1章15話

「おい、起きろ」


 乱暴な揺さぶり方でミカに起こされた。いや、揺さぶるだけでダメージが入るのはおかしいと思う。お腹が痛い。


「モルガンが呼んでいたぞ。どうやら冒険者ギルドに送っていた部下が戻ってきたんだってさ。リュウに合わせたいって」

「なるほどっと」


 ミカの言葉に脳が覚醒し閉じかかっていた眼は見開かれる。いやー、話を聞きたかったからありがたい。


 ミカに付いていきながら周りを見るが特に変化はないようだ。昨日の今日で血が滾っている人たちもいるみたいだけど。修練場とかあればいいんだけどな。


 昨日、冒険者と戦ったらセカンドジョブをつけられるようになったから、そこで銃士なんていう銃撃を得意とするジョブについてみたんだ。ステータスが三倍ほどに跳ね上がったから慣れておきたいし。


 その分、ミカも強くなったみたいだけど。戦力強化されたと思えば悪いと思わない。


「あれ? 中から変な殺気を感じるんだけど」

「多分、高ランクだから試しているんじゃないのか。リュウが嫌なら潰してくるけど?」

「そこまではしなくていいよ」


 少しだけ怖いな。ただ自己防衛はさせてもらうけど。狙撃銃を肩にかけて扉を開ける。


 瞬間、何かが俺の方に飛んできたので銃の先端で落とし、銃口を攻撃してきた者の首筋に当てる。


「へぇ、やるじゃないか。モルガンが認めただけはあるな」

「すみません、こういうことをしないと共闘出来ないと言われまして」


 銃口を向けられた男が笑い、側にいた女が頭を下げる。少しだけ男がウザイので撃ってしまおうか。


「構いませんよ。それであなた達は、っと」

「ッツ!」


 皆の呼吸が一瞬止まったと思う。

 それはそうだ。上から刃を向けてきた黒ずくめの人に銃口を向け変えたのだから。


 いや、それにしても気配が分かるってありがたいな。何故か分からないけどミカが得意なものは俺も得意だし。


「……なぜ分かった?」

「呼吸音、それと三人パーティーと聞いていたので不審に思っていました。それだけあればこうするのも簡単では?」


 攻撃を仕掛けてきた人は女だったのか。

 綺麗な声だな、と心の中で褒めておく。


「普通は……それじゃあ分からないはずなんだけどな。Aランクだって調子に乗っていたな。まさか、こんな虎の尾を踏む結果になるなんて」

「買いかぶりもいいところですよ。皆さんも殺しに来たわけではないからこうなっているだけで」

「リュウ、それはこの三人には慰めにもならないよ」


 拍手をしながらモルガンがやってきた。

 なんでここまで嬉しそうなのかよく分からないけど、まあ、嬉しいならそれでいいや。


「俺達ならバレない、って意気込んでいたのにね。本当に馬鹿ですね」

「うるせえよ。お前が認めたから面白いやつなんだな、そう思っただけだ」

「当たり前です。私の親友なのですよ?」


 一応、その間に銃口は下げておいた。

 それにしてもこの人達がモルガンの部下か。確かに強いな。俺とミカが一緒に戦えば倒せなくはないだろうけど。


 ミカだけなら怪我を負いそうなくらいには強い。ステータスだけでいえば八百から千かな。


「……ボクはミッシェル。君のことを気に入った。ボクはパーティーから抜ける」

「っておい! お前抜けたらこのゴリラ女と二人きりグボェ」

「どうやら春が来たようですね。私は構いませんよ。あっ、そうそう。この伸びている馬鹿男がリーダーのロイド、私がマーチです。よろしくお願いしますね?」


 なんだろう、この淡々としたカオスは。

 というかミシェルはちっちゃいな。俺の胸あたりまでしか身長がない。


「一応、直属の部下がいなくなるのは……まあ、相手がリュウなのでいいですよ」

「って、お前もかよ! 索敵係どうすんだよ!」

「そもそも人がこうしたいというのを曲げること自体が馬鹿げていますよ。ミシェルが決めたことなら私はどうしようと構いません」

「いやいやいや」


 待ってくれ。なんでそんなに簡単に進む?


「俺の意見は?」

「付いていく、とは言っていませんし別に放っておけばいいのではないでしょうか。後ろに誰かいるな、程度でしかありませんよ?」

「それは少し鬼畜では?」

「なら、ボクをパーティーに入れてくれ」


 いや、ちょっと待ってくれって。


「ミカはどう思うんだ?」

「別に嘘も悪いこともしていない。オレは構わないぞ」

「いや、それでも二人きりになることが少なくなるんだぞ?」


 あー、ロイドのヒューヒューという声が腹立つ。あっ、マーチさんに殴られた。


「そっ、それは……困るな。やっぱり駄目だ」

「部屋は別でいいです。……ただ一緒にいれば強くなれそうだから、パーティーに入りたいだけです」

「それは俺達となら強くなれないっとボッエ」


 あっ、今度はミシェルに殴られた。

 ロイド災難だな。同情はしないけど。


「いや、それよりも話すことあるんじゃないんですか?」

「えっと、特にありませんね。昨日のことで新しく得た情報も少ないですし。それも作戦としてぶっ潰せとだけ」

「となればその日限りの作戦を立ててるんでしょうね。いつ攻めてくるのかわからないほどめんどくさいことは無いです」

「一応、魔剣の所有者はミカさんになっています。後で渡されるはずです」


 それは別に構わないけど。

 あっ、そうだ。


「ここって戦える場所ってありますか?」

「なんだ坊主? 俺達と戦いたいのか?」

「……リベンジ」

「違います! ミカと戦って作戦を立てようとしているだけです!」

「まあ、任せなって」


 あっ、これ嫌なパターンだ。

 このロイド、人の話聞かない人だ。簡単に言えばウザイな。


「はぁ……地下にあるので連れていきますよ。マーチ、苦労してますね」

「……モルガンさんにそう言ってもらえると少しだけ、報われる気がします」

「……ドンマイ」


 マーチさん大切なの分かるけど、俺のことも何とかして!


「リュウを……イチャイチャする時間を奪うな!」

「グボェラ!」


 あっ、今ロイドが地に伏した。

 さらばだ、ロイド。お前は良い奴だったよ。よく知らないけど。


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用事があるので次回の投稿日は不明です。書けたら投稿します。申し訳ありません。


戦闘会を挟んで決着です。興味があればフォローや評価よろしくお願いします。

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