第十四話 青年、聖霊王と神獣を仲介する
『さぁ、話を聞こうではないか』
キメ顔の聖霊王。しかし、その顔は未だにルスカの足元にあった。幼女に踏まれる少年のキメ顔は、もはや別の意味合いにも取れ、流星と浜は開いた口が塞がらない。それでもアカツキだけは、淡々と現状を話すのであった。
『ルメールの復活か……』
「それも、充分考えられるのじゃ。とはいえ、まずは話し合いじゃ」
『随分と悠長だな。ルスカ・シャウザードの言葉とは思えねぇ』
「アカツキがそう言うのじゃから、ワシは従うまでじゃ」
ルスカの言葉に聖霊王は目を丸くさせて驚く。そして、その目はアカツキに向けられた。
『お前は一体何者なんだよ?』
「私ですか? ああ、私は転移者で──」
『そうじゃない! その身に二つの神獣を宿らせ、いや、融合に近いのか。そのせいで死の因果を切ってまで……。更に
『誰ガ馬鹿ダ!!』と犬扱いされたことなど気づいておらず吠えるガロンを無視して、アカツキは首を横に振って否定する。そんなつもりはなく、かと言って世界を救うなど大それたことも言うつもりもない。ただ、裏で操ったいる奴が許せないのだと。
馬渕が聞けば、また『偽善者』だと言われるだらうなと苦笑いを浮かべながら。
『同じ転移者ね……』
「まだ、決まっていませんが、恐らく……」
『それでお前達は、俺様に力を借りに来たというわけだな。それで俺様にどうして欲しいんだ?』
「魔石を持っていたらください」
『…………は?』
聖霊王は、一瞬固まるも次にはルスカを押し退けて立ち上がり声を出して驚く。
『ええええええぇぇぇぇぇっ!!!! 魔石いいっ!? わざわざこんな孤島まで来て、魔石をくれええっ!? 俺様を呼び出しておいて、冗談だろおおっ!?』
叫びながらアカツキを見ると、聖霊王に向かってそうだと頷く。信じられない聖霊王は、ルスカを流星を浜をガロンを次々と見るが同じく頷くのみ。
「もしかして持っていないのですか?」
『いや、あるよ! お前が壊した石像、あれ丸々魔石だよ! 今は俺様が肉体保つのに力を使っているから只の石だが、俺様が戻ると魔石に戻るよ!! なんだったら全部持っていていいよ!』
「気前いいですね。それじゃ、流星。船乗りにお願いして人手を回してもらいましょう」
『待て、待て、待てぇ!! 嘘だろ!? 俺様、呼び出してそれだけかよ!! ほら、ルスカ・シャウザードみたいに俺様と契約したいとか……』
「いいえ。だって私、魔法使えませんから」
唖然とする聖霊王は、このままでは面目丸潰れ。自分を崇める島の住人でも時折、勝手な理由で自分に願う者もいるのに、アカツキほど己の欲がない人間を聖霊王は初めて見た。
『し、仕方ないなぁ。ほら、手を出せ。俺様もついて行ってやる』
「嫌です」
『な、何故だぁ!! 何が不満だぁ!!』
「だって……絶対面倒臭いことになりそうですし」
『め、面倒臭い? うぬぬぬ……決めた! 絶対ついていく! ほら、手を出せ。俺様が戻らないと魔石は只の石のままだぞ』
子供のように地団駄を踏む聖霊王にアカツキは大きな、それはそれは大きな溜め息を吐く。これ以上面倒臭いのは御免だと、アカツキは手を伸ばす。
『そんな嫌そうな顔をするな!!』
聖霊王がアカツキと手を繋ぐと、その姿は徐々に希薄になっていく。そして聖霊王を包んでいた赤い光が弾けるように消えると、地面に転がる石像の内側部分が赤く輝きだした。
『さぁ、行くぞ。後で俺様の力の使い方、教えてやる』
頭に響く声に苛立ちを覚えつつも、入ってしまったものはしょうがないと受け入れる。
「一つ、良いですか? 私は
『ああーーっ!! 忘れていた!! うぅーーっ……、エイルもレプテルも無口だから、ま、まぁいいか』
『馬鹿ダナ、オ主ハ』
『うるせぇー、バカ犬!!』
アカツキの頭に登ったガロンと聖霊王がギャーギャーと騒ぎ立てる。
「うるさぁーーーーい!! 人の頭の上と中で喧嘩するなぁーーっ!!」
とうとう、アカツキの怒りは頂点に達してガロンを掴むと、そのままルスカの頭に乗せ替えた。
「何故、ワシなのじゃ……」
ガロンを任されたルスカは不服そうであるが、流星は人手を呼びに洞穴の外へと向かったところだった。消去法でルスカなのである。
「田代」
「浜さん、すいません。結局聖霊王を島から連れ出すことになってしまって」
「いや、それはいいんだがよ。島の住人には内緒にしておいてくれ。少なからずショックを受けるだろうから」
浜と約束を交わし、アカツキ達が洞穴から村へと向かう途中で流星と船乗り達とすれ違う。村に戻るとアカツキは早速弥生を呼び寄せ、家の裏の人の耳がない場所を選び事情を説明する。
「神獣やルスカちゃんだけじゃ、飽きたらず聖霊王まで……。アカツキくんは、どこに向かっているの? わたし、ついていけるか心配だわ」
「はは……心配なのは、私も同じですよ」
渇いた笑いのあと、ガックリと肩を落とすアカツキがそこにいた。
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