第190話 龍帝ミーティング


 龍種をたおしたということで、龍帝さんの"微睡まどろみ"にばれました。



『溶岩の古龍を殺しおったか』



「・・あいつが、いきなり呑み込んできたんだからね? 正当防衛ですよ?」



『判っておる。止せば良いものを、よりにもよって化け兎を喰おうなどとするからだ。あやつめの自死とも言える愚行だったな』



「・・なんか、遠巻きにけなしてるよね?」



『同族を殺められたのだ。嫌味の一つ二つ言わせろ』



「暴れますよ?」



『・・無差別の殺戮は止めろ。今回のように一対一の・・いや、龍種が攻撃をしなければ見逃すようにしてくれ』



「対価は?」



『もう、これ以上無いくらいに金銀財宝を持っているだろうが?』



「だから?」



『・・兎技も沢山持っておるだろう?』



「それで?」



『この上、何を欲するというのだ?』



「正しい知識」



『知識?・・何かりたいことがあるのか? 神にくべきだろう?』



「創造の杖について」



『む?・・あんなものについてってどうする?』



「きちんと自制して使えば良い物なのか、そもそも使ったらダメな物なのか」



『事の善し悪しは、立場なり、種族なりで異なるだろう?』



「じゃ、龍種として、回答お願いします」



『不要だな』



「・・理由は?」



『あれは信仰心をかてにして創造の力を発現するが、龍種には信仰とやらが存在せぬ。所持しておると、あれを欲する者に付け狙われるばかりだ』



「信仰心・・それ、他ので代用できないの?」



『神具、神器という物は、全てが信仰心によって強くもなり、弱くもなる。故に、神具なのだ』



「むむむ・・」


 龍さんが、もっともらしい事を言っている。なんか悔しい。


「・・ん? でも、リュードウは使いこなしてたんでしょ? あいつ、信仰心とかあったの?」



『彼奴は、他人の信仰心を利用する術を編み出したのだ』



「へ? 何それ?」



『秘術ゆえ、詳細は分からぬ。だが、光神めがそう言っておったから間違いなかろう』



「他人の信仰心を・・集めて利用する術か」


 まあ、魔法ならできるの? 俺にはさっぱり分からないけど・・後でユノンに訊いてみよう。真っ当な魔法じゃ無さそうだしね。そういうのは、ユノンの得意分野だから。


「信仰心を何とかしたとして、他にはリスク・・使用上の注意点は無いの?」



『想像力が、創造力になる・・タケシ・リュードウが言っておった』



「・・ダジャレ?」



『事実として、言っておったのだ!』



「ふうん・・あいつの場合は、妄想力かな? なんか凄そう・・」



『タケシ・リュードウは、ランドールの小僧っ子に目を掛けておった。雄なのに、雌の衣装で着飾った小僧っ子だったな』



「ふうん・・」


 うん、なんか心当たりがあるかもぉ・・。宝石シリーズって、モデルが居たんだねぇ。


「ランドール教会と繋がりがあったって事か・・じゃ、信仰心を集める時にもランドール教会を利用したのかな?」



『信仰心を集めるために、ランドール教をでっち上げて流布していたようだぞ?』



「マジかぁ・・」


 リュードウ、恐るべし・・。妄想実現のために、どんだけ頑張ってるんだ。と言うか、それだけ頑張れるんなら、その力をもっと別の事に使おうよ?


「宗教作って、信仰心を集めて・・あれ? そもそも、創造の杖は・・あ、そうだった。だれかから奪ったんだったな。ええと、つまり・・他人が持ってた杖が欲しくなって奪ったけど、自分に信仰心が無くて使えないから他人の信仰心を利用する術を編み出して、たぶん量が足りないから自前で宗教作って信仰心の養殖やって・・なんかさぁ、リュードウって・・」



『大馬鹿者だ』



「うん、偉大なる馬鹿野郎だね」


 正直、嫌いじゃ無いよ? ただ、目的がねぇ・・うん、そこだけは相容あいいれないかも。

 リブ改めアヤとか、ぶっちゃけ好きな女の姿をした従順な性奴隷を創っただけですもん。たぶん、外見も相当な美化をしちゃってるし・・あの不自然なまでに整った美貌とか、均整の取れ過ぎた身体とか、おっかしいから。日本人じゃないですから。あんなの創るために、どんだけ頑張ってんの?



『杖をどうするつもりだ?』



「どうしよっかなぁ・・女神様から、もう返さなくて良いって言われてるしぃ」



『星が降り、世界は混乱の極みにある。お前なら、世界そのものを手中にできるだろう』



「う~ん、でも、それって創造の杖が無くてもできるよね?」



『ふむ・・確かにな。杖の力があれば短い時間でやれるというだけだな』



「あの杖って、結局は神様の力・・その範疇はんちゅうの事しか出来ないんでしょ?」



『どういう意味だ?』



「神様にできない事は、できないんだよね?」



『それはそうだろう。神具なのだからな』



「・・そういう事なら、大した使い道は無いんだよねぇ。もうちょっと、創造の杖について詳しい人は居ない?」


 龍帝さんも正しい事をっているとは限らないからね。



『ううむ・・お前が何を考えておるのか分からんが、タケシ・リュードウの手に渡る前の事だが、杖について研究をしておった奴がいるぞ?』



「いたぞ・・じゃ無くて、いるぞ?」



『神樹の老いぼれエルフだ。知っておるだろう?』



「わお・・ルティーナ・サキール? 何か隠してると思ってたけど、やっぱりリュードウと何かあったんだ?」



『なんだ? 知らんのか? あの古エルフは、タケシ・リュードウと行動を共にしていた事があるのだぞ? そもそも、わしにタケシ・リュードウを引き合わせたのは、あの老いぼれエルフなのだからな』



「その辺りをもっと詳しく」



わしかずとも、本人にけば良かろう?』



「だって、嘘つかれたら面倒だし・・最悪、神樹ごと粉砕する騒ぎになるでしょ? そうなったら、ボクのお嫁さんが悲しむからね。出来るだけ、神樹の連中とは喧嘩をやりたくないんだ」



『ふむ・・いたメスのためか。悪くない心構えだ』



「なので、本人にく前に、龍さんにもいておきたいんだ」



『なるほど・・相変わらず、思慮が浅いのか深いのか分からん奴だ』


 龍帝が唸る。



「フレイテル・スピナさんはどうなの?」



『タケシ・リュードウは、攻略対象だと言っておったな。意味は分からんが・・神樹の老いぼれめが引き合わせたようだが、フレイテル・スピナを射止める前に、アヤコというメスに目移りして追いかけ回しておったからな』



「一緒には行動していない?」



神樹の老いぼれルティーナ・サキールと、フレイテル・スピナは古来の知り合いらしいぞ?』



「じゃ無くて、リュードウとスピナさんは?」



『無いだろう。タケシ・リュードウがびとして何やら贈り物をしたと聞いたが・・』



「うん、まあ、だいたい分かった」


 スピナさんが言った通りらしい。まあ、同じ古エルフでも、国母スピナさんの方はけに何でも言っちゃってるから、隠し事は無さそうだもんな。



『ぐだぐだしゃべっておっても仕方が無いな。決まり事に従って、いつもの褒美をくれてやる』


 目の前に、沢山のカードが浮かび上がった。


『選ぶが良い』


 そう言った龍帝の声に熱が無い。



「・・そうだね。決まりだし」


 答える俺の声にも熱が無い。


「じゃ、これにする」


 適当に、一枚カードを掴み取った。


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