第2章 私と島!!!
第38話 子供は好きだから大丈夫
ある日、俺がソウファ島に向かうと、港に見慣れぬ船が止まっていた。
そこから降りてくるのは、荷物を抱えた子供連れの夫婦、若い男性。
聞けば、どれもかつての島の住人だったという。
この島に農園が出来たのもあって、家族からの連絡で戻って来たというのだ。
農園で働く人を増やして、規模拡大しようと言う事らしい。
その事を自分の島に戻ってアリスに伝えると、
「わぁっ! それすごいっ!! ダーリンが農園作ったお陰で人が戻ってくるなんて、夢みたいね!」
と、喜んでくれる。
そういや、俺がこいつと会って初めてソウファに行った時も、島の若者とかが出稼ぎで居ないって話をしてたもんな。
そんな訳で、皆を引き連れて島に向かうと、農場で働く人が増えていた。
新しい家の建設も始まり、活気に満ちる島。
俺はそこで考えた。
「どうせなら、島の開拓を更に進めて、牧場とか商店街とかも作ろうかな」
牧場をしようと思ったのは、自分のとこで乳牛を飼い始めてからというもの、これで乳製品を売れたら面白いな、とか思ってたから。
商店街は、人が増えたなら物の需要というのが出てくるからだ。
ふむ、とはいえどうやってそうした事をしようか、と考えつつ島の農園を歩いていた時だ。
「はーいっ! みんな揃ってるかなぁ!」
アリスが子供を十人ばかり引き連れて歩いていた。
しかも、子供から妙に懐かれている様子。
「おねーちゃん! 今度はかくれんぼしようよ!」
「これ私の大事なお人形さん! いいこいいこしてあげてっ!」
そんな子供に対し、一人一人相手をしてあげるアリス。
俺が見た事ないような、穏やかで優しい顔をして接している。
食事と夜這い以外でのそうした顔は、ちょっと新鮮。
「おーい、アリス。何してんだ?」
「あっ! ダーリンっ! 島の子供とね、一緒に遊んでたのよっ!」
そういいつつ、子供をおんぶしたり、パンチしてくる子をいなしたり。
すっかり懐かれ、甘えられている。
「何で島の子供と遊んでるんだ?」
「んー? この子たち、親が仕事しているからってことで、私が面倒見てるの」
彼女が言うには、両親が共に仕事で居ないという家庭の子は、引き受けているらしい。
つい先日の事だ。
――働きたいのだけど、子供の面倒みるってなると、畑と家を往復しないといけないしねえ。
――わたしのとこは、おばあちゃんの面倒もあるから、働けないのよぉ。
そういう主婦の会話を耳にしたアリス。
――じゃあ、酋長の娘として私が面倒みたげますっ!
と、言ったのが事の始まり。
「それもそれで大変じゃねーか?」
「子供は好きだから大丈夫……、って! こらっ! 何処触ってんのよ!」
悪ガキがアリスの胸を突っついたので怒る。
そういえば、こいつ六人姉妹の末娘だって聞いてたけど、こうした子供に好かれるスキルがあるのな。
そう思うと、ただ遊んでるだけじゃなくて、もっと未来を考えて行動すべきだな、と思った。
「そうか、出荷組合があるなら、出荷組合の資本で店とか学校を作ってみるか」
俺は閃いた。
つまり、両親が働いてるというのならば、その仕事をしている間に子供に勉強を教えていくのだ。
もしくは、両親を対象に夜間学校をやるとか。
そうすれば、識字率も上がって、島の仕事内容も向上するし、文化レベルだって上がる筈。
そうは言っても、島で学校を作るとなると、適当な場所を探さないとな。
俺はそうして島の用地を探す事から始めるか、と思っていると、
「あ、それならいい場所があるよ!」
と、アリスに言われ、ある場所に連れてかれた。
「これっ! かなり古い建物だけど、改装すれば使えそう!」
見せられたのは、廃墟となった砦のような場所。
「これは?」
「うーん、島に残ってる古い建物ってとこね」
いや、見りゃ俺だって分かるよ。
俺が聞いてるのは歴史とかなんだが。
「まぁ昔の事って言い伝えくらいでしか残ってないからねえ」
アリスはエヘヘと笑うが、そう考えると文字って大事だなと思い知らされる。
人の歴史や文化、というのを伝えるのは、最終的に人の口伝だけでなく、本といった書物なのだということ。
……まぁ、真面目な話は置いておくとしてだ。
見た目的には砦、だが中身は朽ちた木材が散乱し、苔の生した石材も乱雑に置かれている。
「まぁ、修繕していけば何とかなるレベルだな」
てな訳で、砦跡みたいな場所で学校を建設することに決めた。
※次は9/5の12時更新予定です。
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