1)創造目的と宇宙創造 《自らを体験したいと激しく望んだ》

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 「存在するすべて」であることの絶対的なすばらしさを概念的には知っていたが、体験的には知りえなかった。そこで、自らを体験したいと激しく望んだ。


 概念として知っていることを体験として知るには、物質的な世界で経験するしかない。そもそも、物質的な宇宙秩序を創った理由はそこにあった。


 物質的な宇宙に入れば、自らについて知っていることを体験できる。それには、まず、対極を知らなければならない。背が低いということを知らなければ、背が高いということはわからない。


 これが相対性の理論の目的であり、すべての物質的な生命の目的だ。自分自身を定義するのは、自分ではないものによってなのだ。


《神との対話1-P39》(-部略)

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 神の宇宙創造は、すべての根源である神が、自らの性質(神性)を体験的、実感的に知るために行なわれました。


 「存在のすべて」である神は、絶対の存在(他者に依存しない存在)であるため、自らを「概念」として知っていましたが、「体験」としては知りえなかったのです。


 「概念として知る(英文:know conceptually)」とは、ひらたくいうと、私たちの頭の中にある思考やイメージと似たものといえるでしょう。それらは物理的な形が無く、実感的ではありません。思考やイメージは文字化すれば「言葉」という形になりますが、それでもまだ実感的、体験的なものではありません。


 私たちにとって、「言葉」が実感的であるのは、それを既に体験している場合に限られます。例えば、私たちが「暑い」という言葉をすぐ実感的に理解できるのは、「暑い」ことを体験して知っているからです。もしそれを体験していないのなら、実感のない単なる言葉でしかないのです。(このことを、原著の中では「体験として知る(英文:know experientially)」と表現しています。)


 絶対的存在である神は、自らを知るために相対性の理論を利用したのです。神は、自分の姿に似せて被造物を創造し、体験的に自らの神性を知ろうとしたのです。


 これが神の宇宙創造の動機です。


 絶対的な世界は、他者に依存しない、存在そのもの(聖書では「有りて有る者」といっています)であるため、自らの神性を体験的に知るには、相対的世界に入らなければならないのです。


 絶対的世界とは、中和的な世界ともいえます。陽-陰、大-小など、相対的なものすべてが存在しながら、それらが渾然一体(中和)となっています。色にたとえていうなら、白色あるいは透明な光のようなものです。


 白色は色がないのではなく、あらゆる色を内包しているのです。それを分解すれば、多数の色に分かれます。そして白色は、他の色がないときには無味乾燥なものですが、分解して数多くの色を発色すれば、そのコントラストにより色彩豊かな美を創出するのです。


 白色のように、すべてを内包した中和的、絶対的存在である神は、自らの要素を分割、分離することによって、色彩豊かな相対的世界を創造したのです。


 一方、相対性の世界とは、男性-女性、オス-メスなどの陽-陰、大-小、長-短、熱-冷、作用-反作用、遠心力-引力、ここ-あそこ、わたし-あなた、など、相対するものによって成り立つ世界のことです。


 相対的世界では、他者と相対関係をもつことによって自らを他者と対比し、自分自身を知ることができるのです。


 神の宇宙創造は、画家を例に取れば理解しやすいと思われます。


 画家が自らの脳裏に浮かんだ無形のイメージ(=概念として知ること)を、キャンバスに絵として描いて具現化、有形化します。自らのイメージを表現した絵画を相対的に客観視することにより、画家は自らのイメージを実感的に知り、喜びを感じる(=体験として知る)のです。


 要約すれば、神の宇宙創造は、無形の神すなわち「存在のすべて」である神が、無数にある神性を表現して有形的な宇宙を創造し、まさに自分を鏡に映すようにして、自分自身を相対的に体験するために行なわれたのです。

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