第2話 ……っても、何すりゃいいべ?
抜けるような青空。
澄んだ空気。
カモメの鳴き声。
優しい太陽の日差し。
「えー、マジか。本当に転生しちゃったのか」
手に持った技術指南書だけは、確かに存在している。
さっきまで電車か何かに乗っていた筈なのに。
広がる世界は理想的な、スローライフにはうってつけな感じ。
「……っても、何すりゃいいべ?」
後ろを振り返ると、ヤシの木が並んでいる。
程よい大きさの石も、流木もある。
そして、視線を戻せば一面の海原。
「南洋の孤島みたいだな」
海に足を入れてみる。
ほどよい冷たさ。
日差しの具合も丁度いい。
砂浜に寝転がってみる。
青い空に、白い雲と鳥が鳴いている。
「……穏やかだ」
平穏。
久々に味わう安堵感。
目を閉じてみれば、波音が心地良い。
遠くにはいくつも島が連なっているのが見える。
しばらくそうしていると、ある事に気が付く。
「あ、じゃあここでサバイバルして生活するってことか」
異世界に来たのだ。
せっかくだし、思ったように生活しよう。
先ずは家でも作ってみるか。
「えーと、家の作り方……っと」
技術指南書を開いて、念じてみる。
出てきたのは家の造り方。
ヤシの木と葉で作る簡単ハウス。
「へー、これなら作れそうだな」
必要なのはヤシの木とその葉。
それを作るのに、必要な道具の作成法。
「石斧に石鎚の造り方か。結構簡単そうだな」
しかも、造り方は一度読めば覚えちゃうらしい。
早速手近な石、棒、縄になる植物を調達。
後は勝手に手が動く。
ものの十分もしないで、石斧が出来た。
「こりゃ良さげなやつができたな」
あとはこれを使ってヤシの木を倒す。
しかも、何故か豆腐を切るみたいに楽々。
「なんか俺、力つよくなってね?」
ちょっとびっくり。
これも魂ランクとかのボーナスか。
それから家作りに夢中になった。
目の前にある材料で、生活用品を一式作る。
気が付けば、ものの三時間程度で生活基盤が整った。
「テレビ番組だったら低予算で助かるだろうな」
これだけテキパキ終えられるのはビックリだ。
あとは飯か。
確かに動いたら腹が減ってきた。
指南書で食事について検索する。
どうやら、この島には魚介類、野草、果物が豊富らしい。
「そんなことまでわかるとか、ほんとこれ無敵だな」
非常に便利な指南書だ。
これさえあれば生活には困らない。
さっそく、銛をつくって、そのまま海へダイブ。
泳ぎは苦手だった筈なのが、スイスイ泳げる。
しかも息が苦しくない。
狙いをつけた魚に銛を突き刺すのも楽々。
「ひえー、すげえな俺」
あとは香草を使い、ヤシの葉で蒸し焼く。
「これもう俺立派なサバイバーじゃね?」
惚れ惚れするくらいに手際よく何でもできる。
あり合わせのサバイバル料理でも、コンビニ弁当よりかははるかに美味くできている。
「もう夕方か」
仕事をしていた時よりも、気分良く時間が過ぎる。
健康的に汗を流し、気ままに暮らす。
「これで酒でもあったらなぁ……」
そう思ったが、名案が浮かんだ。
「そっか、ヤシ酒でも造ればいいのか」
技術指南書を見てみれば、
ヤシ酒の造り方も載っている。
「へえ! じゃあ明日はこれでもやってみるか!」
思わず言葉も弾む。
波音を聞きながら、ヤシの葉のベッドに横たわる。
カモメの鳴き声と共に、ウトウトし始める。
焚火の鳴る音がリズム良く刻まれる。
「……おやすみ」
気分良く、そのまま眠りに落ちた。
南の島の朝は早い。
日の出と共に目が覚め、そこから活動が始まる。
「あー、爽やかな天気だな」
気温でいえば二十度前後くらいだろうか。
暑くもないし、汗をかかないのが心地良い。
しかし、腹が減った。
「どうすっかなぁ」
朝から魚を食べたいとは思わない。
いや、アジの開きとかならいいけど、そんなの作るって……。
「まぁ、今度からの為に作っておくか」
作ろう、そう決めた。
それはさておき飯だ。
後ろを見れば、鬱蒼と茂るジャングルっぽいのはある。
「昨日もあそこで香草取れたしな」
石斧ひとつを手に、ジャングルに入る事にした。
中に入るとアマゾンだ。
ツタ植物と樹木が密集した別世界だ。
だが、不思議と通るべき道が分かる。
「えー、ここいらに無いかな?」
石斧で植物を刈り取っていると、
「お、あったあった」
と、タロイモを見つける。
折らないように、慎重に抜き取る。
ついでに、食べられる野生野菜をいくつか拾う。
セロリみたいなやつと、キャベツみたいなものが手に入った。
「ま、こんなもんか」
幾らサバイバルでも、野菜が足りなきゃ壊血病とかになるしな。
うん。
そして帰ろうとしたら、途中で開けた場所を見つけた。
「へえ、畑に良さそう」
そういや、米や野菜が食べたいな。
なんなら作ってみるか。
明日から、農業をすることにきめた。
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