『魂を慰めるために』 清水川涼華様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885121660
こちらの作品は、短編集です。
一話一話は短いので、すぐに読めると思うのですが、読後の感動は大きなものです。
どの話も設定が素晴らしく、惹き込まれます。
例えば、「神殿ショコラ」
バレンタインのチョコをお清めする神殿という設定なのですが、そこに訳ありチョコレートがやってきます。
壱~伍までの話があり、受け取ってもらえなかったチョコや、受け取って困惑してしまったチョコなど、様々な事情を抱えたチョコレートに、きちんとした決着をつけてくれます。
また「願望」では、心の傷をそのまま目に見える傷にしてしまうというもので、目に見えない言葉のナイフで傷付いた経験のある方なら、読む価値があると思います。
そんな中でも、設定が最高だったと思うのは、「マインドネーション」
‘生きる気力’や‘元気’の移植術。
それらを充分に持っている人から、足りない人へ分け与えてしまう事ができるというシステム。
ダンスへの熱い想いで生きてきたドナーが、生きる力の乏しい幼稚園の女の子のレシピエントへ、‘マインド’を移植します。
これで救われたのが、女の子だけではないのが深いと思わせてくれるところ。
ドナーの状態を無視して、移植を決行してしまったら、ドナーの健康を損なうのは、通常の移植術と同じところなのですが、まさにドナーとして最適の人物からの移植なら、ドナーの側も救われる。
レシピエントとドナーのその後に、感動しました。
そして、最も感動的だったと思うのは、最終話の「人生の卒業式」
ホスピスが舞台のお話です。
大袈裟な言い方かもしれませんが、人生観・死生観が変わりました。
私自身は弱い人間なので、長患いをした末の死というものを恐れていました。
できるなら、不慮の事故などで、ぽっくり逝きたいと。
迫りくる死の恐怖に怯えながらその時を待つ…というのが、怖かったのです。
ですが、この話の主人公は、自身の死を‘人生の卒業式’と位置づけ、自分のために卒業証書をしたためます。
死を受け入れた主人公の‘卒業式’は、決して悲しいだけのものではありませんでした。
それが出来た、作中のホスピスの在り方というものも、考えさせられます。
紹介しきれなかった他の話も、どれも素晴らしいものばかりです。
読んでいただいて、決して損はさせないとお約束できます。
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