幕間 とある過去の話①


「ねえ玲、聞こえてる?」

「うん」

「ぼくの声じゃなくて別の」

「やめろよ怖えだろ」

「ほんとうだって」

「早く寝ないと怒られるぞ」

「きっとぼくを呼んでるんだよ。窓の外から呼ばれてるんだ」

「んなこと言うなよ。おれまで眠れなくなるだろ」

「だって、」

「もう目え瞑れ」

「どうしよう玲」

「朝になったら一緒に行ってやるから」

「うん」

「とりあえず寝るぞ、眠い」

「分かったよ……ごめんね」

「続きは起きてからな」

「うん、おやすみ」

「おやすみ、涼」

「…………」





 目覚まし時計より先に目が覚めた。珍しいこともあったもんだ。

 なにか夢を見たような気がするが、忘れてしまったようだ。思い出そうとしても霧のように白く記憶が覆われてしまった。その靄の中から幼い顔の涼を見つけたような気がする。

 ガキの頃の夢だったか……?ぼんやりと考えていると廊下から足音がした。涼の奴はいつも早いな。毎日規則正しく行動している姿はとても真似できない。あいつはきっと体の内部に機械でもあるのだろう。

 しかしぼやいている時間はない。俺も支度をするか、と体を起こして伸びを一つ。役目を果たさなかった目覚まし時計が今更けたたましく鳴り響いた。

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