第4話 スポーツ女子と出会ったらしい
「お兄ちゃん、家の場所も覚えてないの?」
「ちちち、違うし、お、覚えてるってば。」
妹に家の場所を聞いたとき、そんなやり取りがあったが何とか誤魔化し、今は二人で仲良く座って電車に揺られている。
妹はわざわざ俺のために、電車で30分ほど離れた俺のアパートまで来てくれたみたいだ。
…健気で可愛い。
「ありがとな、芽亜。わざわざ距離があるのに来てくれるなんて。」
「ぜ、全然平気だよ!その…お兄ちゃんのためだもん!…それに芽亜もお兄ちゃんに会いたかったし。」
芽亜はチラチラと俺を見ながら照れていた。
嬉しいことを言ってくれる芽亜の頭を撫で、少し考える。
俺のアパートから妹が数日通うとなると、電車+徒歩で一時間ほど登校に時間がかかってしまうことになる。
それは妹への負担が気になってしまう。
「…やっぱり、俺がしばらく家に住むことにするよ。芽亜の移動大変だし。あ、今日の電車代渡すよ。」
そう言って鞄から財布を取りだしからお金を出して芽亜に渡す。
「そ、そんな悪いよ、お兄ちゃん。私のことは大丈夫だから。それに、お金はお母さんから貰ってるよ。お兄ちゃんに迷惑かけたくないからお願い、気にしないで!」
「ふふっ、大丈夫だから。」
そんな事を言う優しいを撫でて、多少強引に承諾して貰い、お金を受け取って貰う。
母親が帰ってくるまでの間だけ、アパートを留守にするだけだ。
どうってことない。
それにお金はあった方がいいだろう。
「分かったよ、お兄ちゃん。えへへ、ありがと!学校が終わったら連絡してね!必要な荷物まとめるの手伝うから!」
「ははっ!ありがと!また、連絡するね!」
予定を変更して、妹が来るのではなく俺が行くことになった。
「えへへっ!しばらくお兄ちゃんと一緒かぁ。嬉しいな!」
何はともあれ妹が喜んでくれたので良かった。
妹の為になら何でもやってあげたくなる。
妹がいるってこんなにも幸せがあったとは。
妹がいる人の事を羨ましく思いつつも、駅に着いたので二人で電車から降りる。
「じゃあね、お兄ちゃん!ここから学校まですぐだから!」
「ちょっと、待って!時間あるから学校まで一緒に行くよ!」
小学校より高校の方が授業開始が遅いので、一人で行こうとする妹について行こうとした。
しかし、
「ぜ、絶対だめ!今でさえ目立ってたのに、学校まで行ったら大騒ぎになっちゃう!」
「ちょ、どういうこと!?あっ!」
訳の分からないことを言った妹は、急いで行ってしまった。
…き、嫌われて無いよね!?
少し落ち込みながら、アパートの方向へと戻る電車に乗り、高校を目指す。
高校か、どんなところなんだろう?それに、なんで編入なんてしたんだろう?
疑問はたくさんあったがエンジョイするために頑張ろうと思った。
電車に揺られながら、窓の外を見てボーッとしていると、通勤の時間帯になったのか電車が混んできた。
人が多くなるにつれて本当に蒸し暑くなってきた。
Yシャツ姿になりボタンを開けて胸元を全開にしてから、袖を捲った。
半袖Yシャツが無かったので買った方がいいかもしれない。
しばらくして、電車に乗ってくる人が度々「えっ!」とか「きゃあ!」など悲鳴?をあげるので驚いた。
…何故か皆、俺を見た瞬間に悲鳴をあげていた。
(…なんで!?俺ってそんなにダメなところあった!?)
慌てて鞄から手鏡を出してチェックしたが、特に問題は無かった。
(大丈夫だよな!?…って、ここ女性両だったのか!?もしかして?)
鏡でチェックしたあと、辺りを見渡した時、異変に気付いた。
女性しか居ない。
そして、皆俺をチラチラと見ている。
中には顔を赤くしてじっと俺を見ている人もいる。
そして、さっきの悲鳴みたいな声。
以上の事から考察した結果、俺は女性専用車両に乗ってしまったのだと考えた。
(うわっ、やらかした。穴があったら入れ…入りたい。)
腕を組みながら俯いていると、電車が駅に着いたので急いで降りる。
幸い、行く予定の高校の近くまで電車は来ていたので、スマホで目的地を設定し、徒歩で向かうことにする。
(…ん?なんだろ?視線を感じる。)
スマホをチラチラしながら歩いていると、視線を感じたので辺りを見渡す。
すれ違った人や前から歩いて来て俺を見た人が皆、俺を凝視している。
……なんで!?
俺はその視線から逃げるように走った。
一 ふう、疲れた
しばらく走ったはいいが、困ったことに俺は迷子になっていた。
昔から何故か方向音痴で、イオンモールだとどの入り口から入ったのか分からなくなるタイプだった。
(余裕で間に合う予定だったのに、この時間は不味いな。編入初日から遅刻は印象が悪すぎる。いや、昨日休んでるからもう何か病弱設定とか付いてるかもしれない。…さて、取り敢えず近道とか考えず大人しくスマホの案内通りにいくか。)
勝手に近道を行こうとして遠回りになってしまっていたが、ナビに従えば流石につくはずた。
少しして、道沿いの民家から慌ただしい声が聞こえてきた。
「お、お母さん何で起こしてくれなかったのよー!」
「起こしたわよ!でも、後10分とか言って起きなかったのは
「そ、そうだけど!あ、もう時間ないからご飯いらないから!いってきます!」
「気をつけて行くのよ!」
そんなやり取りがもろ聞こえて、玄関からママチャリに乗った女の子が飛び出して来た。
小麦色に焼けた肌、黒い髪に少し長いショートカットだが、寝癖なのかアホ毛が立っているのが目立った。
ぱっちりとした目やハキハキした感じが、活発そうな印象を受けた。
夏だから半袖Yシャツで、短いスカートから見える足がスポーツをやっているのか絞まっていてとても目の保養になった。
制服がそっくりだったので、多分同じ高校だと思った。
…JKだ!JKだぞぉ!
その早香と呼ばれていた女の子は、玄関から飛び出した瞬間に俺を見て固まっている。
「どうかしましたか?」
俺はにっこりとしながら彼女に聞いた。
彼女は口をパクパクさせながら、何かに気付いたように顔をボンッと赤くしてかなりあたふたしていた。
そして手で顔を隠してしまった。
…どういう反応だ、これは。
何か嫌われたことしたかもしれないと考えつつ、返事がないので話しかける。
「その制服、同じ高校だよね!何年生?」
「…はっ!い、一年です。一年三組、
(三組だと!?俺の転入する予定のクラスじゃないか。なんたる好機。もしかしたら、こんな可愛い女の子と友達になれるかもしれない。あげくの果てに恋人にも…。)
そんな邪なことを思いつつ、積極的に話しかけようと思った時、
「早香!まだ、行ってなかったの!遅刻するわよ!」
そんな声が聞こえ、玄関から早香さんのお母さんが出てきた。
そして、お母さんも俺を見て固まってしまった。
俺は二人を交互に見た。
…この状況は…なんだろう?
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