第147話 お久しぶりです


 真っ白で何も見えない。

 そう・・俺は女神様のび出しを受けて真っ白な世界に来ていた。



『よくぞ、宝石人形共を討ち果たしてくれた』



 月光の女神様の声を聴くのも久しぶりだ。どうやら元気そうで安心した。



「まだ2体ですけどね」



 エメラルドとルビーは仕留めた。ただ、アンバーとダイヤモンドが残っている。



『神域に踏み入ったアンバーとやらはたおした。ダイヤモンドには手傷を与えたが取り逃がしてしまった』



「おおっ・・」



 さすがに、神界もやられっぱなしじゃ無かったらしい。



『ダイヤモンドは手強いぞ。こちらも何柱か斃されている』



「ほほう・・」



『名前はダイヤモンドだが、実際にはそれ以上の防御力だな。辛うじて、精神系の攻撃はとおったが・・』



 よく分からないけど、普通に攻撃したんじゃ無理って事かな?



『こちらが浴びせた攻撃は、ダイヤモンドを破壊できるものばかりだったがな・・ほぼ無効化された。精神攻撃だけは・・いや、それも半減されたと言っておったな』



「ふうむ・・面倒な奴なんですねぇ。やっぱり、見た目は女の子っぽい男の子ですよね?」



 よく間違われる俺が言うのも何だけど・・。



『うむ。精霊皇帝の側小姓だと称しておったな』



「ははは・・またそれですか」



『他にもおるやもしれん』



「ですよね。4人だと決めつけるのは危ないかも」



 4人しか居ないと決めつけるのは危険だろう。



『ふむ・・ところで、おぬしの胃袋に収まったルビーとやらだが・・』



「ああ・・もうね、胃が内側から焼けるのを味わったのは人生初でしたよ。胸灼むなやけって、ああいうのを言うんですかね?」



『神兎の胃袋で無ければ即死だろう』



「はは・・」



『自我は消滅し、粒子は力を失っておるようだ』



「お馬鹿でしたけど、まあ・・良い奴でしたよ」



『神界の救援に駆け付けたということで、おぬしの評価は大いに高まり、今回の働きについて、何らかの報奨を授けるべきだという事になった』



「おおおっ!」



 貰える物なら何でも貰いますよぉ!



『とは言え、神界も色々ときな臭い。今回の騒動を機に、要らぬくわだてを始めたやからもおるようじゃ。そもそも今回の騒動も、発端は神域の者にあるらしいと噂されておる。いずれにせよ、則を乱したのならば、厳罰は免れまい』



「ふうん・・」



 それで、ボクの報奨は何ですか?



『将来の争乱を予見し、おぬしに加護を授けることで手駒として引き入れようという神々もおるようじゃ』



「馬鹿ですねぇ」



『ふふ・・まあ今更じゃな』



「あ・・・そうだっ! もし、報奨を選べるのなら、うちの連中に、女神様の加護を授けて貰うわけにはいきませんか?」



『む? 我が加護は清らかな乙女にしか与えられんぞ?』



「・・ボクは?」



『おぬしは良いのだ。十分に面白かったからな』



「女神様?」



『ふふふ・・良かろう、これぞと決まった者がおるのか?』



「ええと・・あ、先に加護を貰っていたら無理なんでしたっけ?」



『加護を与えた神の性格によるのぅ・・気にせぬ神もおれば、所有を主張して臍を曲げる奴もおる』



「・・それって、事前に分かります?」



『ふむ・・そうよな。まず、名を言ってみろ』



「清らかなの判別はお任せしますね? お願いしたいのは、リリン・ミッターレ、パエル・ノイラータ、シフート・デン、ファンティ・アクミル、アルシェ・ラーン・・この者達を選んだ理由は、今後、俺が連れて戦場に出たときに、どうしても毒や麻痺といった状態異常の薬や魔法を浴びる事になるからです」



『・・・ふむ、清らかなという前提を無視されておるようで面白くないが・・おぬしの言いたいことは良く分かる』



「報奨ということでしたので、無理を承知でお願い致しました」



 俺は土下座をして深々と頭を下げた。うん、真っ白で何も見えませんけどね。こういうのは気持ちだから。



『おぬし自身にくれてやる報奨が無くなるが?』



「・・我慢します」



『ふむ・・シフート・デンは、清らか云々以前に乙女ですら無いな』



「はは・・それ、俺を前に言います?」



『ふん、あの時はおぬしがあまりに悲惨だったから特別にくれてやったのだ』



「・・恐悦至極にございます」



『アルシェ・ラーンは・・未亡人か。う~ん・・・』



「俺、神様のために頑張りましたよねぇ? 本当に火を呑むくらいに頑張ったんですよぉ?」



『分かっておる。ゆえに報奨を与えるのじゃ』



「シフートとか・・仲間はずれにしたら泣いちゃいますよ?」



『・・・アルシェ・ラーンとやらは花妖ではないか』



「らしいですね」



『ならば、毒や麻痺を恐れる必要は無かろう?』



「ああ、いや・・女神様の加護って階梯レベルが上がると腐蝕とか腐敗とか、病気も防げちゃうんですよ? まあまあ万能なんですけど、ご存じでした?」



『ほう・・』



「はっきり言って、ちゃちな剣を振り回すような加護より億万倍も有能です。むしろ、最高の加護だと言って良いと思います」



『・・うむ、まあ・・そうよな』



「だからこそ、こうしてお願い申し上げるのです。俺の・・ノルダヘイルの民に女神様の加護をお与え下さいませ」



 胸元で手を合わせ、眼をうるませて懇願こんがんしている・・・つもりである。



『・・・やれやれ、おぬしも役者よな』



「素敵な加護というのは本気で言ってるんですけど?」



『まあ良い。おぬしの言いたいことは良く分かった』



「加護を授けて下さいます?」



『たまには負けてやろうか』



 女神の声に笑いが混じったようだ。どうやら折れてくれたらしい。



『加護の競合も心配いらぬようだ。忙しない話だが・・今宵にでも夢見にて告げて回るとしようか。それから・・お腹の粒子は装具にして下げ渡そう』



「ええと・・とにかく、ありがとう御座います! もう、でっかい神殿建てちゃいます!」



『小さな祭壇で良い。代わりにき酒でも供えなさい』



 苦笑交じりの声と共に俺の意識が暗転していった。

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