光り輝く君へ・・・

勝利だギューちゃん

第1話

今、僕は暗闇の中にいる。

上下左右、どこを見ても何も見えない。


いや、違う・・・


はるかかなたに、ぼんやりと、一つの光が見える。

(あの光は、なんだろう・・・)


僕は行ってみる事にした。

でも、歩いても歩いても、たどり着けない・・・

それどころか、遠くなっている・・・

(どうすれば、あそこまで行けるんだろう・・・)

僕は途方に暮れていた・・・


「行きたい?」

どこからか、女の子の声がした・・・

とても透き通っていて、優しい声だ・・・

気持ちが安らぐ・・・


「ねえ・・・あの光の所まで行きたい」

また同じ声がした。

女の子に届くかわからないが、僕は口に出して答えた。

「・・・行きたい・・・」

女の子からの、返答をまった。


「そっか・・・行きたいんだね・・・」

「うん・・・」

僕は女の子からの、返事を待った。


「でも、今の君では難しいね・・・」

「どうして?」

「だって、君は月だもの・・・」

「・・・月・・・」

「そう月・・・月のままでは、あそこへは行けないよ」

女の子は、たんたんと答えた。


「月がどうして、輝くのかわかる?」

「えっと、太陽の力を借りているから?」

「正解!さすがだね。」

何がさすがなのかわからなかったが、少なくとも何かを感じ取ってくれたようだ。


「でも、それがどうしていけないの?」

「つまりね。月は自力じゃ輝けないの。今の君はその月と同じ」

「同じ?」

「そう・・・いつも誰かに頼っている。」

「頼ってる?」

「うん・・・太陽のように、自力で輝けないと、あの光のところまでは行けないよ・・・」

女の子の発言はかなり厳しい・・・でも、優しさがある。

そのため、不快な気分にはならなかった・・・


「で、ここはどこなの?」

「ここ?」

「そう、ここ」

僕は、女の子に訊いてみた。


「ここは、君の心の中だよ」

「心の中?」

「そう、心の中」

女の子はたんたんと答えた。


「君は『今のままではだめだ』と、そう感じてるよね?」

「うん」

「それはとても、素敵なこと・・・でも、それを実行に移せないでいる。」

「うん・・・」

「あの光はね。本来の君の姿」

「僕の姿?」

女の子の声に、僕は疑問を抱く。


「どうやったら、太陽になれるの?」

「その答えは、君自身で見つけないと、意味ないよ」

「・・・意味がない・・・の・・・」

女の子の答えを待つ。


「君は本当は、太陽のように、自力で輝ける事が出来るんだよ」

「僕が?」

「うん・・・だからね・・・」

ポンと、背中を押された気がした。


「少しだけど、私が力になってあげた・・・後は君次第・・・」

そういうと、少しだけ光が大きくなった。

近づけたのか・・・


「最後にもうひとつだけ、君を試させてね」

すると目の前に、ロープが現れた。

「『長い物には巻かれろ』って言葉しってるよね」

「うん」

「それは、君のロープ。君はそれで巻かれているの・・・」

「これで・・・」

それはとても、細い物だった。


「そのロープを切ってみて」

「これを・・・」

「そう、但し道具を使わず、君自身の力で」

「僕の?」

「大丈夫。君なら出来るよ・・・」


僕はそのロープを両手に持ち、左右に引っ張った。

意外と、あっさりと契れた。

僕には、こんな腕力はないはずだが・・・


「君はもう大丈夫。私は君の事しんじてるよ・・・」

僕は最後の疑問を女の子に投げかけた。

「待って・・・君は一体・・・」

「私?」

「うん」


僕は女の子からの返答を待つ。

「君が月なら、私は地球ね」

「地球?」

「そう、地球、もちろん例えだよ」

女の子はさらに続ける。


「もし月が無くなれば、あっという間に地球は廃墟となるわ・・・

とっても大切な存在・・・

でもね、それ以上に太陽は大切なの・・・」

「大切・・・」

「私にとって、君は月ではなく、太陽でいて欲しい・・・」


「えっ・・・」

「私の役目は、これでおしまい。じぁあね・・・」

「また会える・・・」

「もちろんだよ」

なんだか、とても嬉しそう二聞えたのは、気のせいだろうか・・・


「それはいつ・・・」

「さっきも言ったでしょ・・・君次第だって・・・」


少しの間を置いて、女の子の声がした。

おそらく最後であろう女の子の声が・・・

「なるべく早く再会出来るのを楽しみにしてるね。またね・・・」


それっきり、女の子の声は聞こえなくなった・・・

呼んでも答えてくれない・・・


それから、どのくらいの時間が経ったのだろう・・・

気が付けば僕は、産婦人科の分娩室の前にいた・・・


程なくして、大きな赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

ドアが開き、看護師さんがやってきた。

「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」

「私の、子供ですか・・・」

「そうですよ。今日からあなたは、お父さんです」


あの暗闇の空間での出来事以降、僕の中で答えは出ていない。

果たして、よかったのか?悪かったのか?

まだ先になるかもしれない・・・


部屋に入ると、妻が我が子を抱いていた。

「今日から、パパとママになったね」

妻とは、仕事で知り合った。

いわば職場結婚だ・・・


「私と、そしてあなたの娘よ・・・顔を見てあげて」

僕は娘の顔を覗き込んだ。

すると、気のせいか娘の声が聞えた気がした。

「やっと、会えたね」

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光り輝く君へ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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