二〇一二年四月二〇日
これで授業を無断欠席するのは二度目だった。同じ授業を三度欠席すると単位が取得出来ず、科目によっては留年することもありえた。電車にゆらゆらと揺らされながら私はぼんやりと窓を眺めていた。普通なら慌てて何度も腕時計を確認してみたり、不安になってしまうところを私はいつも以上に冷静になっていた。高校までの自分なら学校に遅れそうになれば必死に教室まで走っていただろう。でも、今は違う。私はあの時みたいに真面目に生きるつもりは毛頭なかった。
駅のホームに着き地上へ出ると、私は大きな交差点を渡りゆっくりと大学まで歩いていった。まだ大学に入学してからそれほど日数が経っていないせいか、毎朝、S大学の門をくぐるたびにあの過酷な日々が鮮明に私の記憶に蘇った。苦しみに耐えた毎日。早くこの時間が過ぎ去らないだろうかと毎日思っていたがいざ大学に合格すると、それは意外にもあっとういう間だったように思えた。
三年生になってからは毎日、夜の七時まで学校に残り今まで間違えた問題を中心に解きながら、赤本も同時進行で進める生活を送っていた。そして、自宅に帰るとストレス解消のために近所を三十分程ランニングし、それが終わると飯を食べ、十二時までカリカリと勉強するという生活を送っていた。だから、よほど体調が優れていなかったり外が大雨じゃない限り、このメニューを怠ることは一度もなかった。その結果、当日の試験はあまり緊張することなく余裕を持ってどの科目も試験終了三〇分前には完全に解答用紙が埋まっている状態になっていた。
案の定インターネットで合格通知を見ると、私はしれっとした顔でそれを眺めていた。確実に分かっていることが実際に起こるほどつまらないものはない。その一方で私の母は嬉しさのあまり感極まって涙を流していた。私に抱きつくと大きなハグをし、ぴょんぴょんと跳ねている姿を今でもよく覚えている。当の本人よりも試験を受けていない母親が喜ぶものだから、客観的にその状況がくすっと笑えてしまった。
私はS大学では英文学科を専攻した。本当は興味のある学科なんて一つもなかっけれど、高校生三年間で一番成績が良かったのが英語という理由だけで何となく入った。入学前はもしかして何か面白いことを学べるかもしれないと期待したりもしたがそれは授業初日からあっけなく裏切られた。(まあ、大学に行く人の大半が同じ気持ちを抱くのかもしれないが)
授業内容は主にシェイクススピアやスウェイフトなどの有名作家の本を英語で読み、それについてクラスでディスカッションをしたり英米文化について学びながら個人でプレゼンテーションをすることだった。
やはり英語に力を入れている大学だけあって、周りにいる人達はネイティブスピーカーのように頭一つ抜けた人たちが数多く存在した。授業ではいつも同じようなメンバー達が率先して発言し、残りの人達はじっと聞いているか(私も含まれる)、講師に当てられてしぶしぶ答えるという二パターンに分かれていた。
そんな日々が続く中、まだ学校が始まってから三週間ほどしか経過していないのにすでにどの授業も退屈で睡魔と戦う毎日となっていた。正直、学校に一日の半分以上の時間を奪われていることが勿体無い気がしてならなかった。また、友人関係においても深く付き合っていけるような友達を中々作ることができず、クラスメイトとは浅く広く話す程度の関係だった。それでも私はいつか相沢のような親友と出会えるのではないかといった淡い期待をひそかに抱いたりもしていた。
腕時計に目をやると時刻はちょうど六時を過ぎるところだった。私はさっさと教室を出ると、早歩きで大学内をすたすたと歩いていった。自然と表情が明るくなり、笑みがこぼれてしまう。すれ違う人達は怪訝そうな目で私のことをじろじろと見ていた。
この日をどれだけ待ち侘びたことだろう。この道の遥か先には私がずっと高校生から待ち望んでいた場所がある。そう、声優の養成所だ。気分が上がらないほうがおかしい。
大学に入学する前日に私は「ボイスエクステンド」という養成所を訪れ、オーディションを受けた。初めに六〇人程が小さな教室に集まり、予め出題される課題を三十分程練習し、審査員に向かって朗読することが試験内容だった。
私は他の人よりすでに朗読や滑舌の練習を高校生の頃からしていたためか、特に何の問題も無くオーディションに臨むことが出来た。それどころか、私の持ち味である低音ボイスに加えて演じ分けが素人にしては上手いという評価を下されたほどだった。
一ヶ月後に郵便物で届いた合格通知を見た時は勿論嬉しかったが、それよりもこの養成所でどれだけ自分を目立たせ講師に目をつけてもらえるかについてばかり考えていた。なぜなら、最終的に事務所に所属できる人は養成所に通う何百人いる中で見込みのある者だけに限られているからだ。だから、この合格通知を貰った人はあくまで基礎レッスンを受けられる資格があると判断されたにすぎなかった。本当の戦いはこれから始まるのだ。
それから歩いて約二十分、漸く養成所の看板が見えてきた。白い看板に大きく緑の太文字でボイスエクステンドと書かれているのが遠くから分かる。暗い夜空の下でギラギラと光る電光看板はまるで田舎のクラブのような雰囲気を感じさせたので少し心配になったが、どこの養成所もこんなものだろうと自分を納得させた。
上履きに履き替え中へ入ると自分が想像していたものとは随分異なった印象を受けた。辺りを見渡す限り、広さは普通の中堅マンションの部屋三個分くらいで前方に大きな鏡がずらりと並び、小さな白色のテーブルが端っこにポツンと置かれた質素な部屋だった。
どうやら一番乗りだったらしく他に人の姿はなかった。殺風景な部屋の中で自分一人だけだと分かると無性に声を出したくなったので、合格通知と共に宅配された厚さ一センチの台本をバッグから取り出すと適当にページを開き、それを朗読した。しばらく声を出し続けていると、部屋の扉を開ける音がした。突然の音に肩がビクっとした私は一気に現実世界へと引き戻された気分だった。
とっさに後ろを振り向くと、薄い茶色がかった髪をした四〇代の女性と目が合った。こんばんはと大きな声で挨拶すると、少し微笑みながら「こんばんは」と挨拶を返してくれた。もっと威厳がある講師かと思いきや、それとは反対におしとやかな雰囲気をもつ人のようにみえた。目が奥二重で全体的にあまり印象に残らない顔立ちをしていたが、平均値から外れたパーツがない整った顔をしていた。
彼女は凛とした表情でこちらへスタスラと歩いてくると白いテーブルを動かそうとしたので私も一緒になって手伝おうとした瞬間、次々と生徒達がゾロゾロと扉を開けて入ってきた。
一五人程度の集団が一つに固まってこちらを凝視してきたので、私は思わず顔が引きつってしまった。すると、彼らは一斉に軍隊のように「おはようございます、今日は宜しくお願いします」と講師に向かって頭を下げるので私も軽く会釈をした。後に聞いた話によるとどうやらこうした業界では、朝昼晩関係なく挨拶は「おはようございます」に統一されているらしい。驚いたことに誰一人私のように初々しい印象はなくこうした環境に慣れているように見えた。何だか自分が来ているところは場違いなのではないかという恐怖が一気にこみ上げ、彼らに対して気後れした。
「おはようございます。では時間になったので、隣のロッカーで男女に分かれて着替えてきてください」
彼女の声のトーンが変わった。先ほどのおっとりとした話し方はなくなり、まるでどこかの指導者のようにきびきびとした口調で指示した。初めの印象と幾分異なっていただけに、私はこれからのレッスンに不安を感じてしまった。
おどおどと歩きながら一人最後にロッカーへと入ると、全員無言でてきぱきとジャージ姿に着替えたり独り言のようにブツブツと台本を読み込んだりしていた。ざっと見渡す限り、中学生から社会人まで実に幅広い層がいる。私は申し訳なさそうに彼らの前を通ると、適当に誰にも使われていないロッカーを開けた。最初が肝心なんだと思いながら他の人に遅れを取らないように早く着替えることを試みたが、すでに室内には誰もいない状態だった。
最後にロッカーを出て、元の教室に戻ると皆、体育座りをしながら講師の話に耳を傾けている様子だった。私はそっと音を立てないようにその集団に混ざり込むものの彼女は私が遅れてきたことに対して全く気にする素振りを見せず、淡々と一年間のカリキュラムやマナーについて説明した。
彼女の話に拠れば、どうやらこの養成所では一年間で上級コースに昇格する資格があるかどうかの適正を判断し、それに値しないものは辞退するというのが仕組みだった。上級コースでは実際のアフレコ現場で活躍する音響監督からの適切な指導を受けられることに加えて、新人声優としてテレビアニメのオーディションを受けることも有り得るようだった。多くの養成所では何年も生徒達にズルズルと通わせながら高いレッスン料を支払わせ続ける中、ここ「ボイスエクステンド」では生徒達を金の餌食としない良心的なシステムに好印象を抱いた。
また、一年間で行う授業内容としては基礎的な実技を中心に勉強していくということだった。主に滑舌、感情表現、早口言葉といったどの養成所の生徒達も必ず練習するいわば基礎中の基礎を頭に叩き込むとういうわけだ。
—何だ!簡単じゃないか。もうすでに高校生の時にやってきたし
彼女はそれらを話し終えると一旦、十分間の休憩になった。喉が渇いたのでロッカーまでお茶を取りに行こうとすると、隣で先程の集団グループが輪を作り何やら話し合っていたので、私も幽霊のようにすっと輪の中に紛れ込むことにしてみた。
「こんにちは!大学生の方?なんだか俺を除いて皆、若い人が多いねー」
突然、輪の中に座っていた長身の穏やかそうな男性に話し掛けられた。
「おはようございます。あっはい!大学生ですよ!若いってお兄さんも僕と同じように大学生に見えるけれど違うの?」
「なんて君は優しい奴なんだ!ここにいる人達は皆、俺のことおっさんみたいって言うよ。僕は二九歳のばりばりの社会人だよー」
私はそれを聞くと唖然とした。この歳になっても、自分のお金で夢を追い続けている人がいるということに私は素直に尊敬した。無論、自分がやりたいことに対してお金を費やしている訳なのだから、当然と言えば当然だが30に近い男性が夢の為に情熱を捧げていると思うと自分の存在が遥かに劣って見えた。
「俺なんて、両親がここのレッスン代を払ってくれていますよ。なんだか情けないです。あっ俺、村道秋悟って言います。これからはどうぞ宜しくお願いします!」
そう会釈すると、他に座っている人達も同様に簡単な自己紹介をしてくれた。私より年齢が低い人も多いはずなのに、不思議なことに皆大人びた雰囲気を持っていた。やっぱり夢を持っている人はそうでない人に比べて顔つきから雰囲気がしっかりとしてくるのだろうか。
「いやいや、別に親に出してもらえるならそれでいいと思うよ。まだ大学生なんだしさ。俺は藤田涼!涼でも藤田でも好きなように呼んでくれていいよ。一緒に頑張って上級コースに昇格しようね!」
私たちは互いにニコリと笑い合うと、そこに割り込むようにして藤田の三つ隣に座っていた角田という男が少し不自然にテンポを落とすような喋り方で尋ねてきた。
「村道君は今までに声優や舞台の経験はあるの?」
「いや、実は今回が初めてなんですよ。だから、さすがに上級コースは不合格でした。やっぱりあそこは相当上手な人達が入るんでしょうね」
角田は眉をひそめながら私の話をじっと聞いていた。彼は一見すると穏やかそうな雰囲気を持つ人に見えなくはないが、一つ一つの表情に注目するとどこか計算されたようなものがちらついた。
「村道君、凄すぎ!ここの基礎科では未経験者の人はほとんどオーディションで振り落とされるんだよ。何か村道君には他の人にはない才能があったんだろうね。今ここに座っている人達のほとんどが経験者だから、僕たちよりきっと上手ってことなんだろうなー。うん!きっとそうだ!あっ紹介が遅れたね。俺、角田政孝っていいます。宜しく!」
彼の言い方はどこかわざとらしく皮肉めいた発言に聞こえた。彼は私に手を差し伸ばすと私も彼の手を取り、互いの顔を見つめながら握手した。この時、私は確かに感じた。彼のきりりとした目の奥に私を見下すような表情が幽かに映っていたことを。有名大学に入学するような坊ちゃんにはこんな世界は到底向いていないだろうという他人をあざ笑うかのよう目つきだ。多分、大学のことはロッカーで上着を脱いだ時、中に着ていた大学のロゴが付いたTシャツを見て知ったのだろう。
角田は不自然な速さで手を振りかざすと「ちょっとお茶を飲んでくるね」と人が変わったような優しげな顔つきでそこを後にした。それからしばらく他の人達とも適当に会話をしていると入り口の扉が開く音がした。
「はい、じゃあ残りの時間で外郎売りをやっていきます」
彼女は手を叩きながら生徒達の間を通り抜けると、私たちに横並び五列に座るように指示した。生徒達がテキパキと動き始めると、私は皆よりワンテンポ遅れて一番後ろの左端に座った。目の前には巨大な写し鏡がズラリと並び、生徒達の顔をそれぞれ鮮明に写した。少し下を俯く人や髪型を整えたりする人もいたが、共通して皆巨大な鏡の前に少し萎縮しているようだった。
「これから、前列の左端から順番に皆が家で暗記してきた外郎売り(外郎という薬を売るために、薬の能書きを面白かしく誇張する話)の一ページ目を皆の前で立って読んでもらおうと思います。初っ端の授業からこんなことするのって思う人もいるかもしれないけれど、実際の現場では大勢いる中で芝居をする訳だから、緊張には慣れておいてほしいなと思います。読み方と感情の入れ方は皆に任せます」
彼女はそう言うと、白いテーブルの椅子に座りバッグからノートを取り出した。
—暗記してきたもの?
そんなことを事前に言われた覚えはなかった。もしかしたら、配送されたテキストと一緒に入っていたプリントにそんなことが書かれていたのかもしれない。
—ちゃんと読んでおけばよかった
「それじゃ、左端からどうぞ。クラス番号と名前を言ってから自分のタイミングで言ってください」
呼ばれた生徒はゆっくりと立ち上がり、俯き加減になりながら定位置に着くと私たちの方へと顔を上げた。彼の引き締まった顔は余計に教室の空気感をピリピリとさせた。私はそんな様子を見て、自分の出番でもないのに緊張で手から汗がじんわりと広がっていくのを感じた。まだしっかりと覚えきれていない箇所があるのに、テストという予想外の事態が心臓の脈拍の速度を上げていく。また、クラスの人達から注目されていることもあり、もしも実力が伴っていないことが発覚した場合彼らの非難を浴びることがとても怖かった。
焦った私は手をブルブルと震わせながら床に置いてある台本をそっと取り出すと外郎売りの一ページ目を開いた。ざっと全体に目を通すと、知らない漢字がずらりとたくさん並んでいたので内心焦った。それぞれの漢字の読みを調べようにも、電子辞書を持ってきていなかったので私は隣に座っていた人に「テキストを見せてくれないか」と声を掛けると、その子はすんなりとテキストを見せてくれた。
最初に呼ばれた生徒が声を出し始めた。腹の底から出す力強い声量に加えて歌舞伎での語り口調は外郎売の世界観を見事に表現していた。気づくと私は台本を床に置き、彼の喋りに見惚れていた。内心、経験者だからといってそこまで自分と差はないだろうと侮っていたが、これを見るとそれが傲慢な考えであったと反省した。
次々と生徒達の演技が終了する中、いよいよ私の出番が近づいてきた。課題が一ページだけのおかげで何とか暗記することが出来たが、皆の前に立って話すときに台詞が飛んでしまわないか不安だった。
—絶対に失敗することはできない!
「次の人、どうぞ」
彼女はそう言うと、私は深く深呼吸をしてなるべく自分を落ち着かせようと試みた。すっと立ち上がると生徒達の刺すような視線が一気に私へと集まった。何だか少し居心地が悪かったが逆にそうした状況が私の血を騒がせた。彼らよりうんと質の高い芝居を見せつけて感動させてやるといった根拠のない自信が私の背筋をピンと真っ直ぐ立たせてくれた。
それにしても、こうやって皆の前に立つのはいつ振りだろうか。中学生の時よく皆の前で一発芸を披露したりしたことを思い出した。本来、私は目立つことが大好きな性分だったのでこの時間は私にとり至福だった。
呼吸を整えると、私は外郎売りの序文をゆっくりと話し始めた。掴みが良かったためか彼らの表情が一瞬にして和らいでいくのが分かった。ただ暗記したものを言うだけでは暗唱と変わらないので、実際にお客さんが外郎の実演販売を聞いている場面を想像しながら声を発することを心がけた。彼女は真剣な表情で全神経を耳に集中させながら何かをノートに書いている姿が見えた。きっと何かいいコメントでも書いてくれているにちがいない。この時はそう思った。
演技が終了すると、しばらく教室に沈黙が続いた。生徒達は俯き加減で下を見ている。
—結構、手応えあったんじゃないか!
さらさらと動いていた彼女の手が止まると、こちらの顔を見ずに口を開いた。
「はい、今読んでもらったけれど、どこが駄目だったか自分で分かる?」
私は一瞬、彼女の言っている意味が理解出来なかった。特に問題がなかったと正直に言い返すのは変だったので、適当に表現力が足りないところだと思いますと答えた。彼女は漸くこちらに顔を向けると、どこか不機嫌そうな表情を浮かべながら。
「先ずなんだけど、村道君はちゃんとこれを覚えてきた?」
「え?あっ、はい」
「本当かな?所々語句が抜けていたよ。どこが抜けていたか分かる?」
角田は先生の方へと首を後ろに傾け挙手すると、まるで待っていましたかのような表情で彼女を見つめた。
「はい、角田くん」
「二十里上方と帝への参内の折からの言い間違え、それと灰俵が抜けていました」
「有難う。じゃあ村道君、この初めの段落は一体何について話しているのかな」
—やばい、分からない。どうしよう
私は手をもじもじと動かしながら体はロボットのように静止していた。
「ええと、自分のことについての紹介‥」
「うん?自分のことについて?違うよー!」
彼女の語気が強くなるに伴って、彼女はTシャツの腕を捲っていった。
「皆にも聞いて欲しいんだけど、もしプロになって何かの作品に出演することが決まった時に必ず台本を貰うと思うんだよね。それで、もし現場で声を当てる時に台詞の意味が分からなかったりしたらどうやってキャラクターを演じていけばいいか分からないと思うの。今やっていることはその練習だからね」
私は彼女の言葉に頷いた。いや、正確に言えば皆の前でダメ出しをされていることが恥ずかしかったので頭を上下に動かすことで落ち着かせようとしていた。
「それとなんだけど村道君。ハキハキと声が出ているのは良いんだけど、全体的に滑ってる。何を言っているのかよく分からない。一語一語もっと丁寧に読んでごらん。じゃあ、もう一度最初からどうぞ」
「はい」
正直、彼女の言葉は私の心にずきずきと突き刺さった。まるで毒針が体内に刺さり、じわりと毒が体内で広がっていくようなむずむずした感覚だった。
再び外郎売の序文を暗唱したが頭の中で話の風景が頭に浮かばず、ただ暗記したものを言っているだけの状態になっていた。
「はい、ちょっとストップ」
「それだとただ読んでいるだけになる。それとまだ滑ってる」
「はい」
「どうしようかな。じゃあ、もう一度どうぞ」
皆の冷たい視線の中に「全然駄目じゃん」という心の声が聞こえた気がした。足は小刻みに震え一刻も早くここから立ち去りたい気分だった。皆の前で怒られるのが恥ずかしかったし、何より彼らの目が怖かった。そんな気持ちで文章を読んでいると今度は更にテンポが速くなってしまい簡単なミスを犯してしまった。
「はいはい、読むのが速すぎる。それでお客さんは商品を買いたいと思うのかな?」
「すみません」
「時間の関係もあるからここで終わるけど、先ずは家でゆっくり読む練習をしてごらん。それが出来てから感情の作り方や細かい話に移動しましょう」
「はい‥」
「はい、じゃあ戻っていいよ」
私は皆の顔を見ないようにそそくさと自分が座っていたところに戻った。今にも涙がこぼれ落ちそうだった。あんなに自信があって暗唱したのに、先生からすればそれは全く駄目だということがショックで仕方がなかった。
—もう帰りたい
「じゃあ、残りの時間でテキストの八ページを読んでいきます。大きな円を作って座ってください」
皆、無言で一斉に立つと次々と移動していった。最後に私もゆっくりと立ち上がると、一番端っこに座って呆然とテキストを眺めた。
「とりえあえず今日は初回ということなので、細かなチェックはしていきません。見てもらったら分かると思うけど、短い文章の中に幾つかの早口言葉が混ざっています。とにかく早く読もうとしないことね。じゃあ左端からどうぞ」
彼女は私の向かい側に座っていた女の子の方へと顔を向けると、再びノートを開いた。
「天の宮のお宮の前の飴屋で、あんまと尼が雨と雨宿。雨止むまでアンマ揉もうとあんまが申す。あんま尼揉み尼あんま揉み、あんまがうまいか尼がうまいか、あんまも尼も皆うまい」
聞いているとそんなに難しそう文章じゃないのに、それをすらすら読めていることに何故か感動していた。もしかしたら自分は上手く読めないのではないか、そんな気がしてならなかった。
「いいんだけど、最後のところをもう一回読んでみて」
彼女は再び、短い一文を読み終えると先生の方へと視線を動かした。
「尼もっていうところがちゃんとあまもと正確に言えていない。それとみんなじゃなくてみな。直しておいてください」
「はい!」
彼女はまるで優等生のような返事をすると、再び読み直した。
「良くなった!でもまだ全体的に少しだけ滑ってる。早く読もうとしなくていいからね。さっきも村道君に言ったけど、一音一音を明瞭に発音することを意識するところから始めてください。それから徐々に速くしていけばいいので」
「はい!有難うございました」
私は相変わらず下を俯いたままで、テキストをじっと眺めていた。視界がうっすらとぼやけてくると、隣に座っていた生徒が少し間隔を開けて移動していくのが分かった。それは余計に私の心を傷つけた。
次々と生徒達は立っていき、彼女からアドバイスを貰っては嬉しそうに座っていく姿が彼らの声から分かった。
—僕はそんなに下手なのだろうか。未経験者の割に自分は上手な部類だと思ったのに
隣の人が座ると等々私の出番になった。さっきまでの緊張感は完全になくなり、自分でもびっくりするぐらい落ち着いていた。
「はい、次の人どうぞ」
「はい!」
機械的に声だけ張り上げると、私はすっとテキストを持って立った。ざっとテキストに書かれている文章を見た瞬間、私は貧乏くじを引いた気分だった。自分が読むところだけ他の箇所に比べて難易度が高い早口言葉だったのだ。
「腹腔鏡手術中の手術助手。社長支社長司書室長。密造酒醸造中、醸造酒蒸留中、蒸留酒密造中」
「ええと、滑ってる。一回ゆっくりで良いから読んでごらん。物凄くゆっくりでも読んでみて」
彼女の言い方はなんだか冷たかった。まるで馬鹿にされているような‥、元々クールな性格のためなのかそんな風に聞こえてしまったのかもしれない。
「はい」
私は同じ文章を出来る限りゆっくりと噛まないことを意識しながら読んだ。緊張して顔が赤くなっていくのが分かる。
—これではまるで公開処刑みたいだ
「さっきよりましになったけど、もっとゆっくり読むように意識してごらん。わざとらしいぐらいでいいから」
再びテキストを読み終えると、床に座っている何人の生徒達が足や手を触ったりしてそわそわしているのが目についた。彼らが何を考えているのかは顔を見なくてもすぐに分かった。
―とっとこ早く終われって思ってるんだろ
「なんだろうな。舌の力が弱いのかなー。先ず、村道君は滑舌のところから直していくのが先決だね。それとそれぞれの文の横に母音を書いて、次回からはそれを意識しながら読んでみて。後は文章に区切りを入れて読みやすくするのも工夫したほうがいいと思う。そのことはまた近いうちに話したいと思います」
「はい!有難うございました」
私は床に腰を下ろすと、角田が私のことをじっと見つめていることに気がついた。よく見えなかったが、あの全く動かないギョロッとした目は内心私のことを見下しているように見えた気がした。
「はい、じゃあ今日はここまでにします。来週はテキストの十ページから入っていくのでちゃんと練習しておいてください。それと外郎売の三五ページの部分だけ時間があったらするから、それも一緒に予習しておいてください。以上!」
「有難うございました!」
生徒達は一斉に立ち上がると、深々とお辞儀をした。
―マナーだけはしっかりしているんだな
授業が終わると皆、隣の人と楽しそうに話しながらロッカーへと戻って行った。私はというと男子のグループと顔を合わせたくなかったので、お茶を飲んだりトイレに入ったりしてわざと遅れて教室を出た。
ロッカーのドアノブをゆっくり捻ると、私はポーカーフェイスで自分の服とバッグが入ったロッカーまで歩いていった。男子達はわいわいと楽しそうにテキストについて分からないことを教え合ったり、ラインを交換したりしている様子だった。
藤田たちの前を通った瞬間、彼らの盛り上がっていたテンションが若干下がったような気もしたが、私は感情を表情に出ないように気を付けた。
「村道君もライン交換しない?」
顔を横に向けると、橋本という少し背の高い子がニコニコしながら私に突然そう言った。眼鏡を掛けているが、よく見ると整った面の持ち主だった。何故彼が話したこともない私にそんなことを言ってくれたのかは分からなかったが、悲しみを紛らわせることが出来たので嬉しかった。
「いいよ。じゃあQRコード見せるね」
彼がスマホでバーコードリーダーを開いている間、私はちらっと藤田達の方へと目をやった。彼は一瞬、私の視線に気づいたようだったが知らない振りをするかのように他の男子達とペチャクチャ話しを続けた。
期待していたものとは違う、そんな雰囲気を彼らから感じた。普通に話したかっただけなのにそれが出来ないことはとても残念だった。私は彼らをじっと見つめていると橋本に突然、左肩をトンと叩かれた。
「ねえ、途中まで一緒に帰ろうよ」
ふと我に返った私は「うん、いいよ」と一言だけ言うと彼らから遠ざかるようにしてロッカーを二人で出ていった。
外に出た瞬間、冷たい風が吹き付けると朦朧としていた意識がはっきりとした。何だか生気を教室で奪われてしまったせいか酷く疲れが溜まった気がした。そんな心境の中、空が黒のペンキで塗られたように真っ黒だったおかげで自然と気持ちが落ち着いた。
「今日のレッスン、初回にしては難しかったね。皆の前で読んだ時は凄く緊張したよ」
彼はそう言うと、レッスンで学んだことを一人でぶつぶつ言いながらおさらいを始めた。さっきの出来事がコマ撮りムービーのように次々と頭に浮かんでくる。先生に怒られながら時々送られる生徒達からの冷たい視線。思い出しただけで更に自分が憂鬱になっていくのを感じた。
「そういえば村道君は大学楽しい?」
彼は私に気を遣って話題を変えてくれたのか、それとも突然思い出して何となく聞いたのかは分からなかった。
「うーん。あんまり楽しくないかなー。別に入りたい学部じゃなかったし。でも、正直なことを言うと大学自体別に入りたくて入学したわけじゃないし」
「やっぱそうだよな!俺も大学つまらないけど、親が行けってうるさいから行っているだけだわー」
橋本は苦笑いしながら地面に落ちてあった石ころを蹴った。
「橋本はどこの大学に行ってるの?」
「地方の大学だよ。頭悪くて絶対知らないと思う。村道君はS大学だよね!めっちゃ賢いじゃん!多分全国でもトップ一〇に入るんじゃないかな」
「有難う」
私はただその一言しか出てこなかった。確かに彼が言うように私が通っている大学は偏差値的に高い大学なのかもしれない。でも今はその価値が恐ろしいほど私には意味をなさなかった。声優の養成所に入りたいがために死に物狂いで勉強し大学に入学したことは飛ぶ鳥の献立だった。
ー今までの努力は全て無駄だったのか‥
自分がどんどん深い闇に入っていくのを感じた。もうこの先どうやって自分の人生を歩いて行けばいいかが分からない。光の道が完全に閉ざされ私は再び暗くて何も見えない暗黒世界へと足を踏み入れそうになっていた。そんな気持ちのせいか、暗闇の中人気が少ない道を歩くのは本当に心からリラックスできた。このままこの電灯もない真っ暗な道を何時間も歩きたいくらいだった。
しかし人生というものは願ったことが叶わない仕組みになっているのか、細い路地を抜けると道幅の広い商店街へと入った。がやがやと私の心をかき乱す世界ではこんな時間帯になってもたくさんの人が歩いていた。顔を上げてよく周りを見ていると、サラリーマン同士で楽しそうに話しをしたり、カップルが手を繋ぎながらいちゃいちゃしている姿が目に映った。
—僕だけどこか異次元の世界にいるみたいだ
そう思った瞬間、私は彼らがこの地球という星に同化しているようにみえた。地球は彼らを歓迎しているにちがいない。でも私だけがどこか遠い星から送り込まれた異星人のような感覚があった。はっきりとは分からないけれど。
「結構、人多いね。あんまり俺、人多いところ好きじゃないんだよね」
私は軽くうんと頷くと、前から自転車に乗った四〇代の女性が私のことをじろっと睨みながら向かってくるのが見えた。自転車のハンドルが曲がる様子はなく、私に一直線へとライトを照らしながら走ってくる。このまま轢かれてしまうのではないだろうかと怖くなったがとっさに顔を俯いた瞬間、自転車は私の横をすうーっと通り過ぎていった。
―どうして自分があんな奴に睨まれないといけないんだ
怒りがふつふつと腹の底から込み上げてきたが、私は心の中に潜むモンスターを封印することに努めた。それから私は人と通り過ぎる度に誰かに睨まれているのではないだろうかとびくびくしながら顔を下に反らしたまま真っ直ぐ歩いた。対して、橋本はあんなことを言っておきながらも堂々とリラックスした状態で私の横を歩いている。
—彼もきっと僕とは異なる世界にいるのだろう
彼を見ていると私はふとそう思った。
「ねえねえ、村道君。あそこで何かご飯でも食べていかない?」
「あ、ごめん。今日はお母さんが家でご飯作って待っているからまた別の日でいいかな?」
「了解!」
「ごめんね」
さっきよりペースを上げて歩いていると、数十メートル先の道端に小さなコンビニのレジ袋が落ちているのが見えた。風が少し吹いていたため、それはあちらこちらへと人間の群れの間を横切るようにして動いていたが誰一人としてそれを拾おうとする者はいなかった。それどころか彼らは足に掛かったゴミ袋を他の場所へと蹴ったりしている。無残に踏まれていくゴミ袋の姿はひどく滑稽だった。
—可哀想に。皆から無下に扱われて誰にも認知されない存在
確かにゴミ袋には魂は宿っていないかもしれないが、今の私の目にはそれはしくしくと泣いているように見えるのだった。ゴミ袋は漸く、電柱の側で止まると私はそれを拾い上げてポケットの中に閉まった。橋本はその行動をとても奇妙そうに見ていが何も言わずに後ろからゆっくりとついてきた。
商店街を抜けるとS大学がすぐ向こうに見えてきた。それはとても大きく立派な建築物だったが、今や私の目にははただの鉄筋コンクリートの塊にしか見えなかった。しかも、また月曜日からここに通わないといけないと思うと更に憂鬱な気分にさらされた。
少し怒った顔でじっと大学を見ていると、その道沿いを男女の集団が少し酔っ払いながらがやがやと楽しそうに歩いている姿が視界に入った。よく、目を凝らして見るとその後ろに後輩と思われる三人の男の子が彼らの後ろをとぼとぼと付いていた。
「大学生も大変だねー。こんな時間まで飲みに付き合わないといけないんだから」
「多分、そうしないと仲間として認めてもらえないんだろうな。来ないとノリが悪いと思われて排除されるのかもね」
人通りも少なくなったのか、さっきみたいに挙動不審な行動を取ることもなくリラックスして会話をすることが出来た。それでも心の蟠りはどんどん深くなっていくばかりだった。
「薄っぺらいね。そんなことで排除されるなら友達なんていらないなー、僕は。それにお金の無駄だよ。好きな服とか趣味とかに金かけた方がいい」
「でも、あの人たちも好きでやっているんだったらいいんじゃない」
「まあね」
彼は決して派手な服装を身に纏っていたわけではないが、ボタンシャツにデニムといったカジュアルなファッションがよく似合う男だった。それに背も高く四角い眼鏡を掛けているものだからとても知的な人に見える。
「モテるな」
「何か言った?」
「いや、何も」
大学を通り過ぎ、信号を待っていると向かい側に立つ人の多さに圧倒してしまった。冷静を装うとしても、心は普段の落ち着きを失ってそわそわしだす。それに伴って私の目つきも鋭くなり、ざっと辺りを見渡した瞬間隣に立っていた三〇代のサラリーマンと目が合ってしまった。彼は驚いたように目を見開くと、きっと私を睨みつけてきた。
「あ、あのさ」
「何?」
「ちょっと、俺、大学に忘れ物したから取りに帰ってくるわ‥」
「分かった!じゃあ今日はこれで」
「ごめんな」
私は彼に手を振ると、すたすたと早足で近くにあった階段を登りきった。道の両側に木々が立ち並ぶ中、私はしばらくおぼつかない足取りで誰もいない静寂の空間を一人きりで歩いた。
気づくと私は端から端を行ったり来たりを何度も往復していた。機械的に足を動かしていないと辛かったことが頭に蘇りそうで怖かったからである。それから、何も考えずに数十分歩き続けていると前からリュックを背負った若者の人影が前方に見えた。咄嗟に私は右の木の柵へもたれ掛かり顔を前に出していると、徐々に若者と私の距離が縮んでいった。何となく彼の視線を感じたが振り向くのが嫌だったので、ビルや地下鉄を走る電車をぼおっと眺めるふりを続けた。
彼の足音が完全に聞こえなくなると、私は突然電気のスイッチが切り替わるように心の底に溜まっていた感情が一気に溢れ出すのを感じた。すると、視界が潤み涙の雫が頬を伝って地面に流れ落ちた。
—神様、酷いよ‥今までやってきたことは全部無駄だった
再び足音が向こうから聞こえてきた。声の数からして今度は一人ではなく何人かの集団のようだった。私は急いで涙を手で拭うと、何事もなかったかのような表情で遠くの景色をじっと眺めた。背中に鋭い視線を感じたので一瞬後ろを振り向こうと思ったが、泣き顔を見られることが恥ずかしかったのでぐっと堪えた。私の横をその集団が通り過ぎると、女性の笑い声が耳に響いた。確かめる術はなかったが、それはまるで自分が笑われているような気がしてとても悲しかった。
—やっぱり大好きなことなんて仕事に出来ないんだよ。きっと能力が足りないせいだよな
今まで苦しかった分、大学生活はキラキラした毎日を送れるという幻想をずっと抱いてきたせいでいざ現実をつきつけられると私は悲しくて叫び出したい気分だった。
—もうこれから一生、好きなものには出会えないよ。また奴隷みたいな人生を送らなきゃいけないんだ!
目の前にある一本の木に横たわりながら私はそのまま崩れるように地面に座った。
—苦しいよ
じーんと鼻の奥が痺れるほど熱い涙が溢れてくると、声は震えを帯びていた。これから生きていく先に苦しみしか待っていないかと思うと、私は絶望せずにはいられなかった。別に新しい友達が欲しいわけでも、大学で何かを学びたいわけじゃない。ただ好きなことに対して熱中したかっただけだ。今までは生きた心地がしなかったらこそ、この大学生活ではそれを変えたいと強く思って一生懸命やりたくもない勉強をした。でも、結果はこれだ。これから自分は何をしていけばいいかさっぱり分からない。大学に行って学びたいことは何もないし、就職したい企業すらない。またこれからの毎日、ただ卒業するために単位を取得して、企業に入ってやりたくもない仕事を定年になるまでロボットのように働き続けるだけ。
—もう辛いよ。生きていることが‥
それに何より辛かったのが、相沢のような親友が大学にはいないことだった。もうあんな風に何でも気軽に話せる人は現われないかと思うと、生きていることがとても空虚に感じた。涙は相変わらず滝のように流れズボンにしみとなってついた。そんな姿を通行人は不審そうな顔でぱっとこちらを見るが、私はそれに気づかぬままただわんわんと泣き続けていた。
あれからどれくらい時間が経過したか分からなかったが、漸く落ち着きを取り戻し始めると私は再び木の柵から遥か彼方に見えるキラキラした夜景をじっと眺めた。
—まだ初回の授業なんだからそんなもんだって
自分を慰めるようにそう口ずさむと、気持ちを切り替えるためにわざと手足を大きく動かしながら駅の方へと向かっていった。本当は心が辛いと叫んでいるのに私はそのまま自分のむかむかした感情を抑圧することにした。そうでもしないと終電には間に合いそうになかったから。
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