二〇一〇年一二月二〇日

「一人ずつ名前を呼んでいくから、呼ばれたら取りに来て」

 皆の視線が教壇に積まれた答案用紙に目がいく。そわそわしている子もいれば、合掌したりする子もいた。私はというと、足を組んでリラックスした格好で窓側を向いていた。わざわざ点数を見なくても、自分がどれだけ出来たのかはテストを終えた時点で大体分かる。

 —五〇点ないくらいかな

 特別テストの難易度が難しかったわけではない。それだけの点数しか取れなかった理由は分かっていた。趣味に打ち込みすぎてテスト勉強にほとんど時間を充てなかったのだ。もうかれこれ一ヶ月以上、風呂場で朗読や滑舌を良くするためのトレーニングをずっと続けてきた。その成果があってか、前よりもスラスラと文章を噛まずに読む力が付いた。

 テスト一週間になって勉強をしないといけないことが分かっていても、大好きなことをやりたいという純粋な気持ちを捨てることが出来なかった。結局、それがだらだらと何日も過ぎ、テスト前日になって漸くテスト範囲を勉強するという始末だった。

「大崎君」

「はい!」

 自信に満ちた表情で腕を組んでいた彼はクラスに聞こえるような元気な返事をすると、椅子から飛び上がるように真っ直ぐ教壇のところまで小走りで歩いていった。こういう奴はどのクラスにも必ず一人はいるものだ。私もあんな風に元気よく返事ができるようになれれば良いのだが、現実はそう上手く行かない。

「村道君」

 河西先生の声のトーンが大崎を呼ぶ時に比べて低くなった気がした。

「はい」

 ぼそっと私はそう呟くと、少し前かがみになりながら教壇までゆっくりと歩いていった。私の名前が呼ばれた時だけ、クラスの皆が友達同士でざわざわと話し出すのは意図的な行為なのだろうか。ホームルームの河西先生は少し機嫌が悪そうな顔をしながら、私に答案用紙を返した。

「村道、お前ここのところテストの点数がかなり悪いぞ。そのことについてもう少し話しをしたいから放課後、職員室に来なさい」

「あ、はい」

 生徒達の視線が一気に私に集まった。人間とは何故こうも人の粗探しや汚点が大好きな生き物なのだろうか。彼らにとり人の不幸は蜜の味であり、何よりも一人の滑稽な姿を大勢の仲間と共に見ることはとても気持ちの良いものなのだろう。

 私はとぼとぼと自分の席に戻ると、折りたたまれた答案用紙を開けた。

 —四四点

 予想通りではあったが、実際それを見るとやはり落胆しまうことは避けられなかった。

「ゆずぴー、またテストの点数悪かったのかー。大崎君を見習えよ!ゆずぴーは元々、頭が悪いというのもあるけど努力が足りないんだよ!!分かるかなー?まあ、そもそもゆずちゃんには努力すら出来ないと思うけど」

 細田は大崎の肩を軽くポンっと叩くと冷やかすような口調でそう言った。すると、彼の周りにいた奴らも手を叩きながら馬鹿笑いを始め、私を威圧するような目つきでじっとこちらを見てきた。

 だが、私は前みたいに彼らに対して苛立ちを感じることはなかった。それはきっと私が愛するものと出会い、幸福感を感じて生きているからだ。だから、彼らが言い放つマイナスエネルギーの塊を受けても、幸福のバリアがそれを跳ね返しているという訳だ。(表現が厨二病っぽいが)

 —よし、今日こそお母さんに養成所のことについて言おう!

 スイッチを入れるように気持ちを切り替えると、ますます自分が幸せを引き寄せているような気になった。この道を迷わずに真っ直ぐ歩いていけばきっと大きくて眩しいほどの光の中に入っていける。だから希望を捨てずに真っ直ぐ立って、ゴール地点まで走っていこう。

 ―全部大丈夫なのだから



 職員室の扉をノックし中に入ると、河西先生は机の上に山積みになったファイルを忙しそうに整理していた。彼は私に気がづくと、手招きをした。

「村道君、さっきのテストについてだけど、今回はちゃんと勉強した?」

「正直なところ、あまりしていません」

「二学期に入ってからテストの点数がどんどん落ちていっているから心配だよ」

 彼は重たい瞼をこすりながら、棚にあった緑のファイルを取り出すとそれをペラペラめくった。

「正直なところを言うとだな、今のままだとお前が目指している大学に合格することはかなり難しいぞ」

 さすがにこの発言にはショックを受けてしまった。心のどこかで、志望大学に絶対合格出来るだろうという楽観的な考えを持っていたせいで、いざこうして現実を目の当たりにすると憂鬱な気分になった。

 さっきまで私の周りに光り輝いていたオーラが少し黒ずんでいくのを感じた。人間一度落ちぶれるとあっという間だが、再び登っていくことは難しいと言われているように、どんどん自分が泥沼に引きずり込まれていくような気がした。

 こうなると私がとる行動はただ一つだ。そう、自暴自棄というやつだ。

「それとな、最近の授業態度についてだけど。お前、スマホを机の下に隠してこれっぽちも授業聞いていないだろ」

 職員室で事務処理をしていた人達がこちらを見るとくすっと笑った。それにしても、どうして彼はこんな風に人に聞こえるような声の大きさで痛いところを突いてくるのだろう。本当に教師というのは嫌な奴ばかりだ。

「ごめんなさい」

「先生達も呆れて、何も言えないよ。もう後少しで三年生だけど、本当に大丈夫か?」

「もうこんなことは二度としません。これからは態度を改めて真剣に授業を聞くつもりです。テストの点数を上げて必ず志望大学へ合格したいと考えています」

 嘘だった。早くこの場を切り上げたいがために適当なことを言っただけだった。

「まあ、頑張りなさい」

「はい、失礼します」

 私は彼から逃げるように職員室を出ると、涼しげな顔で渡り廊下を歩いていった。



 バスの中に入ると、私はほとんど誰も座っていない窓際の一番後ろに一人ぽつんと座った。自宅に帰るまでの道程、私はさっきのことを振り返りながら色々と考えた。

 そもそもペーパーテストの点数がクラスの中で下位であることはそれほど落ち込むことなのだろうか。勿論、同じクラスの人達より点数が悪いことは悔しいし、プライドが許さないというのはあった。しかし、その紙切れでいい点数を取ることで得たいものは何だろうか。私はバスにゆらゆらと左右に揺らされなが自分に自問自答した。答えは簡単だ。大学のためだ。これは前に歴史の授業の時にも出した結論だ。しかし、そもそも何故私は大学に行くのだろう。この答えもすぐに出た。お母さんが大学に行けといったからだ。自ら望んで行くのではない。でもこれじゃあ、まるで僕は母親の操り人形みたいじゃないか。行きたくもないのに高い月謝を両親に払わせるなんてどう考えてもおかしすぎる。

 この世界は変なことだらけだ。子供の頃から、狭い教室でずっと先生から授業で教わったことをノートに書き留める。それを約一二年間何も疑わず、椅子からじっと動くことなく勉強し続ける。その内容だって自分の知的好奇心を満たしてくれるものではなく、教師があれこれ課題を出すから淡々とこなすだけだ。そして、その役に立つかも分からないものがテストで出題され、この社会における勝ち組か負け組かを決定しいくのだ。(勿論、例外は存在するが)

 大学へ進学すると、大多数の人間は企業で上司に尻を叩かれながらブヒブヒと毎日働く。そして、彼らはそのことに関して何の疑問を持つことなくロボットのように死が訪れるまで三六五日同じ自宅と会社の行き帰りを続けていく。僕たちはこのルートが一番素晴らしいと思って、学生時代からせかせかと学業で良い成績を収めようとするのはここに起因する。

 でも、これらはどこかおかしい。なぜなら、勉強が出来なかったり特別な才能がない存在は弱者としてこの社会を生きていかなくてはならないからである。だったら僕たちのような存在はずっと幸せにはなることはできないのだろうか。違う、そんなことはない。本当はある。それは他者と比べずに、自分の人生を生きるということだ。自分が好きなことを見つけたら徹底的にそれに毎日打ち込んでいければ、それがいつの間にか天職になっていたりする。もし、それが自分に合わないなと感じればまた次に好きなことを探してそれに打ち込む。これを繰り返し続けていれば誰でも自分だけのオリジナルの道を探すことに繋がると信じていた。

 バスは自宅の近くにある小学校を通り過ぎると、相変わらず私は窓の外をぼおっと眺めながら一人物思いに耽っていた。

 もし、勉強が嫌いでストレスが溜まるなら辞めてしまえばいい。それよりも、自分が本当に愛するものに集中した方がよっぽど充実した毎日を送ることができる。そして、それがある程度お金を稼げるくらい仕事として成立すればこれ以上幸せなことはないだろう。

 この世の嘘とはもうおさらばだ。学校に行く必要なんて本当はない。誇張表現かもしれないが教師達は僕たちを洗脳しているだけだ。自由を決して与えてはくれない。それは本当の意味での愛ではない。もうそこから抜け出なくてはいけない。自分が知りたいこと、興味があること、学びたいこと、自分の意志で人生を形づくっていきたい。

 漸くバスは最寄りのバス停に停車すると、私はすたすたと自宅まで走っていった。目にはいつも以上に力が入り、興奮で胸が激しく波立つのを感じた。



 自宅に着くと、私はすぐにリビングの机に座っていた母親のいるところまで駆け寄った。

「お母さん、俺、声優の養成所に入りたいと考えているんだけどいいかな?」

 前のように言いそびれることがないように、私はただいまの前に用件を伝えた。

「なるほどね。だから、あんた風呂場でぼそぼそと喋っていた訳か」

「まあね」

「養成所って結構高いんじゃないの?」

 話がすんなりと進んでいくことに私は驚いた。前なら「夢なんて追いかけずに堅実に生きなさい」みたいなことを言っていたのに今日は全くそんな様子がなかった。風邪でも引いているのだろうか。

「入所金が一〇万で年間二四万。でもいいの?」

「なんかね、前にあんたが風邪を引いて寝込んでいる時に、お母さん、夢を見たのよ。あんたが大学生になって凄く悲しそうな顔をして大学までとぼとぼ歩いているところをね」

 私は一瞬、寒気がした。相沢が言っていたことはこのことだったのかと漸く納得すると、やはり科学では証明することができない不思議な力が存在することをこの時確信したのだった。

「あなたがやりたいと思うことがあるならやればいいわよ。ただし養成所に入るのは大学生からよ」

「え?」

「当たり前でしょ。その道で食べていけるかどうかなんて分からないのに、今から始めるなんてありえないわ。もし仮にそれが駄目だったら、あんた、どうやって就職するの?高卒で受け入れてくれるところなんてあるのかしら」

 悔しいけど、母親の言うことは最もだと認めなくてはならない。いつまでも意地を張って自分の意見を突き通しても駄目なのだろう。本当は今すぐにでも学校を退学したいという気持ちがあったが、母親の意見も素直に聞き入れようかという気持ちに初めてなった。

「もう分かったよ!はい、はい。分かりましたー!!」

「援助はちゃんとしてあげるから。先ずは勉強を頑張りなさい」

 私は親指を母親に向かって立てると、そのまま明日の課題を終わらせるためにスキップしながら部屋に向かった。これから、自分の夢に向かって一歩を踏み出せると思うと、今まで経験した辛いことや悲しみが嘘のように吹っ飛んでいく気分だった。

 —やった!これから好きなことにチャレンジ出来るんだ!!

 机に立て掛けてあったカレンダーを見ると、私は呪文を唱えるように「後、一年と三ヶ月だから」と何度も口にした。この僅かな期間を一生懸命勉強すれば最高の幸福が待っていると思えれば、どれだけ今が辛かろうと困難を乗り越えられる気がした。

 しかし、次の瞬間、今まで晴れきっていた気持ちが一気に絶望の闇へと覆われることになった。

「秋悟、お弁当出しなさいっていつも言っているでしょ」

 数学の問題集を集中して解いていたせいで母親の言葉は右の耳から左の耳へ通り抜けていた。

「あら、何か、プリントが出てきたわよ」

「え?」

 私は母の方を振り向くと、彼女が何をしていたのかを漸く理解した。バッグの中にあった四四と赤ペンで書かれた答案用紙がサルベージのように引き上げられていく。この時、私は足を動かそうにも体が硬直してしまい全く言うことを聞いてくれなかったのでただ沈黙することしか出来なかった。

「秋悟!四四点って何よ!」

 私は口を半開き状態のまま、じっと母の背中を見つめていた。

「うん」

 この一言以外に言うべきことが見つからない。

「あんた、学校の勉強はしっかりやっているものだと思っていたわ。これじゃ、どこの大学も合格出来ないわね」

 母は眉間に皺を寄せると、頭を抱えた。私のその姿を見て「やってしまった」という感情より、悲しさが胸の底から込み上げてくる感覚を覚えた。母を落胆させてしまった。きっと養成所の話もこれでなくなるのだろう。たった一枚の紙によって人生が左右されたかと思うと、私は学校が憎しみの対象へと変わっていくのを感じた。すると、母は私に追い討ちをかけるように更に厳しい一言を発した。

「 Fラン大学に行くようなら、すぐに就職してもらうからな。養成所の費用の援助もしないわよ」

 目に涙がにじむと、私は机の方へと椅子を回転させた。何か別のことで気を紛らわそうとペンや消しゴムで弄んだが、ついに大粒の涙が頰を通って机の上にポツリと落ちた。

「とにかくテストの点数を上げて、ある程度の大学には行きなさい。話はそれからよ」

 そう言うと、母は弁当箱を持って部屋の扉をバタンと閉めた。彼女の足音が消えたことを確認すると、私はベッドの上でうつ伏せ状態になりながらワンワンと泣いた。今の成績では母が納得してくれるような大学に合格することは難しいことは明確だ。たとえ残り一年必死に勉強したとしても、今までの遅れを取り戻すことは決して容易なことではない。ましてや勉強嫌いな私が毎日、机に向かって勉強する姿を想像することには無理があった。

 ―全部終わった

 深いブラックホールが私の心の中で渦を巻いていくと私はその中に入り込むように鬱状態に陥っていった。ベッドから起き上がろうとしても、上から誰かに的に押さえ付けられているかのような感覚がして体が言うことを聞いてくれなかった。精神的な疲れを蓄積した私はそのまま軽く瞼を閉じると、電池が切れたロボットのようにすーっと眠りに落ちていった。



 左手が枕に触れた瞬間、少し冷たいものが当たった。さっきの出来事が頭の中をぐるぐると駆け巡ると、母にもう一度話をしなくてはならないという気持ちに駆られた。今、行動しないときっと後悔すると思った私は鼻周りをテイッシュで綺麗に拭くと、部屋を出た。

 リビングには母の姿はなかった。テレビはつけっぱなしのまま、机の上には食事の用意がなされていた。しばらくぼおっとテレビ画面を眺めていると、ベランダの窓の方から母親の声が聞こえてきた。何をしているのだろうと暗闇の向こうをちらっと覗いてみると、スリッパを履いた母がお隣さんと話をしている姿が見えた。手を叩いたりしながら、何やら楽しそうに会話している様子だった。ふと相沢と楽しそうに話す私の姿が母と重なった。相沢がいなくなってからここ数ヶ月、学校で誰かと話をした記憶がなかったせいで人恋しくなっているのかもしれない。

 お隣さんとのお喋りも漸く終わると、母は少し俯き加減になりながら私と目を合わせないようにしながら窓を開けた。そして、台所から自分のご飯を食卓にさっさと並べると席に着き、ご飯をもぐもぐと食べ始めた。

「あのさ、お母さん。俺、残り一年と少し死に物狂いで勉強頑張るから養成所の件、まだ保留にしてくれない?」

「さあね」

「‥」

 母の向かい側に座ると、彼女は相変わらず私の目を見ることなく黙々とご飯を食べていた。その目が何だか私に対する諦めのようなものが含まれている気がしたのでとても悲しかった。私は沈黙を破るため、さっきより声量を上げて母に言った。

「何度も言うけど俺さ、残り一年と少し死に物狂いで勉強頑張るから、養成所の件、まだ保留にしてくれないかな?」

 母は片手に持った箸の動きを止めると、伏し目から瞼を上にぐっと上げた。

「さっきね、隣の人と話していたんだけど一番上のお姉ちゃん、就活に結構苦労しているらしいわ」

「ふうん」

「名門大学を卒業していてもそうなるってことは段々と学歴以外のことも重要視されてきているのかもね」

「ほら、やっぱり俺が言った通りじゃん。お勉強が出来る人が勝つ時代はもうとうに終わったんだよ」

「でもね、やっぱり就職する時には学歴を先ず見られるらしいわよ。基準値に満たしていない人は履歴書すら見てもらえないんだって」

「え?そうなの?」

「大手企業となるとそれが当たり前になるけど、中小企業でも学歴がいい人から順に面接をしていく感じらしいわ」

 私は母から目を逸らさないように真剣に話しを聞いていた。

「あんたがやりたいことを見つけたってことはいいことだと思うの。でもね、やっぱり芸能のような道で食べていけるまでには長い下積み生活が必要だと思うのよ。天才でもない限り、すぐに第一線で活躍するのは難しいわ」

「もう何度も聞いた」

「それに、途中で辛くなったら辞めるかもしれないじゃない。その時、どうやってあんたは生活していくの?」

「それは‥」

「やっぱりある程度、お金に苦労しない生活をしない方がいいとは思わない?だから、とりえあえずそれなりの大学に進学しながら、自分の道を同時進行すればいいと思うの」

「お母さんごめんね、四四点なんか取っちゃって。先ずは勉強をちゃんとしないとね」

 何かが私の中で吹っ切れていくのを感じた。自分の我を通していくだけでは人生は上手くいかないのかもしれない。もっと人の話に耳を傾ける必要があるよという神様からのメッセージとして自分の中で解釈することにした。(結局、今となってはこれが正しい選択だったのかは分からないが)

 —そうと決まれば、今やらなきゃいけないことをただひたすらやるだけだ

 私はさっさとご飯を口の中に掻き込むと、急いで部屋へと戻った。バッグの中から四四点の答案用紙を取り出すと、教科書を参考にしながら今回のテストで間違えた箇所を中心にやり直すことにした。正直、机にじっと座って自分が間違えた問題と対峙することはとても根気がいることだったが、養成所のことを頭に浮かべるとペンを持つ右手は自然と動き続いてくれた。

 それから何時間が経過し、母から「早くお風呂に入っちゃいなさい」と言われる頃には二科目の間違い直しが終了し、ノートにはびっしりと文字が埋まっている状態だった。そして、お風呂に入ると私はこれまで毎日続けていた滑舌の練習や表情筋や舌筋を鍛えたりした。これからは一日の大部分を勉強に当てる必要があったので、こうした隙間時間に有効活用しようと考えた。

 —絶対に志望大学へ合格してやる

 これが本当に正しい答えなのか分からなかったが、私はただ前へ突き進むしかなかった。まるで生まれる前から決められた人生のシナリオを歩むように、私は更に早いスピードで一本道を歩こうとしていた。

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