第14話水江と真白の中学時代

「いたっ!……」


 足を掛けられ、無様に転ぶ真白。


「きゃははは!何もねーとこで転んでんじゃねーよ、バーカ!」


 仕掛けたのは水江だった。


 それは三年のクラスで一緒になって、三ヶ月がたった頃。


 行われているのは紛れもなく、イジメであった。


 それも水江だけではなく、クラスの大半の女子を使っての事だ。


 机やノートに落書き、ボールや文房具などを投げつけ、上履きは捨てられる。


 被害者の気持ちを一切考慮しない、お決まりの嫌がらせだ。


 なぜ真白がこんな目にあうのかというと、きっかけは些細なこと。


 水江は持ち前の積極性とトーク力で、すぐにクラスの中心になった。


 だが真白は、そんな水江との関わりを拒んだのだ。


「悪いけど、気安く話しかけないでくれるかしら」


 水江は、ただ不愛想な女だと思っただけでなく、明らかに真白の目は自分を見下していると確信した。


 ただただ気に入らなかった。それだけなのだ。


 さっそくクラスの女子全員を先導し、集団で真白に嫌がらせを始めた。


 すぐにでも真白の情けない泣き顔が見られると思っていたが、そうはいかなかった。


 どんな嫌がらせを受けても、真白は全く意に介さない様子で、むしろ哀れむような目を向けてくるのだ。それがますます水江の逆鱗に触れた。


 ある日、ついにそれが爆発した。


「てめー、何笑ってんだよ、コラ!」


 いつものように、教室に入ってきた真白を仲間と嘲笑していた時。真白も平常通りに無言で通りすぎていくところではあったが、たまたま目があった。


 真白は、水江に対して見下したような笑みを浮かべた。


 今までで最も頭にきた瞬間。


 水江は、気がつけば真白の胸ぐらをわしづかみにしていた。


「ちょっと、何マジになってんの、水江?」


 突然のことに仲間も驚きを隠せない様子。


「痛い目みないとわかんねーのか!ああ?」


 平手を食らわせようとした所で、たまたま教室の前を通りかかった教師が止めに入った。


 イジメに対する学校の対応が問題視されていた時期もあって、水江は幾度となく担任の事情聴取に呼ばれることになり、そしてイジメの首謀者である水江は二週間の停学処分が下された。


 水江は真白に復讐することばかり考えていた。


 それが逆恨みであることを自覚した上で。

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