特別編 誰と行くの?
ある日の事。
ズグコフ商会のズグコフからユウヘイはある物を貰った。
「招待券? ですか?」
その言葉に、ズグコフは頷く。
「普段商売でお世話になっているので、そのお礼ってやつです。お陰様で繁盛しておりますので、御夫人とどうぞ。我が商会の一番人気店の特等席ですので、ご堪能頂ければと思います」
「は、はぁ……」
そう言って二枚渡されたのだが……。
ん? 俺と誰が夫人なんだ?
その招待券を持って帰り、俺は机の上に置いておくことにした。
「とりあえず、これは後で考えておこう」
田んぼの溝切をしに行くことにした。
☆☆☆☆☆
「こ、これは……っ!」
「……どうしたのアリス?」
アリスがわなわなと震えてチケットを握る。
「す、水晶亭の招待券!! しかも特等席っ!!」
その言葉に、ヘレンも動きを止める。
水晶亭の名を知らぬ女性は、ロンストンでも先ず居ない。
何故なら、上流階級御用達の名門海上レストランとして、そして何より首都ロンストンに暮らした事がある者なら、一度は行きたいと願う場所だからだ。
アリスもヘレンも、戦士アカデミーに在籍していた際、その名を嫌というほど聞いたことがあるからだ。
「ア、アカデミーに通う女学生なら、憧れ一度は行きたいと願うチケット何故!?」
それを聞いて、ヘレンは十秒ほど思案した後、
「……旦那様が誰かを誘う為じゃないですか?」
と、言う。
「なるほど♪ 流石ダーリンッ!」
アリスはその言葉に、チケット二枚をヘレンに見せる。
「これはダーリンが私の為に用意してくれたって事ね!」
「……どういう意味?」
「だって、私はダーリンの正妻だもの」
「……はぁ?」
ヘレンはそう言うと、フッと笑う。
「……押し掛け女房のアカデミー中退かつ落第生の貴方がそんな事を言っても、あんまり意味が無いと思うけど?」
「アカデミーを中退したのは別に成績が悪かったからじゃないもん!」
「……そうね。確かに成績じゃなくて、校舎の一角を間違って爆破したからよね。錬金術の授業で失敗したから」
プププ、と笑うヘレン。
「そ、そこまで言われる筋合い無いわよっ!」
「……やる気? これでもロンストン王国聖戦士隊に居た私なのだけど?」
「か、関係ないわよそんなのっ!」
そうしてバトルが幕を開ける。
が、そこへメルナがやってくる。
「……チケット?」
外でタイマンを始めた二人を他所に、チケットを手にメルナは主人の元へと向かう。
☆☆☆☆☆
「あー、それ? ズグコフから良ければどうぞ、って言われたんだよ」
俺は頭を掻きつつ、メルナの持ってきたチケットについて説明する。
「海上レストラン、ですか」
「そうらしいな。俺はこの世界のレストランって行った試しが無いけど」
「……」
「どうした? 行ってみたいのか?」
メルナがコクン、と頷く。
「じゃあ、一緒に行くか」
俺とメルナはレストランへ行く事にした。
その後、レストランの特別個室とやらで、豪華な料理とサービスを堪能した。
何故か、メインディッシュはフィッシュアンドチップスだったのが納得いかないが。
そんでもって帰ってきたら、アリスとヘレンが互いに傷だらけで、力尽きたように海岸の砂浜に倒れていた。
……何があったんだよ。
俺には見当がつかなかった。
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