第9話軽音楽部の音無さん

 まったく、あの二人にはついていけない。


 魔法少女部に入ったのは間違いだったかも……。


 月曜の放課後。そう思いながらも、再び魔法少女部の部室に向かった。


「さっそくだけど委員長、軽音楽部を視察してきてくれないかしら」


「え?なんで軽音楽部?」


 いきなりの命令に戸惑う私。


「ブラウンが現れたのを感じとったんだぜ。だが今どこにいるのかは分からない。おそらくグーンが何処かしらに潜伏させていると思うんだぜ」


「軽音楽部の部室から気配を感じとったっていうから、若菜っち、調査ヨロシクね~」


 真白と水江からはまるでやる気が感じられなかった。


「あんた達も来なさいよ」


「私達はパスするわ。軽音楽部の連中は気に入らないの」


 二人の態度に少し苛立ちながらも、私は自分の役割を果たすことにした。


 私は魔法少女じゃないから、もしブラウンが現れたら、すぐ二人を呼べばいい。


 まあ、今までのパターンだったら、一目につくところには現れないだろう。




「もういいよ、一人で勝手にやれば?」


「ま、待ってよ、みんな……」


 軽音楽部の部室前で、そんな声が聞こえた。


 なんだろう。


 こっそり中の様子を探ろうとすると、


「痛っ!」


 勢いよく部室から出てきた部員にぶつかってしまい、思わずよろめいた。


「ちんたら廊下歩いてんじゃねーよ、バーカ!」


 四人のうち一人から罵声が飛んでくる。


 なにこの人たち、怖い……。


「うぅ……」


 うめき声のような音がした。


 まだ誰かが部室にいるようだ。


「あ、あのぅ……」


 私は恐る恐るドアを開けた。


 そこには一人の女の子がうずくまっていた。ギターを抱えて。


「うわあぁあーーーーん!!」


 彼女は急に叫びながら立ち上がり、ギターをかき鳴らした。


 音楽には詳しくない私だが、その迫力に圧倒されてしまった。


 ものすごい衝動に駆られたようなギターソロが響き渡る。


 私はしばらく茫然と立ち尽くしていた。


「あの……ちょっとお話が……」


「ひゃっ!?」


 演奏が終わったのを見計らって、声をかける。


「あ、ごめん、私、格子戸若菜」


「えっと……音無麻衣です……」


 彼女は恥ずかしがりながら名乗った。


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