第219話 喧嘩
光の神から宣告された内容は衝撃的だった。
光神の加護を付与して最上位の練度まで強化、身体能力の上限までの向上、死亡時に一度だけ復活できる予備の命を付与、習得済みの全技能、全魔法の最上位互換への昇華、練度を最大値化・・・。
光神の提示する対価の数々は、あまりにも圧倒的で、凄まじく魅力的だった。
凶魔兵や巨蜂をどんなに狩っても得られない練度が一瞬で得られる上に、上位の技や魔法に置換して貰えるのだ。
条件は、使徒になること・・それだけだった。
何よりも、上位神の使徒になれるという響きが甘美だった。
それは、月光の女神の使徒だと言われている
それは、同じ日本人の高校生でありながら、手が届かない高みへ駆け上がってしまった
(・・これが最強・・無敵の力)
身が震えるような興奮を味わったのは、
元々、樹海の獣人や森の民に比べれば高い能力を持っていたのだ。だからこそ頼られ、樹海を守るために多くの戦いに参加してきた。しかし、どんなに戦っても、迷宮に挑んでも、どうやっても結城に追いつけない。
強くなった気になれない。
噂で聞いただけでも、力の差は歴然としていた。
(だが、今の俺達なら・・)
そう思っていたところに、
初めは他愛の無い挨拶程度だったが、何かをきっかけに
実際、そういう面はあったのだろうが、
身の内に溢れんばかりの力を試したいという欲求も手伝って、
「逃げられたけど、私達、負けてないよ!」
「
「しかし、これで・・
「確かに・・しかし、光神様の使徒となった時に、
「・・だからこそ、ぎりぎりまで伏せておいた方が良かったのではないか?」
「もうっ、やったことなんだから・・仕方無いでしょ」
長身の2人は、何だかんだ言い合いながらも仲が良く、戦いの時だけでなく、お互いに助け合いながら暮らしている。
「
「そうだけど・・どうせ、喧嘩するつもりだったんでしょ?
「使徒の役割だ。ただ、逃げられたのはマズかった。もう、
「
「未だに、100メートル程度しか伝話が飛ばせない
「・・駄目よね」
「無理だな。伝話とは言っているが、果たして俺達の知っている魔法と同じものなのか怪しいものだ」
それに、ほぼ接点が無いが、連れている
「
「
「それは・・・あっ!?」
直後に、強烈な爆発が次々に起こって4人を爆風と爆煙で包み込んだ。
「くっ・・敵っ!? いや・・この爆発は、
「・・そこだ!」
まだ爆煙に包まれた中で、
淡く見えている熱源めがけて光矢が吸い込まれ、激しい閃光と共に地鳴りがするほどの爆発が起こる。
「
「・・当てたと思うが」
「気をつけろ!」
その頭上から、赤々と輝く球体が降り注いでくる。先ほど爆発をもたらした爆発の魔法弾が、十や二十では無い数で上空に弧を描いて飛来して来ていた。
咄嗟に呪文を唱えながら、
「下よっ!」
「下・・
「任せてっ!」
息の合った動きで、
降り注いでくる赤い球体が激しい爆発を始めた。
凄まじい衝撃に、頭上へ展帳した魔法防壁がたちまち失われて、
吹き荒れる爆風と轟音の中で、
「・・これ、
「アイリ?
「幼い時に名前を変えたの。父親が色々あって・・」
「また来たっ!」
その時、今度は地面が下から突き上げられて爆ぜた。
「このっ!」
「
「・・俺が見える範囲に居ない」
先ほどから
この一連の攻撃が
以前の
4人に襲われて逃れたかと思われた
「・・駄目っ、支えきれない!」
「固まっていたら狙われるだけだ。あいつの武器は弾速が遅い。散開して自由に動けば当てられない」
「そうね・・
「・・・
それは、降り注いでくる赤い光球のさらに後ろ・・時間差にして5秒ほど後方から空を埋め尽くして紅蓮の光弾が飛来してきていた。
慌てて後ろを振り返るが、そちらからも数万という光弾が降って来ていた。数キロメートル四方を埋め尽くさんばかりの圧巻の
おまけに、空中から降らせている爆裂弾は地上に落ちる前に爆発したり、落ちてしばらく
凶魔兵をまとめて4、5体くらい塵にする爆裂弾を数十発も受け、魔法防壁を張り替えながら耐えた本郷玲子は見事だったが・・。足元に転がった爆裂弾が遅延して爆発を始めると、さすがに凌ぎきれなくなった。
声をあげる間も無く吹き飛ばされ、同時爆発の嵐の中で4人の身体が引き千切れて土砂に巻かれながら埋もれていった。
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