再会と真実
勝利だギューちゃん
第1話
「ねえ、いつまで私を待たせる気」
「だって・・・」
「約束したじゃない。それぞれの夢を叶えようって・・・」
「・・・うん・・・」
「私はこうして、女優になった。でも、あなたは何なの?」
「ぼ・・・僕は・・・」
「いいから、早く私のところまで来て・・・」
僕には彼女がいる。いや、「いた」という方が適切だろう。
彼女は高校時代のクラスメイト。
当時から、お互いの夢を語り合ううちに、意気投合し、恋人となった。
彼女は、当時から女優を目指した。
いつも、学校生活のかたわら、レッスンに通っていた。
とても、大変だったと思う。
でも、生き生きしていた。
「君がいるから、がんばれるんだよ」
彼女はいつも、気を使ってくれた。
そして、高校在学中に女優としてデビューした。
まだまだ、未熟な部分もあるが、彼女なら乗り越えられるだろう・・・
でも、このまま恋人でいれば、彼女の夢を奪いかねない。
僕には、支える力がない・・・
いさぎよく身を、引いた・・
彼女の名は、鈴城莉奈・・・
数年後・・・
莉奈・・・莉奈さんは、連日のようにテレビに出ている。
出ていない日を探すのが早いくらいだ・・・
僕の夢は、ゲームソフトを作ること。
それも、シリーズを何本も出すような、ヒット作を創ることだ・・・
しかし、現実は時に厳しい・・・
ゲーム会社に就職したはいいが、まだまだだ・・・
時には辛い事もある。
そんな時に、テレビで莉奈さんの活躍を見る。
元気が出てくる。
活力が出てくる。
僕の心の支えだ・・・
ただ、莉奈さんが彼女だった事は、周囲には秘密にしてある・・・
しかし、ある日とんでもないニュースが飛び込んできた。
莉奈さんが、この会社に取材としてやってくるというのだ。
同僚や上司たちは、みんな大騒ぎだ。
しかし僕は、それを横目にパソコンとにらめっこをしていた。
(当日は、なるべく隠れていよう)
そう思い、帰路についた。
当日、莉奈さんが取材に訪れた。
ひとりひとりに、インタビューをしていったが、
当たり前だが、素人丸出しであった。
僕は、莉奈さんに会わせる顔がないので、上司に頼んで、取材に行かせてもらった。
そして、夜・・・
もう取材陣が帰った頃に帰宅した。
そして、誰もいない部屋で、パソコンとにらめっこをしていた。
「こんな仕事をしているんだね」
後ろから声がした。
「り・・・莉奈さん・・・」
俺は驚いて言葉にならない。
「莉奈さん・・・」
「だって・・・」
「そんな、他人行儀は止めて。私と君とは恋人ではなかったの?」
「だって・・・」
「ちょっと来てくれる。もう仕事は終わりなんでしょ・・・」
「うん・・・」
莉奈さんに、誘われて着いていく。
そこは会社のロビーだった。
莉奈さんは、コンビニ袋からビールをふたつ取りだし、
ひとつを僕に渡した。
「少し、付き合ってくれる」
「うん・・・」
ビールを片手に、莉奈さんは話しだす。
「私ね、君の事を忘れた事は1日もないよ」
「えっ」
「どんなに忙しくてもね、君との時間は、かけがえのない思い出。
それが、力になってるんだよ」
莉奈さんの言葉に、僕は言葉が見つからない。
「君から、別れ話を持ちかけられた時、ショックだった。
でもすぐに、気持ちはわかったわ。」
「気持ちって・・・」
「君は優しい・・・ううん、優しすぎる・・・」
莉奈さんは、ビールのぶるたぶを開ける。
「君の開けて」
「ああ」
僕もぶるたぶを開ける。
「こうして君とふたりで、酒を飲むのは初めてだね。」
「成人してからは、初めて会うからね」
莉奈さんは、話を続けた。
「私、待ってる。君が私の元に、帰ってきてくれるのを」
「莉奈さん・・・」
「いつまでも、待ってる・・・」
「さあ、乾杯しましょ」
缶ビールを、重ねる。
「私は、君じゃなければ、だめなんだからね。忠彦くん」
「・・・莉奈・・・」
彼女は笑みを浮かべた。
「ようやく昔みたいに、呼び捨てで呼んでくれたね。
一歩全身だね」
ふたりで、ビールを飲み干した。
「愛の証は、結婚式までとっておくからね」
そういって、その場から去っていた。
莉奈との約束が果たせるのは、もう少しかかるだろう・・・
約束が果たせた時、莉奈の左手の薬指には、僕の贈った指輪がある。
そして、結婚式の日には、約束の愛の証が出来る事を胸に、
前進していこうと思う。
再会と真実 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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