第139話 後始末
俺は・・いや、俺達は
タケシ・リュードウの仕掛けた呪いに打ち勝ったのだ。ユノンとデイジーには、もう、ひたすら謝罪しか無い。
新婚早々に、それも初夜がとんでもない惨劇となり、いきなり
そう、あの惨劇の折、散々に
考えた末に、貴族をならって公の
「1000回を単純にお分けして頂きましても、500回・・3日でとなりますと、166・・167回。時間あたりに換算しますと、6・・7回でしょうか」
(うぅ・・やめてよぉ、そんな
「お方様・・・お叱りを承知で申し上げますが、万が一の時のためにも、少し
「・・そう・・ですね」
ユノンが顔を
「御心を傷めるような事とは存じます。ただ、デイジーが所用で留守にしている場合など、御身がお一人で受け止める事になりますでしょう?」
「はい・・」
「無論、今すぐにという訳ではありません。ですが、仮に10名でお情けを頂戴するとなりますと時間あたり2回未満、それを3日間ですから生存確率は高まります」
「そんな事はやらないから、俺は・・」
「コウタ様・・」
「とにかく、今は思いつけないけど、何か別の方法を探してみる」
「コウタさん、私の事でしたら・・」
「いいや、ユノン・・それから、デイジー。俺は・・そんな事をするくらいなら死を選びます」
断固拒否だ。だいたい、夫婦のアレって命がけでやるような事じゃ無いでしょ? 少しの間、一緒に寝る事は我慢して、その間に解決策を見つければ・・。
「神聖術は効果が望めません。付加されたというより、生来の能力であるかのように自然に備わっております」
「・・
「文献によりますと、リュードウ・・厄災魔王は、幾千もの加護者を固有の秘術にて隷属させ、世界征服を目指して国を
「最期は、神様と龍帝に斃された?」
あいつは、それっぽい事を言っていたけど。
「・・正確な記録は御座いません。一説には、神々が召喚した勇者と相討ちになったとか」
「ふうん・・」
まあ、神様や龍帝が出張って来るような事態だったんなら、巻き添えで人間とか消し飛んでいただろう。正確な記録なんかあるはずが無い。
「もう500年くらい前の事です。今の世に記憶している者など、ほとんど居ないでしょう」
ランドール教会が収拾した史書や遺物に、
「500年も?」
それにしては、仕草や喋りっぷりに、世代差を感じなかったけどな? 500年前って、日本で言ったら何時代だろう?
「
「・・はは」
「ただ、女性が好きかと言えば、どうだったのでしょう? 子孫については噂すら無く・・こう、大勢の女を集めて囲い込むだけで、手を触れる事は無かったという説もあるようです」
「ふうん・・」
「まあ、実際にはそのような事は無かったのでしょうけど・・ただ、大勢の女性を集めて回った事だけは真実のようです。今は名前だけになりましたが、女村や女人塔など地名や遺跡となって遺されています」
「ある意味、凄いね」
「チュレックのスピナ様や、神樹様であれば、もっと詳しい情報をお持ちかも知れません」
「確かに・・」
どちらも、長生きしているようだし、タケシ・リュードウと面識があってもおかしくない。話を聞いてみるべきだろう。
(・・タケシ・リュードウか。本当の意味で、
馬鹿だけど、面白い奴かも・・なんて思っていたけど。
「少し、留守にするよ」
俺は、ユノンを見ながら言った。
「・・どちらかに?」
ユノンが不安げに
「龍の親分に会ってくる」
「・・龍帝に? それは・・お一人で?」
「あいつが、人見知りかも知れないからね」
「コウタ様は大丈夫なのですか?」
デイジーの表情も硬い。
「まあ・・大丈夫かなぁ」
ちゃんと会った事は無いけどね。タケシ・リュードウについて
「2人を連れて行っても大丈夫かもしれないけど・・ちょっと分からないから、神樹の辺りに居て欲しい」
「・・分かりました」
「
ユノンとデイジーがそれ以上は何も
龍帝の居場所を知っている訳じゃ無いけど、なんとなく棲息領域をうろついていれば逢えそうだ。
(まずは樹海の岩山かな)
あそこを登って見つからなければ・・。
(龍種を探して仕留めちゃうか?)
形はどうであれ、龍を狩れば龍帝と会う事はできるだろう。ただ、感情的になって落ち着いた話ができない可能性もある。
(やっぱり、探した方が良いかな)
龍帝とは、まあまあ顔馴染みだし、なんというか憎めない奴だし・・。どちらかと言えば、俺の方が迷惑をかけている感じだし。
「ちょっと探してみて、居場所が掴めなかったら戻ってくるよ」
そう言いつつ、俺は部屋の中を見回した。
主に俺によって汚された部屋も、洗精霊によって何事も無かったかのように清潔になっている。もちろん、自分自身も洗って貰って綺麗になった。
「とりあえず、清算して出ようか」
「はい」
「そうですね」
色々と大狂乱をやらかした後だ。出禁確定な気もするが・・。
2人と連れ立って廊下に出ると、背中に
「
無表情に
「うん・・清算を頼む」
「畏まりました。お部屋にてお待ち下さいませ」
「あ、ああ・・部屋払いなのか。分かった、部屋で待とう」
出鼻を
(これ、説教タイムなんじゃ?)
あの女主人が怒りも露わにやって来る絵しか浮かびません。
「まあ、誠心誠意、謝罪するしかありませんね」
デイジーが呟いた。どうやら、同じ未来を想像しているらしい。
(・・来たぁ!)
俺の耳が、深々とした絨毯を踏んで近づく足音を拾った。廊下を歩いて来るのは、3人だ。1人は先程の部屋付き女中。1人は旅館の女主人。もう1人は覚えが無い。護衛か何かだろうか?
ユノンと2人でソファに座ったまま、お客様さんの到着を待つ。デイジーは俺の後ろに控えて立っていた。さりげない位置どりだけど、神聖術で俺を支援する事を想定した立ち位置だ。
謝罪はする。要求されれば賠償金も支払う。ただし、身に危難が及ぶ事態となれば遠慮なく戦う。
(そうは、ならないと思うし・・多分、まだ敵わないかもな)
部屋付きの女中ですら、かなりの強者だ。女主人にいたっては、ちょっと底が知れない。
(・・そう言えば?)
ふと、脳裡に小さな疑念が浮かび上がった。
ここの女主人って、何歳なんだろう? 魔族とかなら、タケシ・リュードウが生きていた時代の事も知っているんじゃないかな?
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