ある親友の思い
第1節
親友が自殺した。その話を聞いたのは職場の休憩室だった。オアシスに連絡が入っていて、それがその自殺した親友のアカウントなのに、彼女の母親を名乗る人からだったことがひどく現実味を持っていて、理解するよりも先に自然と涙が出てきた。
その親友は大人しい普通の子だった。特に頭脳明晰であった訳でも、バカだった訳でもなかったし、何か才能があった訳でもない。ただ、雰囲気が独特だった。
彼女とは、小学校で出会って中学も一緒だった。高校は違ったけれど大学で再会した。私は単純に資格を取るために大学に進んだけれど、彼女は勉強したいという理由で大学に入ったみたいだった。
彼女と私はなぜか馬が合った。何か共通の趣味とかも無かったのによく遊んでいた。私は楽しかったし、彼女も楽しそうにしていたと思う。同級生は彼女の雰囲気が怖いと言っていたけれど。
私は彼女の母親に葬儀の日取りを聞いた。そしてそのまま上司に休暇と早退を申請すると、上司は何も言わずに許可してくれた。
更衣室で帰る支度をしていると、彼女のことが頭をよぎった。いきなりあんなことを知らされて、何の実感もないのに彼女は遠くへ行ったと漠然と思う。彼女が自殺する理由なんて思いつくのはあれしかない。そのことを彼女が口にしたのは中学が最初だったか。
彼女、名前は
彼女もご多分に漏れず、自殺について興味を持った。年間何人が自殺をしているか、その方法は何か、状況や動機などに関心を持ち、のめり込んでいった。彼女のこういうものが近寄りがたい雰囲気を作っていたのかもしれないと、今になって思う。気になることは徹底的に調べる。このことは、少し斜に構えて関心がないふりをするのが肝心な思春期の子供には面白くないからだ。
とにかく、徹底的に自殺について調べると彼女は自分なりの疑問や、それに対する自殺観を見出していた。彼女は自殺観については語らなかったけれど、疑問は語ってくれた。曰く、オアシスの登場でなぜ自殺者は減ったかというものだった。きっとその時からオアシスに対して彼女は否定的だったのだと思う。彼女はオアシスへの意識摘出は他人に心を明け渡すことと同じで、保持することが出来ない臆病者が頼るものだと思っていた。
あの時に、彼女の自殺への関心は一気に高まり、大学まで行かせたのだと思う。変な話だけれど、あの時の彼女を止めていれば自殺しなかったかもしれないと思った。それだけ、あの時の彼女は死についての意味を見出そうとしていた。
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