第2話 高校生になった?らしい

『でーもね あえーたよ すてーきな てんーしに』


「…んんっ!」


高校の時からアラームに設定してある某アニメの曲が大音量で流れ、朝だと気付き、スマホを探す。


「んー!朝か…。面倒だけど仕事行かないとだー!」


枕の横に置いてあったスマホを握りしめ、伸びをする。

寝ぼけ眼ではあるが、スマホの画面をスライドさせてアラームを止める。


「あれ?スマホの待ち受け、変えたっけ?」


アラームを止めた後、いつものようにメッセージが入っていないか確認しようとした時、異変に気付いた。

普段は仕事のスケジュール表を待ち受け画面にしてあるはずだが、何故か見たことのないイケメンと小学生くらいの女の子のツーショットだった。

…誰やねん。こんな知り合いいたっけな?


(昨日、酔ってたから勝手に変えたのかな?)


そんな事を思いながらベッドから立ち上がり、とりあえず顔を洗おうと洗面台にあくびをしながら向かった。

そして、鏡に写った自分を見たとき、俺は固まった。


「うわ!…ゆ、幽霊!?…いや、俺か!?」


一瞬、誰だか分からない顔が現れたので、鏡に幽霊でも写ったのかと思った。

だが、どうやら俺が動くと、鏡の中の人も動くので自分だと気付いた。

スマホの待ち受けで見た顔と同じだった。


「えーっと…どういう状況だ!?俺、若返ったのか!?いや、俺の若いときよりも顔つきがかっこよくなってるし。…そういえば、身長も伸びてる。」


俺はしばらく自分の顔をペタペタ触ったり、鏡に向かってポーズをとったりしてみた。


少しタレ目で、真面目そうで優しそうな見た目の顔が鏡に写っていた。。

髪は短すぎない程度に整えられ、鼻筋はスラッと通っていた。

女性と遊んでいそうな雰囲気の一切ない、パッと見はかなり好青年だった。

いつも見ていた背の低い平凡な顔つきとは大違いだった。

しばらく唖然していたが、


「ヤバい、もうこんな時間だ!遅刻する!」


急いで準備しないと時間が無いことに気付き、歯を磨き髪をセットして洗面台を離れる。


「えっと、あとはスーツと鞄を…あれ!?」


そしてまたまた、異変に気付いた。

スーツと仕事の鞄が見つからない。

そして、何故かあるのは高校生のらしき制服と学生鞄らしき鞄だけ。


「嘘だろ!?何で無いんだ?会社に遅刻するって連絡しないと!ってかそもそも制服なんであるんだよ!」


朝から本当に訳が分からないと思いつつ、スマホで連絡先一覧を開いた。

…あれ?なぜ、連絡先が三件しかないんだ?


「もうっ!昨日の俺!酔って連絡先まで消したのかよ。何してんだよ!しかも、なんで連絡先が母親、妹、担任の三件なんだよ。しかも妹って誰だよ、担任っていつのだよ!もう、今日は朝から色々わけわかんないよ!」


一通り自分にツッコミを入れた後、番号を打ち込んで会社に連絡したが「松本修史という社員は当社にはおりません」って言われたし、上司の番号思い出して電話したら「誰ですか?だ、男性!?」ってびっくりしたのか切っちゃったし。

…なんか本格的におかしいぞ。


「大丈夫、とりあえず落ち着いて一つ一つだ。まず、状況を整理しよう。お前ならできるはずだぞ、松本修史!」


そう自分に言い聞かせ、俺は昨日と今日の出来事を振り替える。



ーー 30分後


結論が出た。

俺、高校生になったわ。

色々と変化して。


どんなとち狂った考えだと自分でも思うが、ほっぺをつねると痛いから夢ではない。

隠しカメラ探したけれど無かったからモ○タリングでもない。


朝起きて姿形が変わるのは可能性としてほぼゼロに近い。

さらに何故か七月、西暦は十年前に…。

つまり、辻褄を合わせるにはその結論しか出ないわけだ。


「なんで高校生に…。もしかして、昨日の流れ星のせいかな?」


そう言って色々考えているとき、


ピコン!

と、スマホがなったので、画面を見る。

すると『メッセージがあります』との表示があったので確認する。

スマホは中身が変わっただけで健在だ。

あれ?こんな機種だったっけ?

…まあいいや。


「あ、担任からだ。なになに?『今日は我が校に編入の予定でしたが、学校に来られて無いようですが今日は欠席でしょうか?どうかなさいましたか?』か…。え!?」


…やっぱり、俺、高校生の頃に戻ったのか!?←実はそんな訳がないと思っていた

待て!その前に編入ってなんだ!?

俺は確認のために慌てて担任にメッセージ、いや、急ぎなので電話をかける。


プルル…プルル… 「…もしもし!松本君、どうしたの?」


女性が電話に出たので、俺は色々と質問をする。


「本当にすみません。実は色々と困惑しておりまして…。」

「どうしたの!?何かあったの!?大丈夫!?」

「怪我とかそう言うのでは無いんですが…、僕って学生でしたっけ?」

「…はいぃ!?」


すっとんきょうな声をあげた担任に俺は色々と確認をした。


結果、中学を卒業して三ヶ月ほど通った高校から、別の高校に編入するのが今日のはずだったらしい。


「前の高校でのことは先生、知っているから辛いかも知れないけれど、先生はいつでも貴方の相談に乗るから、明日こそ勇気だして来てね。」などと訳の分からないことを申しており、お手上げ状態になってしまった。


ーー


取り敢えず、担任には学校を休むと伝えておき、少し疲れたのでベッドに横になる。


「やっぱり、昨日流れ星にお願いをしたからだよな、この状況。…確か、モテたい、働きたくない、変わりたいだったよな、願い事は。」


働きたくない=高校生に?

モテたい=ルックス?

劇的に変わりたい=色々?


おおむね願い通りになっている…と言って良いのだろうか?

まだ、家から出てないから詳しい変化はよく分からない。

それでも多分願いが通じたのであろう。


「よくは分からないが、まさか、本当に願い事が叶うとはな。…正直、嬉しいな。」


俺よりも救われたほうがいい人は多くいたと思う。

俺は自業自得であのポジションになってしまった訳だし。

…でも、それでも、心の底から嬉しかった。


「…神様?新しい人生ありがとう。俺、頑張るよ。そして、彼女を作ったり青春を謳歌して全力で楽しんでやる!」


俺はそう意気込んだ。


やり直せるんだ!

せっかくのチャンスを生かし、飛びっきりいい人生にしてやろうと決意した。



ー その日の夜 ー


編入の荷物の確認や頭の整理などが一段落して、少し暇になった。


「ふう、一段落したしテレビでも見るか。」


テレビ番組が気になったので、お風呂や夕食を適当に済ませた後、テレビをつけてベッドに横になる。

すると、ニュース番組を見て、俺は目を丸くした。


「次のニュースです。男性と女性とのバランスについて様々な議論を続けているなか、遂に我が国の男女比率が男性1に対し女性10になりました。更に政府の調べで男性の同性愛者率が50%越えました。これに対し政府は更なる男性の出生率低下を危惧し、早急に対策を述べるとの見解を示しました。」


…ん!?えっ!?


まって、それはしらない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る