第81話 あのさぁ・・。


「あのさぁ・・もう、なんなの?」



 俺は呆れ顔で嘆息した。



『それは、こちらの台詞だ! 何度も何度も、我が微睡まどろみを邪魔しおって!』



「そんなん知らんよっ! でかい奴をたおたびに呼びつけられる身にもなってよ!」



『お主がおかしいのだろうがっ! どうして、そう何度も何度も龍種と出くわすのだっ!? 確率的にありえんだろうがっ!』



「向こうから勝手に来るんだよっ! 俺だって迷惑なんだっ!」



『ぬぅぅ・・』



「あんた龍帝エンペラーでしょ? なんとかしてよっ!」



『何とかとは、何だっ?』



「龍種が寄ってこない魔法とか無いの?」



『そんなものがあるか!』



「ちっ・・使つかぇ」



『何か申したか?』



「いいえっ! ただ、頼りにならんと嘆いただけですぅ~」



『ぐ・・こ、この・・』



「あっ!? それに、今回のは龍とはちょっと違ってたし・・俺1人で斃したんじゃ無いよ? 一騎討ちじゃ無かったのに、何で呼ばれたわけ?」



『・・・あれは、龍種の幼体をコアにして生み出された邪龍の一種だ。邪龍そのものに大きな打撃を与えていた事と、何よりも最後の核を破壊したことが評価されたのだろう』



 なるほど、アナン教団が非道な事をやっていたわけか。



「ふうん・・え? だろうって・・龍帝さんがジャッジするんじゃ無いの?」



『評価は司法神が行うことだ』



 下々の人間が知らないところで、色々と役割の分担があるらしい。



「へぇ・・」



『まあ・・我らの幼体を呪いから解放してくれた事には礼を言う』



「・・どうも」



『さっさと褒美を選ぶが良い!』



「・・うっわ、投げやり。感じ悪ぅ~」



『良いから、さっさと選べ!』



「はいはい、すいませんねぇ・・」



 俺は目の前に浮かび上がった沢山のカードを眺めた。



「じゃ、これで」



 適当に1枚を選ぶ。



『ほう、珍しいものを引き当ておったな。魔呑まどんか・・』



「ん?・・なんなの、それ?」



『我が大昔に討ち果たした魔兎の変異種が使っておった技だ』



「なんなの?・・何ができるようになるの?」



『一定量までの魔力を対価にした技や術が効き難くなるのだ。まあ、我ほどの存在であれば容易く突破できるがな』



「・・魔法除け? 魔法防御?」



『大雑把に言うと、そうなるな』



「すっごいじゃん!」



 なに、その卑怯技チート! 最高じゃん!



『うむ・・ただ・・』



「ただ? なに?」



 嫌な予感しかしませんが?



『支援や回復のための魔法も効き難くなる』



「・・・クーリングオフを請求します」



『くーりん・・? とにかく、すでにお主に宿ったものは、例え神々であっても引き剥がせんぞ?』



「マジかぁ・・」



 俺、とんだ地雷を引いちゃったんじゃ・・。



『案ずることは無い。かつての魔兎ほどの力を得るまでには相当の年数がかかる。今はせいぜい少しばかり減衰できるかどうかといった程度だろう』



「それって、どのくらい? どんな技がどの程度まで防げるの?」



 斬撃を飛ばしてくる剣技は防げるんですか? 骸骨が使ったような火炎の魔法は?



『さあな、それは己が身で試してみるしかあるまい』



「・・何の罰ゲームですか?」



『鍛えれば、いずれ大きな力となろう』



「鍛えるって・・どんだけ浴びれば良いの? 死ぬじゃん、そんなのやってたら」



『お主には、命の予備があろう?』



 龍帝が無責任な口調で言った。すっごく投げやりなんですけど・・?



「いやいやいやいや・・それ、死ぬほど痛い思いをするって事だから! もう、泣きたいくらい痛いんだからね? 身体は蘇っても、心が死んじゃうから!」



『まあ・・その辺は我の関知するところでは無い』



「ひっどぉーー」



『ではな・・できれば、我の静かな微睡まどろみを邪魔せぬようにして欲しいものだ』



「ちょっ・・ま、待って!」



『さらばだ!』



 どこか面倒臭さげな龍の声と共に、俺の意識が暗転していった。



(・・ちくしょぉぉぉーーーー)



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