第3話 何故か妹がいるらしい

『でーもね あえーたよ す…』


「…んっ!!」


反射的に体を動かし、アラームを止める。


昨日、ニュースを見て驚いたのでパソコンで色々調べていたのだ。

スマホは担任との電話の後に充電切れになったので使わなかった。


調べた結果、何故か昔から男性の出生率が低く、女性中心の社会が成り立ってきたみたいだ。

江戸時代とかは男性1に対し女性5くらいで、その時から一夫多妻が当たり前の社会になったらしい。


だが、問題は昭和の始めにベビーブームが起き、男性が婚期を逃した女性や子どもが欲しくなった女性に襲われる事件が多発したため、女性嫌いの男性が増加しはじめた。


女性を嫌いになり逃げていく男性が増える一方、男性を求める女性は増加。

ベビーブームで生まれた子どもも圧倒的に女の子が多くなり、その女の子達も母親の影響で男性に積極的に。


などなど、様々な問題が起きてしまった過去があるらしい。


今現在、ニュースで言っていた通り、男女比1:10、男の方がいいと思う男性が増えて男性の同性愛者50%越え、男性の生まれる確率は相変わらず。

…もしかしたら、前も後ろも守らなければいけない事態になるかもしれない。


(まあ、襲われるなんていくらなんでもあるわけないし。それよりも早く準備して学校に行って見ないと。編入か緊張するな、分からないことばかりだし。でも、女子が多ければいいなー。)


そんなことを思いながら、時間に余裕はあるのでゆっくりと身支度を整える。


アニメ、デート・ア・○イブで見たことあるような制服の、ズボンとYシャツを着る。

コスプレってこんな感じなんだ、新鮮だなーと思った。


着替えた後は朝食の準備に取りかかる。

冷蔵庫にあった食パンをトースターで焼き、コーヒーを飲みながら食べる。


普段ご飯を食べながらスマホを見る癖があるので、スマホを開くと大量のメッセージが届いていた。


ー メッセージ ー


母親 『修くん大丈夫!?先生から学校休んだって聞いたけど。編入なのに着いて行けなくてごめんね。私は仕事で当分日本に帰れないから、芽亜めあに頼んでしばらく様子を見てもらうことにしたからね。』


母親 『修くん、メッセージ見たら返信お願いね。』


母親 『修くん、大丈夫!?』


母親 『修くん、心配だから朝一で芽亜めあに様子見に行くようお願いしたからね。』


…などなど続いておりって、心配しすぎだわ。

ってか、芽亜って誰やねん。そんな知り合い、前世にはいなかったぞ。

それに…


(母親は父さんと離婚して隣町に引っ越していたはず。なのに、連絡先に父親がないってことはいないのか、父さん。…もしかして、男友達の大半も。)


ただ、過去に戻っている訳ではなさそうだ。

少なくとも男が少なくなっているという要素が加わっている。


「男が少なくのは寂しいけど、まあ女の子にモテモテになれるならいいかな。俺の今までの男友達よ、俺の記憶の中で安らかに眠れ!」


そんな事を言って過去の弔いをしたあと、母さんに「スマホの充電切れてただけだから、安心してね」と返信をする。


その後、もう一件のメッセージが来ていたのでそれを見る。


ー メッセージ ー


妹 『お兄ちゃん、大丈夫?心配だから朝、アパートに行くね!』


…妹だと!?

妹なんていたこと無かったぞ。

連絡先にあったからいるのかもとは思っていたが、本当にいるとは…。


…ハッ!

働きたくないという願いはもしかして、母親と妹が俺のこと心配過ぎて、一生面倒をみてくれるとか、そういう叶いかたなのではないか!?


母親一人だと面倒みきれないかもしれないから神様が妹作ってくれたのかも。

でも、母親と妹に養ってもらう兄って、それは流石に情けないから嫌だな。


そんな事を思いながら、時間が過ぎた。



ー しばらくして ー


ピンポーン


学校に行く準備を済ませテレビを見ていた時、インターホンが鳴った。


「はいはーい。」


玄関の鍵を開けると、そこにはランドセルを背負った夏らしい白いワンピースの小さな女の子が。

黒髪でショートヘア、肌は白くぱっちりとした目をしていて、身長は俺の溝内くらいの高さだ。

俺にはあまり似ていない…かなぁ。


その子は、一瞬、俺のことを見たとき嬉しそうな顔をして、にっこりと微笑んだ。


(…天使だ!)


小学生ながらかなり可愛いと思った。


「…えっと、…どちら様?」


多分今までの流れから考えて、朝一で様子を見に来るという芽亜という名前の子=妹=今、目の前にいる女の子ってことだろう。

でも、初めて見る女の子だから、首を傾げて聞いてみた。


すると、女の子は悲しい顔をして次に怒った顔をして右足を振りかぶり俺の股間を思いっきり…って


「ぎぃゃーゃーあぁぁ!」

「お兄ちゃんのバカ!」


冷静に解析している場合ではなかった。

股間を蹴られた。

玉が上に上がって来ようとして気持ちが悪い。


「ぬぅぉー!うぁーー!」


お兄ちゃんと呼ばれたことに気がついてはいるが、痛みでそんな事を考えている場合ではなかった。


「お、お兄ちゃんが悪いんだからね。芽亜の事を冗談でもどちら様って言ったんだから。ひ、久しぶりに会ったからといって実の妹忘れないでよね。…本当に悲しかったんだから。」


「…うぅー、くっ、ぐぉぉー!」


切ない顔をしながらこっちを芽亜が見ているが、ピョンピョンはねながら痛みを和らげる。


「…ご、ごめんね、お兄ちゃんがそんなに痛がると思わなくて…!

ど、どうするばいいのお兄ちゃん。ねぇ、ご、ごめんね。」


尚も苦しむ俺に対して流石に反省したのか、涙目になって素直に謝ってきた。

くっ、そんな可愛い顔されたら許しちゃうじゃないか。


「…芽亜よ、男の急所は絶対に蹴ってはいけません。…分かったか?」

「ご、ごめんなさい。」

「素直でよろしい!まあ、俺も悪かったよ。さて、もうお兄ちゃんは大丈夫だからな。」


俺はそう言いながら、妹の頭をなでなでする。

前世では妹などいなかったので、よくアニメで見るような対応をしてみる。

細く柔らかい髪が心地よい。


「っ…!」


お、妹の顔が真っ赤になった。

反応も表情もかなり可愛い。

神様、僕にこんなに可愛い妹をありがとうございます!


「…さて、出会いは散々だったが俺は心配しなくて大丈夫。あ、そうそう、芽亜聞きたいんだが、母さんが仕事で帰れないって言ってるけど、お前は母さんと二人で住んでいるのか?」


俺のスマホに入っていた連絡先は母さんと担任と妹のみ。

他に家族がいたら知らないといけないし、いないなら妹を一人にしたら心配だと思って聞いてみた。


「…?そうだよ!お兄ちゃんが高校生になってから二人だし…。どうしたの?気になる事でもあったの?」

「あー、少しね。一人で大丈夫か?夕飯とか大丈夫か?寂しくないか?」

「…大丈夫だよ!もう慣れちゃったし。家事全般きちんとやってるよ!」


妹は胸をはって答えたが、俺は妹が少し表情を曇らせたのを見逃さなかった。

人の感情の変化には敏感に生きてきたからね。


「そっか、芽亜は偉いな。だけど、お兄ちゃんは芽亜が心配だから母さんのいない間はここで暮らしなよ。一人よりは二人の方が良いだろ?」


俺は小学生の妹が一人で寂しくご飯を食べるところを想像すると、いたたまれなくなったので提案した。

小学生が一人でご飯って、もし自分だったらって思うと寂しいしね。

…親の離婚を経験した俺は、夕食で一人になった時の寂しさも知ってるからね。


「…いいの?お兄ちゃん。」


少し考えた様子の後、上目遣いで妹が見てきた。

…ヤバい、抱き締めたい。


「もちろん、可愛い妹の為だ。今日高校終わったら家に迎えにいくから。また、何かあったら電話するね。」


そう言うと、妹は満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。


「ありがとう!お兄ちゃん大好き!!」

「ははっ、ありがと!」


俺はそんな妹の頭を撫でつつ、素敵な妹をありがとうと俺の人生を変えてくれた神様?に感謝をしていた。

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