4.君は嫌だったとしても

 怪しいサイトは久野が救済者だと主張する。彼は信念を持って行動するハシュだ。その信念は間違った強さを断罪すること。つまり、ハシュを虐げる人間や悪しきハシュを殺害するという大量殺人者だ。


 彼は現在逃亡中だった。


 


「突然の招集ながら来ていただいて助かる」


夏にあった菜月の事件から数ヶ月たち、季節は秋でケヴィンは手紙を待つ日々が続いていた。


 


 権堂とケヴィンは緊急の作戦会議に呼び出されていた。ハシュを討伐する部署を始め、数々の部署が出揃っている。場所は倉庫室で狭く、机にファイルが置かれているだけだ。 


 


「昨夜、フタツキ区で殺人事件が起きた」


 


 フタツキ区は海が近いから漁船や国を招き入れるヘイズコードの入口の役割があった。場は雑居ビルから見て下にあり、ヘイズコードからみて西側によっている。


 


「詳細は置かれたファイルにある」


 


 遺体は裏道でうつ伏せになって発見された。血液の凝固や状況から推察すると、深夜2時の犯行だと推察されている。胸の刺傷から出血、そしてショック死だと診断されていた。第一発見者は早朝の7時にジョギングしたところで見かけた。死体の風穴から領域を採取して加害者の種族が判明する。そして、その領域は指名手配犯の久野と一致した。


 


「この被害者はハシュを低賃金で働かせてストーカーしていたらしい」


「あの、久野の名前があることで我らの役割は把握しました。しかし、質問があります」


 


 挙手して女性が発言した。彼女は主に久野の事件を取り扱っているツバキという女性だ。幼い頃にハシュに襲われ大怪我を負った。それにより彼女は特務機関に所属して、彼らに対抗するため、半身を機械に改造している。


 


 「なぜ上司じゃないのです」


「そうだな。君らは久野を見つけ次第行動パターンを計測して殺害を執行する。しかし、今回は違うんだ。もちろん君に聞くことを上の許可はとっている」


「それだけじゃなくて、なぜここにケヴィンが出席しているのかという疑問です」


 


 彼は納得した様子で引き下がる。他の人々も頷いて、ファイル近くの役割分担に目を通す。


 


「ケヴィン。君は彼のことで恨みがあったよな」


「その通りです。だから、俺と権堂は久野担当から外されています」


 


 その発言に飯塚はそうだろうなとあっさり認めた。面食らう人々に説明を付け加える。



「それが当然だ。恨みが入ると仕事じゃなくなる。ツバキ、彼の特徴は何だ」


「彼には悪の哲学があります。それはハシュを虐げる社会的強者を刃物で殺すわけです」


 


 ハシュなのに久野は黒い糸を使わず刃物や絞殺を多様してきた。まるで、自身は理性ある犯行だと知らしめるようなものだ。


 


「そう。では彼はどこから情報を得ているのか疑問に思わないか。俺は思って独自の路線で調べた。そして、今回の事件に繋がってる」


 


 久野はある現場を頻繁に姿を現している。犯行現場も“彼ら”が使用していた場所が多い。


 


「実は今回の事件はリベロが絡んでいる可能性が出てきた」


 


 リベロとはヘイズコードで暗躍する麻薬組織だった。外のマフィアと軍隊崩れともパイプがあると噂され、情報なら座ってるだけでも入る組織だ。


 


「ケヴィン、君はビィの遺体を弔いたい。そうだろう?」


 


 久野は機械の遺体を回収している。その機械とは、他ならぬケヴィンの大切な人だった。


 


「その通り、です」


「久野とリベロは手を組んでいる。それを一網打尽にしたい」


 


 麻薬組織の中枢を叩いて、久野を引っ張りだす。そのために同じハシュであるケヴィンの調査及び、遺体の保管された場所を探り当てる。


 


「ケヴィン、復讐は俺たちの見えないところでやるんだ。その代わり、遺体は回収しろ」


「了解しました」


 


 やがて、会議は慎ましく終了して、各々退出していく。ケヴィンは権堂と一緒に自身の席に帰っていた。


 


「首飾りの中の彼女は、君の彼女?」


 


 ツバキが彼に話しかけてきた。権堂は無視して進もうとしたが、ケヴィンは素直に言う。


 


「俺の家族で、久野の被害者だ」


 写真の人はびぃという名前で、女性の形をした機械だ。ハシュのケヴィンを面倒見て育ててくれた親になる。それを久野に殺された。

 


「だから、君は久野を追いかけているわけだ」


 彼はプライバシーに踏み込れても堂々としていた。それに対して相手は執着心の底を知りたいと答える。


「今しか聞き出せないと思った。これで協力しやすくなる。悪いな」

「あのな、それに触れたいなら俺が行ってるやすらぎ会議に来てみろ」


 権堂は二人の間に入って邪魔をする。ケヴィンは安堵の息が漏れ出た。


 


「確か、まだ月イチの集会をしてるんだよな」


 

「ま、ケヴィンは行かないけどね」 


 


 ツバキは二人に感謝して自身の持ち場へ戻っていく。少なくとも彼女は愚直に目標達成してきた人間だ。ストイックなだけで、悪い人じゃないと印象を二人は受けた。


 



 


 フタツキ駅の改札口をすぎて、スーツの波を逆らって歩いて到着する。天気は晴れで秋にしては暖かい。入口を出ればヤシの木が植えられた場所に出た。駅に設置されてるモニターは『ハシュ殺人事件』の情報を開示している。


 


「ここに、久野が……」


 


 ケヴィンの友人は立場上仕事を抱え込んでいる。訓練の済んだ彼だけでフタツキ区の調査をすることになった。


 


 まず彼は事故現場に向かうことにする。バスに乗りこみ15分だけ揺られ、飲食店の立ち並ぶ道に到着した。犯行の影響で人が少ない。彼は裏に回り込み、鞄から許可書を取り出す。立ち入り禁止テープ横の警官に許可書を見せて侵入した。


 


 現場には黒い染みが大きく残されて、死体の生々しさを加速させる。そんな彼にある男が呼び止めた。


 


「貴方がケヴィンさん?」


 


 振り返ると女性が立っていた。高身長で髪の毛を後ろにまといポニーテールにしている。ぴったりとしたスーツを着こなして、声を聞かなければ女性だと判断つかなかった。


 


 ケヴィンは考えを止めて所属を聞く。


 


「あなたは?」


 


 彼女は手を差し出した。手馴れたように優雅な笑みを貼っている。


 


「実津(みつ)です。あなたと同じハシュですよ」



 彼は反射で手を握り返す。


 


 実津は噂はかねがね聞いておりますと、裏表なしに賞賛する。


 


「そういえば、子どもを救ったみたいですね」


 


「そこまで話が広がっていましたか」


 


「正直、尊敬しました。そのうえに悪しきハシュを討伐しているなんて。見習わないといけません」


 


「お世辞はやめてください」


 


 実津はヘイズコードの外から職探しに来たらしい。その割に褐色肌がヘイズコードの女性に馴染んでいる。


 


「仲間にあったらお聞きしたいことがあったんです」 


 


 ケヴィンは仕事上恨まれることが多い。同じ仲間を殺すなと嫌がらせを受けたこともあった。だから、一直線な好意は面食らって居心地が悪くなる。


 


「ストレスコントロールって何してます?」


 

 誰も問いただしていないのに、実津は言い訳するようにケヴィンの目を見た。彼らは外にいて秋風が包み込む。

 


「ほら、ハシュって意図的に黒い糸もといトランスをだせますよね。しかし、精神的ダメージを受けた場合は制限関係なく噴出するじゃないですか。あれがたまらなく怖いんです」

 


 海の波が色が変わらない境目で青空と遊ばれている。明かりのない海はうねる生物を飼育していた。ケヴィンはその光景を体操座りで見るのが好きだった。


「俺は海を見に行きます」


 


「心が落ち着くんですか」


 


「足を明日へ向け、心に装備するためです」


 彼が海に行くようになったのは、ビィのオススメしてきたからだ。最初こそ受け入れられなかったけど、いまのケヴィンは中毒のようにそこにいる。

 


「オススメしますよ」


 


「そうしてみます。ありがとうございます」


 


  さて、と彼女は瞳の奥で色が変わる。仕事の雰囲気を肌で感じた。


 


「今回は息のふきかかった人を使って来店します」


 


 リベロは堂々と店で販売しているらしい。逃げられるように客引きは少人数で交渉する。

 ケヴィンは調査する設定を思い出す。自身は低所得者のハシュで麻薬に手を出しそうになった。それで、購入していきたいという嘘だ。


 


「では、私は突入の下見をしてきます。おそらく乱戦になると思うので」


 


 現場から十分もかからない場所に、そのバーを見つけられた。今の時間は夜の10時で開店している。


 


 バーのドアをくぐって、店員の話に答えた。


 


「こんばんはー」 


 


 店内の雰囲気は落ち着いていて、秘密の会話に使える隠れ家だった。


 


 ケヴィンはメモ用紙に書いている店員の名前を呼んだ。



「スピカさんいますか」

 


 スタッフ以外立ち入り禁止の張り紙の扉から一人の女性が出てきた。ピンクの髪色で瞳は緑色。アニメから出てきたような奇抜なルックスで、それが様になっていた。

 


「はい。ご用件は何でしょう」

 


 彼女は困惑したように首をかしげ手のひらを顎の下に置く。美人だから許されて、不快感は芽生えなかった。

 


「浦崎に会いたい」


 それは、最先端な麻薬売買の隠語らしい。店に行って浦崎の品物を選ぶ。彼は手順をファイルで目を通したとき、大胆な交渉に関心させられた。 


 


「承知しました。そのように教えておきます」


 


 彼は飲料も一緒に注文した。その飲み物が手前のカウンターに置かれ、引き寄せる。


 


 すると、横の空いた席が埋まる。大柄で無精ひげの似合う筋肉質の男性だった。

 


「君が新しいお客さんかい」


 


 彼は浦崎だと自己紹介する。素直にケヴィンも伝えた。無言で注文した飲み物を喉を通している。


 


 「ねえ、君の名前を教えてくれないか?」


「ケヴィンだ」


「ケヴィン。よろしく」


 


 容器を空にして椅子から離れた。彼も急かされるように飲み干して、ついていく。バーの裏に回って、木の扉を進んでいく。周りの景色が鉄骨から家のような者に変わった。どうやら、隠し通路のようだ。

 通路の先は入り口をさす扉で、彼はドアノブを回す。ケヴィンは警戒しつつ踏み込んだ。突拍子もない光景が起きていた。


 


「パパー」「おかれりー」


「おい、子どもはもう寝る時間だよ」


 


 敵の質感が生々しくなる。彼は殺す相手の背景を無視してきた。それが、子どもという形で目を覚ます。


 


「悪いね。ケヴィン、ちょっと待っててくれるかい?」


 


 商売の部屋でケヴィンは取り残される。机には粉末と『エド』と氏名が書かれた紙が残されていた。

 彼はそのうちに手首の機械を起動させ周囲をスキャンした。手につけてるのは探知機であり、ビィには人間の聞こえない音を出しており、それで遺体と、その似た形を計算して見つける代物だ。大型の家電がヒットするものの、彼女に似た機械は見つけられない。音は見つけられなかった。


 彼は手首から気をそらした。浦崎の足音が近づいてきたからだ。


「あ、ごめん。前のお客さんの商品を置きっぱなしにしてたよ」


 エドと呼ばれる人間は手のひらに丸められ名前を見えなくさせる。商品も数え終わり、席についた。


「さて、望みの品は?」


 ざっと見た限り、遺体は見つけられそうもない。

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