第8話健全なパジャマパーティー

 初めてカラオケに行った翌日。


「美奈子さん、大丈夫?」


 朝礼の前に、私は美奈子さんの様子を伺った。


 二度もブラウンを生み出して、気を失ったのだ。


 その都度学校を休んでいる。


「あ、委員長、心配かけてごめんね。多分、もう平気だから」


 ゴンが言うからには、もう彼女が狙われることはないらしいが……。


「それより委員長さ、最近あの二人と一緒にいること多いよね?」


「あ、うん、まあ、ちょっと……」


 それには訳があるんだけど、言えない。


 もっとも言ったところで、信じてくれるとは思えないけど。


「余計なお世話かもしれないけど、あんまり関わんない方がいいよ?」


「えっ?」


「なんかあんまりいい噂聞かないからさ」


 確かに、彼女達は決して健全とは言えないけど、そこまで悪いことはしてないと思う。


「ま、私には関係ないけど」


 美奈子さんは自分の席に戻った。


 ここ最近、おもいっきり関わってたんだけどな。




「ようこそ。歓迎するわ、委員長」


「はぁ、お邪魔します……」


 今日は土曜日。日も暮れてきた時刻に、私は真白の家に招待された。


 まだ夕食も食べていないので、水江が買い出しに行ったらしい。


 それにしても、友達の家にお邪魔するのは、何年ぶりだろう……。


 真白の部屋は、白をベースにしたフレンチシックな部屋だ。シンプルながら高級感があって、彼女の雰囲気にマッチしている。


 だが、私にとっては、落ち着かない……。


「どうしたの?落ち着かないわね、せっかくのアールグレイが冷めてしまうじゃない」


「うん、ちょっと緊張しちゃって」


「どうせ今だけだから気にしなくていいわよ。水江がくればもう――」


「お~すっ!お待たせ~」


 水江が勢いよく入ってきて、驚いた。


 ここは二階なのに、階段を登る音すらしなかったな。


「いや~、今日マジでついてたわ~!パチンコで二万勝ってきたよ!」


「は……?」


 こいつ今なんつった?


「だから、お菓子もジュースも、雑誌もいっぱい買ってきたぜ!今日は朝まで盛り上がろう!」


 私は無言で水江の肩をつかんだ。


「若菜っち、どしたの?」


「水江、私達高校生よね?」


 あ、と察した様子で水江は、


「大丈夫大丈夫、私、大人っぽいからバレないって!」


 などと抜かした。


「そーいう問題じゃねーよ!」


 水江の肩に腕をまわす。


「水江、一緒に職員室行こ?私からも謝ってあげるから。最悪でも停学一週間、反省文提出くらいで許してくれるから、ね?」


「え……?若菜っち、目恐いよ……?」


「……いいから自首しろ」


 水江の耳元でぼそっとつぶやく。


「いやいや、自首って何?あ~もう!真白、助けて~!」


「いい薬だわ、水江もあんなうるさい所に行くのは止めたら?」


 こちらを見向きもせず、1人エメリーボードで爪を整える真白。


「は、薄情もの~!」




「と、いうわけで、かんぱ~い!」


「何が、というわけだよ」 


 とりあえず、もう二度と行きません。の言葉を信じることにした。


 今だけの話だが。


 水江が買ってきたジンジャーエールに手を伸ばす私。


 あれ……。


「あのさ、二人が飲んでるのって……」


「見りゃーわかんでしょ~」


「ビールよ、いつも一杯目はコレなの」


 私の中の何かが切れた……気がした。




「ふっっざけんな、こらぁ!」


 美奈子さんの言う通りだった。


 この二人、無法者すぎる。


 少なくとも、私みたいな健全な女の子が、関わるべきじゃない。


 魔法少女?知るかそんなもん!


「私、帰る!」


 出ていこうとするわたしの両腕を二人ががっちりと掴んだ。


「離っ……」


「行かないで……」


「ゴメン、若菜っち、調子のりすぎたね、アタシら……」


 急に厳粛な態度を見せる二人。


 もしかしたら、根はまともなのかな?二人とも……。


 私に、心を開いてほしかっただけなのかもしれない。


 それなら……。


「だから、ひっく、いいんひょうも、のみまひょ」


「みんなでのめば~、きずなもふかまるってもんだよぬぇ~~」


 ……。


「飲めないんだったら、最初から飲むなぁーー!!」


 結局、私の体は一時間ほど酔っぱらいに好き放題弄ばれることとなった。


 もうやだこの魔法少女……。


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