第12話戦えないよ

「こ、これって……!」


「どういうことかしらね……」


 ブラウン出現の報告を受け、学校裏にある神社の駐車場に来た、水江と真白。そしてゴン。


 いつも通りそこにいたグーンとブラウンだったが、その姿は二人を驚愕させた。


 ブラウンの形状は、変身した真白と水江そのものだったのだ。


 当然、ブラウンの見た目はタールのような色をしたモヤの塊なのだが、あまりにも瓜二つの輪郭は、ドッペルゲンガーという表現が最も適していた。


「なんだそりゃ?それがどうしたっていうんだぜ?関係ねえ、やっちまえ!」


 ゴンが真白と水江を見ると、二人の表情は不自然なほど青ざめていた。戦意が全く感じられない。


「おいおい、なんだよ二人とも!」


「やはりな。思っていた通りだ。貴様らは甘すぎる」


 グーンが不敵に笑う。


 そうこうしているうちに、水江(の形をした)ブラウンは真白に、真白ブラウンは水江に、猛スピードで奇襲を仕掛けた。


「わわっ!」


「くっ!」


 水江の頬をハサミ(といってもブラウンの形状だが)の刃が切り付け、真白の額をチェーンがかすった。


 二人は負傷箇所を押さえたままうずくまる。


「どういうことなんだぜ……エクスコーデはカガヤケルの障壁を身に纏っているはずなのに……」


 戸惑いを隠せないゴン。


「もはや恐れるに足らんな、エクスコーデ」


 いつの間にか、真白と水江の武器は、ただのハサミとチェーンに戻っていた。


「ダメだ……、ごめん、ゴン!アタシら無理だよ!」


「私も……戦えない」


「くそっ!仕方ないぜ!」


 ゴンは大きく息を吸い込むと大量の煙を放出した。


 炎を吐き出すドラゴンのようだが、そのように格好のいいものではない。


 それは戦う力を持たないゴンの、唯一の抵抗であった。


「今のうちに逃げるんだぜ!」


「でも、あれを放っておいたら……」


「このままじゃ、やられちまうだろ!撤退だぜ!」


 二人はうなずくと、脱兎のごとく逃走した。


 悔しくて、水江は泣いていた。


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