざわざ誰かが流してきた。奥さんが、妊婦だと。そうか、それでスーパーにいたのか。

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　私は相変わらずライブハウスに行っている。バンドの練習をしたり、好きなバンドのライブを見たり。ツアーバンドとお喋りしたり。同じバンドを見に来た子とすぐに仲良くなったり。

　刺激を受ける事が多い。話す内容は、向上心が根底にあるものだし。レベルの高い人達が集まっている。

　みんな良い顔をしている。会社や家庭で嫌な環境にいたとしても、此処に来ると元気になる。きっと。

　ふと、スーパーで見かけた菊池さんの顔を思い出した。けれどもすぐに払拭しようとした。

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　また六月が来た。去年の今頃は、先輩に紹介された男の人とお酒を飲んでいたなーと思い出した。

　今日はこれからライブハウスに行く。友達のバンドが出るから。

　車を運転していると、ベビーカーを押して歩いている親子連れを見た。菊池さんだった。隣にいるのは多分、奥さんだろう。ベビーカーには赤ちゃんが乗っていた。

　菊池さんとライブハウスで会う事は、暫く無いだろうと思った。多分。