第13話二人に何が?

「変身できなくなった?」


「若菜っち、声デカイって」


 しまった、と私は思わず口を塞ぐ。


「ドレスアップ、と叫ぶだけで、エクスコーデに変身出来ていたのよ。今まではね」


 水江も真白も、どことなく覇気がなさそうだ。


 放課後、いつもの空き教室。


 音無さんも来るように言っておいたのだが、まだ来ていない。


 私は二人から昨日の出来事を詳しく聞いた。


 変身の事もそうだが、それより気になるのは……。


「なんで戦わなかったの?」


 どうやら昨日対峙したブラウンは、二人と瓜二つの形だったらしい。


 グーンの狙いが何なのかも分からないけど。


 でも、それが理由?


 見た目が何であろうと、ただのブラウンなのに。


「なんでって……なんでもだよ!」


「答えになってないでしょ!」


「委員長、あなたには分からないわ」


 今日の二人は、つくづくらしくない。


 まるで、なにか後ろめたいことを隠しているような……。


「水江も真白もよお、カガヤケルが全く感じられないぜ」


 ゴンが私の背後で呟く。


「それってどういうこと?」


「今の二人はエクスコーデの適合者ではなくなったってことだぜ!くそっ!」


 ぷいっ、とそっぽを向くゴン。


「用済みだ……って、いいたいのかしら?」


 真白がゴンを睨みつける。


「お前らが腑抜けのままなら、その通りだぜ」


「何もしらないくせに……っ!」


「あっ、ちょっと!」


 真白は教室の戸を乱暴に開けると、そのまま走り去ってしまった。


 しばらくの間、沈黙が教室を支配した。


 水江は何も言わず、怖い顔をして教室を出て行った。


 まったく。


 どうすんのよこれ。


 音無さんが来ても、話が進まないじゃない。


「あの……、今、水江さんとすれ違ったんですけど……」


 と、思ったそばから来た音無さん。


「何かあったんですか?……って、な、何ですか!この生き物は!」


 こうなったらしょうがない。


 本当は二人も交えて、一から説明するつもりだったんだけど。






「エクスコーデ……ブラウン……ちょっと理解が追い付かないんですけど……」


 まあ、普通はそうだよね。私だって多分、常識の感覚が麻痺しちゃってるし。


「でもこんな生物を目の当たりにしたら……信じるしかありませんね」


「じろじろ見られると照れるんだぜ」


「うふふ……ちょっとカワイイかも……」


 私はこほん、と咳をして、


「とにかく、あの二人がいないと話にならないのよ」


 一応は魔法少女部なのに、その役割を果たすべき人間があの様では……。


「私には……真白さんと水江さんが仲良くしてるだけでも驚きでした」


 ん?それってどういう事?


 そういえば、音無さんはあの二人とおな中なんだっけ。


「中学の頃は、どんな感じだったの?」


「うん、中学生時代はね……」


 音無さんは、ときどき遠い目をしながらも話してくれた。


 水江と真白の思い出したくない過去を。

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