第10話自分はどうしたいの?

と、いうわけで、今、その音無さんと一緒にいるんだけど……。


 私は水江とメールのやりとりをしていた。


 場所は近くのカフェ。


 学校の近くにカフェはいくつかあるが、あえて客入りの少ない所を選んだ。


 あれから音無さんには落ち着きを取り戻してもらい、事情を聞くためにここに来たのだが……。


 音無さんはずっとうつむいて何も喋らない。


「あのさ、軽音楽部の部長のことなんだけど……」


「……」


 だ、ダメだ……。


 水江からメールの返信が来た。


 (えー!音無ってあの音無?あいつまだギターとかやってたんだ!ウケる~!)


 知り合いなのかよ。


 だったら私じゃなくて、あんたが来なさいよ。


 二人のとこに連れていこうともしたのだが、この調子では……。


「ねえ、菱黒真白と玉野水恵って知ってる?」


 私が質問すると、彼女はびくっと体を震わせた。


「もし知り合いなら、あの二人のほうが話しやすいかな?」


「い、いえ!若菜さん……が、いいです!」


「え?そう……」


 ただの知り合い……らしいけど。




 話を聞くかぎり、部長のことは自分もよく知らないとのこと。


 そりゃそうか。


 彼女がブラウンやグーンのことを知ってるはずがないし。


 さっきの揉め事のいきさつは、だいたいこんな感じらしい。


 学園祭で演奏する曲は、流行歌のコピーか、オリジナルか。


 音無さんはオリジナルでやりたいらしい。


 部長もそれにある程度賛同してくれていたが、その部長が不登校になり、どうするのかは多数決。


 結果は言うまでもない。


 水恵にメールで事情を説明する。


 返信が来た。


 (そんな部辞めればいいじゃん。一人でやりたいことやった方が断然いいって!)


 まったく、簡単にいってくれるよ。


 協調性という言葉を知らない。


「音無さんは、他の部員に賛同してもらいたいんだよね?」


「いえ……その……」


 ?


「正直、コピーでも別に……いいかなって」


 なんだろう。


 関係ないはずなのに、この苛立ちは。


 まるで、昔の自分を見ているみたい。


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