第5章

第181話 神様ミーティング


「・・なんです?」



 俺は、真っ白な世界に喚び出されていた。神々の空間・・もしくは、面会用の空間だ。


 まあ、喚び出される心当たりはある。

 こちらから言いたい事もある。



『まず、礼を言おう』



「む・・う?」



 知らない声だ。



『お主に語りかけるのは初めてだ』



「ふむ・・でも神様なんですよね?」



『お主達が魔神と称している存在だ』



「ああ、魔神さんですか・・初めまして、コウタ・ユウキといいます」



 以前、空の迷宮から落ちた時の魔神とは別らしい。



『私は、死と断罪を司る魔神だ』



「・・俺、処刑されるんですか?」



『礼を言ったはずだ』



「はぁ・・でも断罪とか」



 死と断罪云々と聴かされたら、そこを疑うでしょ? いや、俺は無実だと確信しているけども・・。



『魔界の地表を大きな兎が暴れ回ったようだったが・・・まあ、それを差し引いても礼を言うべきだと思い、月光に断りを入れた上で召喚したのだ』



「・・素晴らしいです。さすがの寛容ぶりです」



『無論、苦情はある』



「あ・・そっすか」



『だが、魔界の生物を滅びから救ったことは紛れもない事実・・・神々の間では賛否両論ある。断罪すべしとの声も大きい。だが、魔神はいずれも賞賛の声をあげている』



「さすがです」



 素晴らしいです。魔神万歳。



『魔神を代表し、お主に褒美を授けたい・・とは言え、月光から加護は認めぬ旨、厳しくクギを刺されている』



「ふふふ、女神様の加護で十分なのですよ」



 何だかんだで命を拾って来られたのは、月光の女神様の加護があったからだもんな。



『ふむ・・技能を一つ。それだけは許可を得た。本来、庇護神と神域をたがえる者には許されぬことだが・・』



技能スキル一個です?」



 あれれ? なんだか、さびしい感じだぞ?



『うむ』



「選べない?」



『そうだな』



「・・ふうん」



 しょぼいんだぜ・・。



『しょぼくは無い』



「・・ひぇ」



 考えを読まれてるぅーーーっ!? って、まあ、この白い世界は体とか無いし? 口を開いて喋ってるわけじゃ無いもんな。



『お主達、異世界人が好んで望む技能だからな』



「ほほう?」



 期待しちゃうぞ? なにかな?



『鑑定眼だ』



「・・なにそれ?」



『む? 知らぬのか?』



「えっ?」



 なに? なにか有名な技なの? 凄い技? 鑑精霊と何か違うわけ?



『いくつか優れた点がある技だが、これを創った魔神は少し癖がある奴でな・・いや、それはともかく、いかなる方法による幻影、幻覚も看破できるようになる点は戦闘において利用価値が高いだろう』



「ほほう・・?」



 単眼の巨人にやられた目眩ましに引っかからなくなるということか。あれが、術なのか、魔導具なのかは不明だけど・・。



『対象の能力を判定できる』



「ふむ?」



 ゲームじゃ死ぬほど微妙で使いどころが無いやつじゃん? コマンド消費してまで、相手を調べても無意味で・・おまけに結構失敗しちゃうやつでしょ? その間に、モンスターの攻撃を食らって、おまけにクリティカルで画面が赤くなるやつ・・。



『よほど力の差が無い限りは失敗することは無いのだが・・・』



「だが?」



 魔神さんの歯切れが悪い。



『・・なんというか、評価手法が微妙でな』



「微妙・・?」



『これを授けた異世界人からの評価も微妙だ』



 なんか、期待値が駄々だだ下がりなんですけど?



「微妙だらけじゃん? 異世界人が好むとか言ってたのに?」



『人界の神々も、その技能なら・・と、許したくらいに微妙な技能だな』



「・・わぁ~い、最高でぇ~す」



『だが、目眩ましが効かぬようになるだけでも有用だろう?』



「・・ですね。もう、それで良いです。元々、なにも期待して無かったんだし」



 まあ、騙されにくくなっただけでも良しとすべきか。



『ふむ・・お主が魔界域に帰属するならば、いくらでも技能を授けるのだがな』



「わはは、寝言は寝て言ってくださぁ~い」



 俺は、LOVE女神様なのですよ。 裏切るようなことは致しません。



『ふむ、月光め・・良い駒を得たな』



「女神の犬と呼んでくださいませ。ワンと鳴いて見せましょう」



『くくく・・兎が犬とは愉快な奴だ。まあ、今回はこの辺で退散するとしよう。またな』



「はいはい、またね」



 ふっ・・もう、神様に喚び出しとか慣れっこなんだぜ・・。もうね、緊張の欠片も無いよね。



『少しは緊張しろ』



 いきなりの苦笑気味の声は、月光の女神様のものだった。いつの間にやら入れ替わったらしい。



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