第157話 俺の話を聴けぇっ!
(うわぁぁ・・・とっ、遁光ぉーーー)
誘導式だった
瞬足を使って強引に距離を詰めて近接戦を挑んだら、黒翼少年のやつ、瞬間移動をしやがりましたよ?
魔法とかじゃ無いです。もう、何て言うか・・科学的なやつです。
(魔族に・・悪魔に・・ロボかよっ!?)
勘弁してください。いや、確かにエメラルドとかいう奴も、何だか機械じみたパーツが見え隠れしてましたけども・・。だからって、ビームにミサイルは無いでしょう? しかも、そのミサイルって、ドローンも
爆発させれば、1個1個が即死レベルだし・・。
今のボク、結構丈夫な体なんですよ? まあまあ人外レベルの・・。
(ありえねぇ・・)
ここ、剣と魔法の世界でしょ? ロボは反則じゃないの? いや、神様とか何やってんの? ちゃんと仕事しなさいよっ!
「・・・む?」
さんざんビームを速射し、超小型ミサイルをばらまいていた黒翼少年が、不意に動きを止めていた。
(まだ、何かやる気?)
新しい
「・・っと、おろ?」
くるりと向きを変えるなり、黒翼の少年が
「これ・・急降下とか、上から狙撃とか来るんかねぇ?」
どうやら、闇雲に展開しているというより、色々と試みている様子だ。
「おぅ・・」
眩いんだぜ・・。
太陽がそこに出現していた。夜だけどね。お月様が主役なんだけどね?
「ビームか、これ・・」
巨大な光の帯が幾つも
(ははは・・)
笑うくらい熱いんだぜ。多分、半径500メートルくらいの円形に大地が
まあ、遁光を使えば回避は出来ます。でもね・・。
(デイジーに賭けてみるかぁ)
逃げ回っていたら、相手が調子に乗るばかりだ。少しはペースを乱してやらないと・・。
「おぉぉぉぉ・・」
意味無く声をあげて、俺は大の字に両手両足を拡げて、巨大なビームを受け止めるように身を投げ出した。デイジーが幾度となく試し、試案した様々な属性を組み合わせただろう魔法障壁が、巨大なドーム状に展開されて俺を護ってくれる。
(・・うん、熱い。でも、これぐらいなら耐えられる)
正確な減衰率というのは分からないけど、体感で半分くらいの熱さになっていた。溶解していた石とかが、赤みがかってシュンシュンと音を立てるくらいになっている。
おかげで、
「霊刻、第9紋、解除・・」
いったい何秒くらい照射して来るのか、黒翼の少年は未だに上空から放ち続けて動かない。
(・・宝石シリーズだよね?)
ちらっと疑念が芽生える。ミサイル発射したり、ビーム撃ったり・・まあ、どう考えても異世界人が関与していると思うけど。
「第6紋、解除・・」
・・ブゥン・・ブゥン・・ブゥン・・・
耳元で羽音のような鳴動音を響かせつつ、
(む・・)
不意に、辺りを灼いていた光が消え去った。どうやら、照射が終わったらしい。
(間に合うか?)
まだ、第6紋だけど・・。
ビームを避け、ミサイルに耐え、灼熱光の照射に耐えきった。次は何をやってくるのか?
「・・ふぁ?」
おかしな声が漏れた。黒翼の少年ったら、ビームっぽい剣を握りましたよ? 何と言うか・・ピンク色の光る棒です。
(き、来たっ・・)
これは悠長に霊刻解放とかやっていられない。翼を広げているくせに、なんかロケット噴射的な光を背負って急降下してきます。
(
第6紋までで、
真っ向から打ち下ろしてきたピンク棒を、
(・・って、あれ・・・はっ?)
嘘だろっ! 身を投げ出すように上体を捻って跳ぶ。それでも、肩口から一筋の灼き痕が脇腹にかけて刻まれた。切ると同時に
(じゃなくって・・)
こいつ、俺の
完全なる初見殺しのトリックプレイ・・。俺じゃなければ真っ二つですよ?
「・・なるほど」
避けるためには、こちらの攻撃を当てにいかないと駄目らしい。傷は浅いけど・・。結構、ハートは傷付きましたよ?
シッ!
小さく呼気を吐いて
少年が右へ鋭く移動して、横殴りにピンク棒を振る。しかし、今度は少年の肩口で衝突音が鳴った。避けたはずの少年の左肩に俺の
「眼だけで避けられると思うなっ!」
鋭い気合い声と共に、穂先を斬り下ろす。
急後退をして逃れ出た黒翼の少年だったが、左肩から右脇へかけて浅く斬り裂かれていた。
これで、互いに傷1つ・・。
(近接で負けるわけにはいかないんだよ!)
今度は、こちらから突いて出た。距離5メートル足らずの攻防だ。この距離で圧せ無ければ勝ちは無い。
無数に繰り出す俺の
この近接戦闘は、完全に計算違いだったろう。
黒翼の少年が、見る間に傷を増やし、何とか距離をとって逃れ出ようとし始める。
(逃がさないよ)
ガイィン・・
ついに避けきれず、腕で顔を
(こいつ、完全にロボじゃん!)
誰だよ、こんなの造ったの!? もう、本当におかしいでしょ!
見た目は完璧に生身のようだけど、皮膚っぽい物も、その中の骨格やら筋肉やら・・全てが造り物だ。
(・・って、嘘ぉ!)
フイィィィ・・
回転音がして、
ドッドドドドドドドド・・・
至近距離から銃弾が撃ち出された。1発1発が腹に響くような重い音を響かせて連射される。バルカン? ガトリング何ちゃら? なにやってくれちゃってんの!?
(く、くそぅ・・・何でもアリだな、こいつ・・)
大急ぎで右へ左へ回り込んで射線から逃れつつ、走りながら逃さないように追いすがる。ここで距離を取られたら元も子もない。
「お、おいぃぃ・・」
両肩から銃弾を撃ちまくりながら、両腰の辺りに別の銃口らしき物が覗く。速射で撃たれたのは、ビーム光だった。
(ちょ・・ムリ、ムリ、ムリ!)
必死に位置を変え、姿勢を変えて回避しているけど、もう限界ですっ! 無理だからっ!
ほぼ涙目で逃げる俺めがけて、少年の黒翼の辺りから例の小型凶悪ミサイルが連続して発射された。あり得ない角度で向きを変え、どこまでも
「おぅのぅ・・」
5メートル未満の距離から、バルカン、ビーム、ミサイル・・。
(・・なんちゃって)
・・魔兎の宙返り!
取って置きの兎技を繰り出した。
遠いと無理だけど、この距離ならっ!・・そして、
ものの見事に俺と少年の位置が入れ替わる。
(ひゃっはぁーーー!)
銃弾の命中音にミサイルの爆発、ビーム光が激しく明滅して、悪夢のようですよぉ!
(よしっ・・)
ちょうど、日付が変わりました。模写技が復帰しましたよ。
「・・しぶといな」
爆発煙が晴れると、少年が斜めに身体を傾けながらも立っていた。黒い翼は幾枚か千切れ、左腕が溶解してぶら下がっている。全身から焼煙を立ちのぼらせながら、おかしな大きさに開いた右眼が俺に向けられている。
『お名前は?』
「コウタ・ユウキ」
『あなたは、戦闘力が正常ではない。おかしい』
「いや、お前に言われたく無いから・・・そういう、お前は? 名前はあるのか?」
『フランナ』
「フランナ? そんな宝石あったっけ? 宝石シリーズじゃ無いの?」
『ジュエル・ナイツは別の命令を与えられて稼働している。私は、アグレッサー・セブン』
「アグレッサー? まあ、いいけど・・タケシ・リュードウに造られたんだよな?」
『いいえ、私はジュエル・ナイツのパールによって生成された』
「ふうん・・その、パールさんは何処に?」
『神によって破壊された』
「あ、そう・・」
こんなの造れる奴なら会ってみたかったな・・。
『待機していたアグレッサーも破壊された』
「お前は動いてるじゃん」
『フランナは起動待機状態で、この大陸に投下されていた』
「ふうん」
『神は、この次元では長い時間の稼働ができない』
だから破壊されなかったとでも言いたいのか?
「・・何で、俺を攻撃して来たの? 俺がジュエル・ナイツを破壊したから?」
『あなたを、神と誤認した』
「おぅのぅ」
とんだポンコツじゃん、こいつ・・。俺と神様を間違えるとか。
『神に似通った波長のエナジーを感知した』
「・・・ふうん」
『あなたは神か?』
しつこいね、君も・・。
「違います。ボクは人間です」
『あなたは勝者だ。敗者に嘘を言う必要は無い』
「いいえ、本当ですぅ。ボクは、人間ですぅ」
『勝利者として、どう言おうと自由、でも・・』
「だから、俺は人間だから! 神様がそう言って・・だいたい人間だって言ってたし!」
言ってたよね? 俺は人間だって・・。
『・・・とにかく、私は敗者。破壊するなら今が良い。このまま放置すれば700時間ほどで再生し、またアグレッサーとして行動する』
「あれ? 今、流した? 俺が人間だって納得して無いよね?」
なんて無礼なロボなんだ。
『・・早く破壊して』
「ちょっと待てや、コラッ?」
『だから、もう人間という事で納得すると言っている』
「いやっ、それ違うよね? 全く心がこもって無いよね?」
『私に、心は無い』
「いいや、そんな誤魔化しは通じんよ? 滅茶苦茶、心あるよね? お前造った奴って天才じゃね? 尊敬するわ・・じゃなくて、俺は人間よ? 嘘偽り無く、正真正銘の人間だからね?」
『だから、もう、それで良いと言っている。あなたの言葉を信じる事にする』
「違ぁーーーーーうっ! 断じて、ダウトぉーーー!」
・・破城角っ!
少年っぽいロボの頭めがけて自慢の頭突きをお見舞いした。たまらず、よろめく少年の胸倉を掴み、
「よく覚えておけっ! 俺は、コウタ・ユウキは人間だっ!」
・・一角尖っ!
・・破城角っ!
最凶コンボを叩き込んだ。
なお、俺達が白熱した論議を繰り広げている間、我が家の女性陣は机椅子を持ち出して、お茶を飲みながら静かに見守っていた。
さすがなんだぜ・・。
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