第144話 ノルダヘイルの華
「カグヤ、サクラ・モチの復元状況は?」
『はっ! 内部機関の復元は完了致しました。内壁並びに外殻部の復元率はどちらも40%を超えつつあります』
「敵には感知されていないな?」
『当艦以上の隠密性を有する船は存在しません』
「だが、相手は亜空間をくぐって、蛙・・ジアン・トードやホーネットを送り込んできている。未知の技術を有している可能性が高い。あらゆる方法で存在を隠蔽し続けてくれ」
『了解であります!』
「敵の発見から攻撃までの時間差を極力小さくしたい」
『はっ! リドニウム尖砲弾の装填、光力の加圧と同時に潜行、強襲、離脱を行います』
「うむ」
俺は、座席の上で大きく頷いて見せた。まあ、武器の種類とか分かってないけどね。こういうのは、ノリと勢いだから。
『司令官閣下』
「どうした?」
『本作戦名をうかがっておりません』
「うむ・・俺としたことが、高揚のあまり失念していた。俺が司令として行う初めての正式な作戦だからな。作戦名は“ノルダヘイルの華” 、識別コードは”ND8931”とする」
口から出任せに言っちゃう俺なのです。
『承知致しました!』
軍服女子が背筋を正して、ビシッと敬礼した。
「さて、事情は話した通りだから、ゲンザン達は異変に備えて、ノルダヘイルで防衛行動を継続。同行はユノンとデイジーのみにする」
「はっ、承知致しました」
「敵の出方によっては、緊急招集もある。十分な余力を維持しておくように」
「はっ!」
片腕を胸元へ当てる大鷲族流の敬礼動作をして、ゲンザン達が退艦して行った。
「話精霊、カモン!」
『ご伝言ですかぁ~?」
蜜柑色の衣装を着た精霊が姿を現した。
「アルシェ・ラーンに伝言を頼む。返信付きで」
『う~ん・・と、はいっ、大丈夫ですよぉ~』
「ちびっ子生徒達の監視をお願い。抜け出そうとしたら縛り上げて監禁して。以上」
『承りましたぁ~。代金は5000セリカになりまぁす』
「わかった」
『口座から引き落としになりまぁ~す』
「うん、もう一件頼むよ」
『どなたに、ご伝言ですかぁ~?』
「フレイテル・スピナ」
『うぅ~~ん・・うぅ~ん・・あっ、発見しましたぁ! 伝言できますよぉ~』
「異界からの侵入者を討つことになった。一当てしてから状況を報告する。以上だ」
『承りましたぁ~。代金は50万セリカになりまぁす』
「遠過ぎでしょ・・わかった」
どれだけ遠方に出掛けているのか。
『口座から引き落としになりまぁ~す』
「オッケー」
『ご利用ありがとうございましたぁ~』
蜜柑色の精霊が丁寧にお辞儀をしかけて、ふと動きを止めた。
『返信ですぅ~』
「どっちから?」
『フレイテル・スピナ様から、チュレック各地で魔族の侵攻が散見されるようになった。ちょっと魔界に行って文句を言って来る・・ですぅ~』
「・・あらぁ」
『返信でぇ~す』
「・・なんだって?」
『子供達が何度も抜け出そうとしたため、眠らせて監禁中です・・・以上になりまぁ~す』
蜜柑色の精霊が営業スマイルを残して消えて行った。
「義母さんの方は?」
ユノンに訊ねる。
「ロッタさんの伝話だと、まだ魔族に動きは見られないようです」
「そっか・・」
迷宮の旅館の女主人を思い浮かべる。あの迷宮はチュレック領土内では最大級に育っている。それだけ、魔瘴の力が強い場所があるのだろう。
『司令官閣下』
「行けるか?」
『はっ!』
「では、行こうか。サクラ・モチの力を見せつけてやろう」
『探査波の打信と共に、光力臨界で亜空間潜行を開始、索敵情報に従って射程内に強襲移動、リドニウム尖砲弾を射出後、急速潜行にて戦域を離脱します』
「うむ、全ての行程をカグヤに委任する。見事に、やり遂げてみせろ」
『はっ!』
「頼もしいな。頼りにしているぞ」
『光栄であります! 必ず、ご期待に応えてみせます!』
(さて・・本当に頼みますよ、カグヤちゃん)
冗談抜きで、貴女に全てがかかってます。正面に映し出された
『探査波打ちます。急速潜行っ!』
カグヤの声が、司令室に鋭く響いた。
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