第2節
中学で半ば異常と思えるほど自殺にのめり込んだ彼女は、当然クラスで浮いた。もともと大人しい性格だったので、親しい友達は少なかった。それがさらに減った。彼女は分け隔てなく誰に対しても優しく、公平だったのに周りは拒絶してしまった。変わった子、としか見なさなかった。
彼女にとってもそのことはショックだったようで、表向きには自殺に対して関心を無くしたように振る舞うようになった。周りの子のようにおしゃれに気を使い、流行に乗り遅れない程度に音楽や芸能人の話題を知っていった。するとしばらくして周りの人間も拒絶しなくなった。でも逆に、このことが彼女の中で人間不信を生み、より一層自殺に執着したようだった。
「まーちゃんは私の興味を否定しないね」
彼女にこう訊かれたことがあった。
「だって、朋花の知りたいことだもん。私が何か言う必要なんかないじゃん」
そう答えると、彼女は少し嬉しそうな、でも少し翳りのある顔を見せたことを覚えている。彼女はその時から理解者を求めていたのだと思う。彼女の純粋な興味、朋花自身を理解してくれる誰かを。そういう意味では私は理解者になれなかった。ただ、否定しない傍観者でしかなかった。
卒業する頃には、彼女はほとんどクラスの人間と話さなくなっていた。表面的には穏やかに接していたけれど、彼女から何か話すことは絶対に無かった。いつも私とばかり話していた。
卒業後の進路を訊ねると彼女は、大学に行くための勉強ができるとこへ行くと言った。意味することは明白だった。
「まーちゃん、変なことを言うけど、まーちゃんとはまた会える気がする」
会おうと思えば会えるじゃんと返すと、彼女はただ笑うだけだった。
高校の話については何も知らない。進学先は知っていたけれど、私も彼女も通信教育だったから、人づてなんてなかったし、彼女との連絡も年に数回しかしなかった。ただ今になって言えるのは、その間に彼女は自殺への興味を無くすどころか進化させ、死そのものに関心を移していたことだった。
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