第193話 日々平安ナリ
チュレックは、潜水艦による奇襲に苦戦しながらも何とか持ち
潜伏位置が正確に分かり、先制して攻撃ができるようになると、潜水艦の脅威度は大幅に下がる。
(妙な加護持ち兵団は面倒そうだけど・・・まあ、さすがは国母さんだね)
精霊を味方につけた古エルフさんが健在である限り、チュレック王国は強国で有り続けるだろう。
(でも、スピナさんに頼りっきりで良いんかねぇ?)
いつまでも、1人のエルフに頼ったままで大丈夫? 加護持ちの騎士は何やってんの? 凄い魔法使いとか王宮に居る? 悪魔貴族やら宝石人形やらの事を考えると、国母さんクラスが10人は欲しい感じだけど?
依頼があれば助けに行くけど、間に合わないことだってある。もう少し頑張って欲しい。
我が国では、タケシ・リュードウの来襲に備えて、"迷宮ちゃん"に宝石人形やアーマ・ドールが万単位で入り乱れる階層を創らせて訓練中だ。正直、俺でも単独だと死ねます。満月なら突破できるけどねぇ・・。
考え事をしている俺の前に、ゲンザンと見慣れない
「陛下・・」
「・・ん?」
「デイジー様のお導きにより、
ゲンザンが
「スーラ・ノンスンと申します」
白翼の
「デイジー?」
俺はユノンの横に座っている凶巫女さんを見た。
「スーラは、治癒術の習得を経ず、いきなり神聖術を会得しております。術との親和性は極めて高く、霊力、霊圧も抜きん出ていますので、手解きをしておりました」
「"迷宮ちゃん"は、何階層?」
「単身では23階層ですが、前衛にハクダンが立つ事で51階層に達しております」
ゲンザンが答えた。
「えっ・・2人で50階層を越えたのか」
それは凄い。迷宮ちゃんの50階は、悪魔貴族と宝石人形が6人の小隊を組んで襲って来る。
「つきましては、新たな一翼を設け、それぞれ将と副将の地位を与えようと思うております」
「族長の意見は?」
「それぞれが将でも構わぬとの事でした。しかしながら・・」
「2人一緒の方が強い?」
「腹違いの兄妹でもあり、連携の呼吸は余の者が真似できるものでは御座いませぬ」
「よし・・ハクダンを隊長、スーラを副長として、宝石人形5、悪魔貴族50を1単位として、10日間で10単位を相手に防衛できる人数を選定してくれ」
「直ちに」
ゲンザンとスーラが低頭し、壁際に控えていたハクダンもその場で膝を着いて頭を垂れた。
「魔瘴地帯は問題無いね?」
ハクダンとスーラを等分に見る。
「はっ!」
「問題御座いません」
それぞれが答えた。どちらも気負った様子は無く、至極当然といった声音だった。
「神樹の向こう・・魔瘴の谷の先に魔界に通じる門がある。そう・・先日から
『はっ!』
軍服女子さんが短い返答と共に、宙空に地図を投影した。
「魔界の地図だ」
「これが・・」
「ハクダンも、こちらへ来てくれ」
「はっ」
「カグヤ、調査が終わった地域を色分けしてくれ」
『はい』
宙空の地形図が、緑色と白色、赤色に塗り分けられる。
「緑色の地域は調査が終わっている。この丸印は、あちら側にある門だ。それぞれ、こちら側の世界にある門に通じているんだが・・」
俺の話に合わせて、地図が並べて投影された。こちら側、北半球側の地形図である。同じように丸印があり、点滅していた。
「魔界側の門を潜った場合、こちらの世界の何処に出るのか調べている」
門を示す丸印の下に数字が描かれた。
「両方の地図に同じ数字があるだろう? 魔界にある1番の門から入ると、こちらの世界の1番に出る・・それを現す数字だ」
「なるほど・・」
「・・神樹の門に数字が御座いませぬ」
スーラが呟くように言った。
「俺は、森で蜘蛛の魔族に遭っている。樹海に魔界門があるのは間違いない。ただ・・樹海の人間が教えられている場所とは位置が違うらしい」
俺は神樹を中心にした地形図を拡大させた。
「この辺り・・それから、ここの辺りは、非常に強力な幻術によって覆われている」
拡大投影された地図を指さす。
「どれほど近付いても、この空域に突入しても認識できない見事な結界だったけど・・ついに、ユノンのマジュオンが歪みを見つけた」
俺の視線を受けて、ユノンが席を立って俺の横に並んだ。
「まだ
結界による歪み、距離感の錯誤が予想されるため、位置の特定には至らない。ただ、そうした構造物が存在することは、この場の誰1人として知らなかった事だ。少なくとも、
「
「・・畏まりました」
「それで、ハクダンの部隊に調べて貰いたいのは、こっちの・・」
もう一つの隠された地帯にある魔界門を指さした。
「この門の対になる場所が、魔界で見つかっていない」
未踏地にあるのだろう。
「魔界へ行き、この神樹の門へ通じる魔界側の門を探すことだ。言うまでも無く、この手の隠し事には未知の危険が潜むよ?」
「身命を
「ああ、そういうの駄目」
「ぇ・・?」
「遠足は家に帰るまでが遠足なんだからね?」
「ぇ・・と?」
ハクダンが困惑顔でゲンザンやスーラを見る。
「生きて戻り、自らの口で報告せよ・・陛下はそう仰られておるのだ」
ゲンザン・グロウが小声で
「な、なるほど・・」
「これから、魔界の総てをノルダヘイルの領土とするつもりだ。任務はこれで終わりでは無い。ハクダン、スーラ・・君達の活躍を期待している」
俺は
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