第30話 今度は何処?
俺は真っ白な世界に浮かんでいた。
何もかもが、ひたすら真っ白な世界・・。
「えぇ・・と、神様?」
たぶん、そうだろう。
『コウタ・ユウキ・・』
「はい?」
気のせいか、女性的な声が聞こえてくるようだった。口調は男っぽいけど、女神様かもしれない。
『お前に、褒賞が与えられることになった』
「ほうしょう?」
『お前は、我らが招きし子等に降りかかった危難を、幾度となく退けてみせた』
「・・流人を助けたことが功績なのか」
『"港上山高校の英雄"・・』
「・・やめて」
それ、恥ずかしいからやめて・・。
『この称号が "港上山高校と二条松高校の英雄"となる』
「うおぉっっぉい!?」
『なにか?』
「い、いえ・・とっても地味な・・いえ、小規模な局地的な変化だなって・・あはは?」
『それから、お前が得ている力・・龍の力は人の身には過ぎたるものだ。こうして、自身が命を落としてしまっては仕方が無かろう?』
「え・・ええ・・ああ、俺は死んだんですね」
『我らが招きし子等を救うための尊い犠牲だと理解している。この度に限り、蘇生が赦された』
「ああ・・ありがとうございます。今度は死なないように頑張ります」
『龍の雷息は封じる。しかし、お前の努力によって得た力だ。相応の対価を用意せねばならぬ』
「俺、魔法が使いたいです!」
『お前には才能が存在せぬ』
「・・・ぉぅ」
目の前が真っ暗になったんだぜ。真っ白な世界なのに・・。
『遁光術と・・』
「あ、あの・・」
俺は手を挙げてみた。
『なにか?』
「槍を・・直して貰えませんか?」
『・・見せてみろ』
言われて、俺は短槍を取り出した・・つもりだ。何も見えないので自信は無い。
『旅立ちの槍・・よく使い込まれている。これは・・良いだろう。この槍を鍛え直し、お前の槍として下賜しよう』
「あっ・・ありがとうございます!」
俺は心の底から感謝した。深々と頭を下げた・・つもりだ。何も見えないが。
『ふふ・・その槍は佳き主人に恵まれたな』
なんだか、声の主の機嫌が良い。
「相棒なんです・・ずっと一緒だったから」
嘘偽り無く、短槍は俺の相棒だ。あいつと共に、あり得ないくらいの危機を乗り越えたんだ。
『では・・遁光術を授ける代わりに、龍の雷息を封じよう。異存は無いな?』
「はい」
使ったら即死するような力は要らない。無いのと一緒だ。
『最後になるが・・我らが招きし子等には、あの者達自身で乗り越えねばならない試練がある。過剰な手助けは成長の妨げとなるのだ。意味は分かるな?』
「・・はい」
でも、同じような事があれば、俺は助けに行っちゃうけどね?・・・と、胸内で舌を出す。
『それで良い。故に、過剰な・・と申したであろう?』
笑いを含んだ声が聞こえてきた。
「あ・・はいっ、すいません!」
俺は真っ白な中で正座した。考えていることが筒抜けらしい。
『優しき人の子よ・・港上山高校と二条松高校の英雄よ』
「それは、許してぇ・・」
俺はそのまま土下座して
『お前の聖紋に我が加護を授けよう』
「えっ・・?」
加護? 加護って・・何かの力?
『我は月光神ミスラーン・・月光の女神なり』
「め、女神様・・?」
女性的な声だとは思っていたが・・。
『清らかなる乙女にしか授けぬ加護なれど・・お前は乙女と申しても良い汚れ無き容貌の持ち主なれば・・』
「乙女? ちょ、ちょっと、俺は男で・・」
異議あり! 確かに、まだ大人の階段を登り切ってはいないが・・。
『案ずるな。この先、お前の身がどれほど
「お~~い、何言っちゃってますかぁ? 俺、男ですよぉ~? 乙女って女の子の事ですよぉ~?」
『では行くが良い。龍の雷息によって絶命した刻まで
「ちょっとぉーーーー」
俺の叫びも虚しく、乙女発言を訂正するには至らないまま現世へと舞い戻されて行った。
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