第7話 妹と絆を深めたらしい

「なななっ!?ななななっ!?」


「な」しか言えなくなって固まっている妹を不思議に思いながら、着替えを取ってきて、先に入ってると伝える。

兄妹何だからお風呂くらいどうって事ないと思うのだが。


(お風呂も広すぎて落ち着かないな。まあ、足が伸ばせるのは気持ちが良いけど。)


シャワーを浴びた後、温泉か!と突っ込みたくなるくらい広い湯船でプカプカしていると、ガラガラと扉が開いて妹が入ってきた。


先ほどから脱衣場でゴソゴソしてなにやら騒いでいたので、すぐに入ってくるかと思ったが、思いの外遅かった。

…脱衣場で何してたんだ?


「お、芽亜来たか。背中流してあげるね!」

「う、うん。」


俺は芽亜の体をじっと見てから湯船を出て、妹の後ろへ行く。

小学生だけど、流石に高学年だから恥ずかしいのかもじもじしている。

…芽亜は何故か目を瞑っていた。


俺は心は大人なので、邪な感情は半分しか抱いていない。

もし、万が一変な気持ちになってしまった時には、某プロデューサーのYESロリータNOタッチの精神に基づき、冷静になればいい。


体を洗う柔らかいスポンジにボディソープを付けて、泡立てる。

妹の白い背中が眩しいが、優しくそっと洗ってあげる。


「っ…ひゃうんっ…んっ!…お、お兄ちゃん…くすぐったいよぉ。」

「…っ…ああ、ごめんごめん。」


妹は悶えていて可愛らしい声をあげた。

なんだかいけないことをしている気持ちになった。

…無心になろう。


「はい、終わったよ!」

「あ、ありがと、お兄ちゃん。」


背中をシャワーで洗い流し、妹に話しかけた。

振り向いてお礼を言った妹だが、まだ目を瞑っていた。

それなのに顔が真っ赤になっていて可愛かった。

お兄ちゃんの裸くらい見てもいいんだぞ!


「…お兄ちゃんの背中も流してあげるね!」

「おっ!ありがとな。じゃあ、お願いするよ!」


妹がそう提案してきたのでありがたくお願いする。

場所を交代して、流石に洗うときには妹は目を開けてくれた。


(こ、これがお兄ちゃんの…背中。キャー!!か、かっこいいよお兄ちゃん!)


何だかそわそわしていた妹は頑張ってくれた。

力が弱いためくすぐったかったが、一生懸命やってくれたので嬉しかった。


「ふぅー、今日はなかなか疲れたよ。」

「お疲れ様、お兄ちゃん。」


洗いっこが終わり二人湯船に浸かる。

芽亜も慣れたのか、俺の隣で体を伸ばしてダラ~っとしている。

…俺の方をチラチラ見てるのはバレバレなのだが、妹よ。


「「…ふぃーっ。」」


二人とも脱力して無言のまま、時間だけが過ぎていった。

15分ほど浸り、もう充分なのでお風呂を出た。


脱衣場で体を拭いてパジャマを来てから、ドライヤーで妹の髪を乾かしてあげる。

そして、逆に妹に髪を乾かしてもらう。

これが意外と心地よかった。


俺と妹はかなり仲の良い兄妹なのでは無いだろうか?

これからも仲良く出来たらうれしいな。


「お兄ちゃん、おやすみなさい!」

「うん、おやすみ!」


妹と廊下で別れて自分の部屋のベットに横になる。

キングサイズのベッドは広すぎてあまり落ち着かないが…。


(疲れたけど、楽しかったな。学校生活、上手くいけばいいな。)


そう考えながら、今日の事を思い出しつつ目を瞑っていると、いつの間にか俺は眠りについていた。



一 その頃、妹は


(お、お兄ちゃんとお風呂入っちゃったよぉ、キャー!お兄ちゃん、昔から優しかったけど、今日はもっと優しかったし。…頭ナデナデしてくれてもう最高だよぉー!かっこよくて優しいお兄ちゃん好き好き大好きだよー!)


ウサギの抱き枕を抱き締めながら、ベッドの上をゴロゴロ往復して悶えていた。



一 同じくその頃、早香さんは


(こんな漫画みたいな事って本当にあるんだ、松本くんかっこいいし優しいしううっー!!寝坊したおかげで会えたのは良かったけど、朝の会話聞かれちゃったしズボラなところ見られちゃったし最悪だよー!他の女子の目線は痛いし。…でも、明日も松本くんが学校に行けば、隣にいるんだよね!ううっー幸せすぎるよぉー!)バタバタ!


「うるさいわよ!早香!何時だと思ってるの!」


枕に顔を埋めてバタバタと悶えていた。



一 朝になった 一


「みっくみっくにしーてあげ…」スッ

画面をスライドさせてアラームを止める。

昨日、曲を某ボーカロイドの曲に変えていたのだが、体がしっかりと反応した。


「ううっーん。朝かぁ。…うん?知らない天井だ。」


そんな事を言いながら、俺は目をこすってこれが現実であることを確認する。

キングサイズのベットは一人で寝るには大きすぎて、起きた瞬間に寂しさを感じてしまった。


(今日の夜から、妹と寝るのもいいかもな。)


俺はそう思いながら、ベットから降りて洗面を済まし、俺のお弁当と二人分の朝ごはんの用意をする。

広いキッチンや多彩な食材を吟味しながら、朝食を作っている。すると、ドタドタと階段を下りる音がして、妹が降りてきた。


「お兄ちゃん!?も、もう起きてるの!?」

「勿論だよ。もうすぐ朝ごはん出来るから顔を洗ってきな。」

(くうっー!お兄ちゃんのために芽亜がご飯作ろうと思ったのに!…はっ!でもお兄ちゃんの手料理が食べれる…。えへへっ!)


若干悔しそうな顔をする妹を不思議に思いつつ、典型的な朝食を並べて妹と一緒にご飯を食べる。

あれ?いつの間にか笑顔になっていた。


「お兄ちゃん、明日は芽亜がご飯作るから、寝てて大丈夫だからね!」

「…そうか!なら、お願いするよ。」


まあ、俺がいる間は俺に任せてほしいけどね。


テレビを見ながら、妹と他愛もない会話をして、その後二人一緒に家を出た。

妹の小学校を通ってから駅に行くことも時間的に可能なので、妹に「一緒に行きたい」とお願いしてから、二人で仲良く小学校へ歩いていく。


道中で気付いたのだが、妹が手を繋ごうとして恥ずかしくなって止めるという行為を、繰り返していた。

なので、さりげなく手を繋いであげる。


にぱぁっと笑顔になると同時に照れて赤くなってしまったので、可愛らしく思った。

…お、俺はロリコンでもペドフェリアでも無いんだからね!

…多分。


「芽亜、小学生は楽しい?」

「うん、楽しいよ!友達もたくさんいるし、みんな優しいからね!」

「そうか、ならよかった。いいか、知らないおじさんには着いていっちゃだめだからね!」

「も、もう、お兄ちゃんったら!芽亜を子ども扱いしないでよ!」


妹をからかいつつ歩いていたら、小学校に着いた。

一つ気になった事だが小学校に着く前に、すれ違う人達の視線をかなり浴びた気がしたが…そんなに目立っただろうか?


「じゃあ、頑張ってな!」

「ありがとう、お兄ちゃん!」


妹の背中をじっと見てから駅へ向かうことにした。


「芽亜どういうことよ!?誰!?あの超かっこいい人は?彼氏?」

「ち、違うよ、お兄ちゃんだよ!」

「お兄ちゃんを紹介して!」

「「「私にもお願い!!」」」


妹は俺と別れた瞬間、沢山の友達に囲まれていたので、人気者だなーと思った。

…お兄ちゃん嬉しいぞ!

友達沢山いて良かったな!


しばらくして、家から一番近い駅に着いた。

今日は男性も普通にいたので、安心して電車に乗れた。

やっぱり昨日騒がれたのは、露出が多かったのが原因だったみたいだ。


ガタンゴトンッ!


まだ降りる駅までは時間がある。

俺は窓の外を見ながらこの世界の事を考えた。


俺が願った願い事は三つ。


『モテたい、働きたくない、劇的に変わりたい。』


これは現時点で叶ったといってもいいのでは無いだろうか?


男女比1対10で男の半分が同性愛者の世界、そしてルックスが格好よくなった。

つまり、男女問わず(色んな意味で)モテる。


高校生でしかも親がお金持ち、つまり現時点では働かなくても大丈夫。

最悪ニートにもなれる。


妹が出来たり、名前以外のほとんどが劇的に変わった。

想像と違う部分があるが、素晴らしい世の中になった。


俺は偶然か必然か分からないが、以前とは全く違う良い環境を手に入れたことには違いがない。


(神様…かなぁ。それは分からないけど、俺の環境を変えてくれた存在よ、本当にありがとう。この世界を存分に楽しむよ。)


次の駅のアナウンスを聞き、電車を下りた。

そして楽しみな学校へと俺は登校した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る