第65話 ハーレムキングのお下がり?
「ええと・・・?」
俺は珍しい来客を前に首を傾げていた。
最近は、樹海の北の外れ、奴隷狩りの基地になっていた港町跡地に小屋を建てて貰って、ユノンとデイジーと共に寝泊まりをしている。倉庫とか燃えちゃったため、まともに住める家屋が無かったのだ。
この港は重要拠点だ。帆船で大河を下って来るなり、
安全な上陸をするためには、
つまり、俺が居座っている港町跡が、近隣では唯一無二の優良上陸地点であり、俺達がこの港を占拠している限り、奴隷狩りなどをしても大人数を運び出すには陸路を荷馬車を
「・・なるほど、よくこれだけ条件の良い場所を見つけたな」
感心したように言ったのは、二条松高校の2年生、
「なにしに来たの?」
ちょうど昼下がりで、そろそろ周囲の見回りにでも行こうかと考えていたところだった。
「いや・・しばらく話せていなかったからな。情報の共有が出来ればと思って来た」
(おかしいよな・・)
どうやったら、美人の人口密度がここまで上がるのか? いったい、どんな高校なんだ? 二条松ってモデルしか住んでないの?
実に信じがたい・・。
「我々の動き方を不審に思い、距離を取られているのは理解している」
うん、そんな喋り方する高校生とか、俺の周りにいませんでした。いったい、どこの
「我々の側も、結城の行動については不審に思ったこともあった。いや、全員では無い。我々の中でも、それぞれ意見は違っていて、結城を信じるという者も居た」
「ふうん・・」
「だが、どうしてもな・・気を悪くしないで欲しいんだが、得体が知れない・・違った存在に思えてならない」
「・・俺が?」
どう見ても、二条松の皆様の方が違った存在なんですが?
「結城が使う技・・あれは、どうやっても我々には得られないものだ」
「ああ・・」
模写ね。まあ、そうだろうね。でも、あの技は魔法の代わりだからね? おまえらが、バンバンやれる魔法の代わりなんだよ?
「身体能力の高さも、ちょっと異常に見える」
「いや、俺、弱っちぃよ? むしろ、高校男子の平均下回ってるけど?」
「馬鹿を言わないでくれ。以前、森の洞窟で猿人と渡り合ったのを覚えているか? あの時のお前は完全に人間離れしていたぞ?」
「・・まあ、そういう面はあるかもしれないけど」
神様が合気の技を極めさせてくれちゃったので・・。素人に毛が生えた程度の部活員が、いきなり達人を超えちゃってるし・・。兎シリーズの俊足と蹴り足と耳があるし・・。
「最初は、さほど差を感じなかったが、このところの結城の成長速度は異常だ」
「おっとっと・・」
成長とか
「・・何か誤解をされているようだが・・・急激に強くなったのは事実だろう?」
「そう?」
兎の毛皮とか身に着けたから? 確かに、流れ矢くらいでは死なない感じになったけれど。
「恐ろしくなった」
「・・・ボク、悪いニンゲンじゃないヨ?」
むしろ人助けばかりやっていますよ? 柄にも無く・・。
「我々は・・こちらの世界に来て、いつも狩られる側だ。女子はみんな
「あぁ・・まあ・・そうだね」
色々と目撃しているけど、ここは忘れてあげるべきだろう。
「本音では、誰も信じられない・・信じるのが怖い」
「そりゃあ・・無理も無いか」
いきなり異世界に飛ばされて、流人だとか言われて森へ追いやられ、同じ学校の同級生に売られ、奴隷商には酷い扱いを受け・・。
確かに、人間不信に
「まあ・・色々あって、誰も信じられないと・・そこまでは分かった。それで?」
「頼みたい事があって来た。ただ、その前に・・・これは、
「謝罪?」
プライドの塊のような眼鏡の鉄面皮が、何やら似合わない事を言っている。
「村で・・俺達はおまえに矢を射て、魔法で命を狙った」
「ああ・・うん、そうだったね」
あれは怖かったな・・。弓矢の脅威を肌身で感じた事件でした。
「その後、
つまり、二条松高校の皆さんは、気絶した俺が刺し殺される現場を見て見ぬ振りをしたということだ。
あの時の事は、
「ああ、なんか・・寂しかったな」
あの時、ボク、号泣しちゃったんだ。泪で前が見えなかったんだ。
「我々の元へ
いやぁ、間違って無いけど、涼しい顔で何を言ってくれちゃってますかねぇ? あの後、俺は
「・・なんか腹が立ってきたな」
よく考えたら、俺って酷い扱いしか受けてないよな?
あんな事をされておいて、どうして俺は森の住人達のために戦っちゃってんの? おかしくない?
「あれ・・?」
色々あって忘れていたけど、俺はもうちょっと自分の身に起きた事を考えないと駄目なんじゃ?
二条松高校のみんなや樹海の人達・・どうして、俺は手助けしてるんだっけ? よく考えたら、義理も何も無いじゃないか。
(でも、二条松の女子は・・まあ、助けちゃうよねぇ、綺麗な子が暴行される寸前だったんだ)
あの場面は理屈どうこうじゃ無いでしょ。男の子なら助けようとするでしょ。
(樹海の連中は・・)
ユノンが居なければ、ここまで頑張らなかっただろうなぁ・・。
でも、そう考えると、ちゃんと理由があるじゃん?
男の子が頑張る理由としては上等なんじゃないかな?
酷い事をされそうな綺麗な女の子を助けたい、可愛い女の子に格好良いところを見せたい・・それで十分だよな?
(なんだ・・ちゃんと納得できる理由で頑張ってるじゃん)
俺はちょっと安心した。
「それで、殺人狂の
「・・・申し訳なかった」
「すいませんでした」
「ごめんなさい」
綺麗どころが次々に頭を下げて謝る。
(・・
結城浩太君は、少しお
こんなもんで、少年の傷ついた心は癒やされたりしませんよ?
(まあ・・その辺、すっかり忘れてたけど)
どこかで、
「で・・?」
依頼というのは何だろう?
ファッションモデル系からアスリート美人まで取りそろえて、純情無垢な少年に何をさせようと言うのか?
「実は・・その、我々も色々あって・・グループを別けることになった」
「ほほう?」
人の不幸は蜜の味。ハーレムキングがしくじったらしい。ざまぁ・・。
「いや・・たぶん、結城が考えているような理由では無い。純粋に、理念・・・目的の違いだ」
「ふうん・・」
俺は、美形軍団の表情をちらっ・・と見た。
「俺をリーダーにしたAチーム、
「へぇ・・何人ずつに別けたんだ?」
「6人ずつのチームを考えている」
「人数足りてないじゃん」
「ここには来ていないが、
「・・ふうん」
ついに、
「ただ、全員がそうしたグループでの戦闘行為を続けるのは難しい。本人の適性というものがあるから・・」
「ほう・・?」
まさか、さんざん遊んで、飽きた女を捨てる流れか? 面倒になったから捨てるとか、どんだけ酷い男なんだ! というか、誰と誰を食い散らかしたんだ? ま、まさか全員を・・?
「それで・・1人だけなんだが、これまで我々と共に戦ってくれていた
「刺客? スパイ? 綺麗な女の子で油断させて暗殺?・・どうして、そこまで人を憎めるの? どんだけ心が曲がってんの? そこまでして俺を殺す気か? こういうの何だっけ・・ハニートラップか?」
「・・いや、結城の方がかなり曲がっていると思うが」
「ふうん?」
俺は疑念たっぷりな眼差しで
(じゃなくって・・)
あれっ? おかしいな?
これ、根本的に変な話だよね?
(・・何を当たり前な顔して、俺のところに捨てて行こうとしてんの?
俺は、鉄面皮眼鏡の顔をまじまじと見つめた。
まさか、
「どうも・・また、妙な誤解をされているようだが・・」
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